宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

わずか10年で眠りについたブラックホール

2013年06月22日 | 宇宙 space
1300万光年彼方にあり激しい星形成活動が見られる、ちょうこくしつ座銀河(NGC 253)。
この銀河の中心には、太陽の500万倍の超大質量ブラックホールがあります。

2003年にX線天文衛星“チャンドラ”が、ブラックホールに吸い込まれていく物質が1000万度にまで熱せられて、放射するX線を検出することで発見されたんですねー

ところが2012年に、別のX線天文衛星“ニュースター”が“チャンドラ”と同時観測を行ったところ、ブラックホールにはすでに物質が降着していない、つまりブラックホールは眠りについていることが分かりました。


ちょうこくしつ座銀河“NGC 253”
オレンジ色の斑紋の部分が、“ニュースター”がとらえた高エネルギーX線源
中心部近くの青っぽい光点は、“ニュースター”で見つかった超高光度X線源(ULX)


ブラックホールは周囲の降着円盤から物質を吸い込み、食べ物が無くなったら眠りにつきます。
でも、この銀河の中心にあるブラックホールの場合は、周囲で活発に星が作られている最中なのに眠ってしまったという珍しいケースなんですねー

10年前に観測されたX線が、
ブラックホールではなく別のものだった っという可能性も残っています。
なので、“チャンドラ”と“ニュースター”の今後の観測で、確かめることができるかもしれません。

ひょっとすると、ブラックホールが再び目覚める瞬間が見れるかもしれませんね。

3光年の羽を広げるバタフライ

2013年06月21日 | 宇宙 space
“ばら星雲(NGC 2237-9、2246)”や“ふくろう星雲(M97)”など、
明るい星雲には花や動物の名前が付けられたもの多くあります。

さそり座の方向4000光年の彼方にある“バタフライ星雲(NGC 6302)”もその一つで、特徴的な美しさを見せてくれるんですねー








ハッブル宇宙望遠鏡が
とらえた“バタフライ星雲”





ハッブル宇宙望遠鏡の撮影画像では、一生の最期の段階に入った恒星が放出する外層ガスが中心の星に照らされ、3光年にもおよぶ羽をのばす蝶のような姿を見せています。

ガスを照らす中心星の表面温度は25万度もあり、
中央部をぎゅっと絞るように見える分厚いチリのリングの奥に隠れていて、この画像では見えていないのですが、紫外線ではとても明るく見えるようですよ。

ビッグバン理論がさらに強固に! 天の川銀河でもっとも古い星の観測で

2013年06月20日 | 宇宙のはじまり?
宇宙は138億年前に、ビッグバンで誕生したと考えられています。

このことは、その名残りである宇宙背景放射や、
理論予測どおりの軽元素の組成が観測されていることなどで、説の正しさが裏付けられています。










宇宙初期に形成された恒星は、
ビッグバン直後の元素合成を
反映している。









でも、長年解決されていない問題もあるんですねー

それは、天の川銀河のもっとも古い星々で観測された、リチウム同位体の量です。
この量が、ビッグバン後の元素合成で作られる っと理論上で予測された量と、一致しないんですねー

同位体とは、同じ元素でも中性子の数の違いにより、質量などが異なる原子のことです。
これまで、6Li(リチウム6)が予測される量の200倍、7Li(リチウム7)は3~5分の1という大きな違いを見せていました。

今回、ケンブリッジ大学で行われた最新の観測研究により、
リチウム同位体の量は、ビッグバン標準理論と矛盾しないという結果が発表されました。

観測は、ハワイ ケック天文台の口径10メートル望遠鏡で行われ、
古い恒星を観測して、恒星大気についての理論モデルと併せて解析が行われています。

6Liは存在量が少ないため観測が難しく、大気中の異なる過程のために観測データのモデル化も慎重さを要するそうです。
でも、ケックⅠ望遠鏡やスーパーコンピュータの能力によって、問題を解決できたんですねー

今回の成果で、リチウム6Liと7Liの量についての理論と観測との隔たりが大幅に小さくなり、
完全な一致も見えてきました。
宇宙背景放射などで支えられていたビッグバン標準理論が、これによってさらに強固になったようです。

惑星成長のカギを握る“安全地帯”を発見

2013年06月19日 | 宇宙 space
惑星や彗星などの天体は、生れたての恒星を取り巻くチリやガスの円盤の中で、微粒子が衝突合体して成長すると考えられています。

でも、ある程度大きくなった粒子は、
衝突で破壊されたり、円盤中のガスとの摩擦でエネルギーを失い、大きくならないまま中心星に飲み込まれたりするので、
破壊や軌道変化を逃れて成長できる“安全地帯”の存在が必要とされてきました。

この“安全地帯”は“ダストトラップ”と呼ばれ、
オランダのライデン大学が、へびつかい座の方向約400光年先にある恒星“Oph-IRS 48”の(チリとガスの)円盤に初めてとらえています。

この星の周囲の円盤では、マイクロメートルサイズの極小微粒子が、ドーナツ状に分布していることが以前の観測で分かっていたのですが、
アルマ望遠鏡でミリメートルサイズの微粒子を観測したところ、カシューナッツ型に分布していたんですねー





“Oph-IRS 48”の星周円盤の微粒子分布
欧州VLTでとらえたマイクロメートルサイズの微粒子分布(オレンジ)と、
アルマがとらえた数ミリサイズの微粒子分布(緑)



この大きめのサイズの微粒子は、“ダストトラップ”についての理論予測通りガスの環の端に位置していて、微粒子はこの中で衝突合体を繰り返し大きくなっていくと考えられます。

アルマ望遠鏡で発見されたのは、彗星のゆりかごといえるもので、
この場所はミリメートルサイズの微粒子が、彗星のサイズにまで成長するのに適した環境を持っています。

今回“ダストトラップ”が見つかった場所は中心星から遠いので、ここで地球のような惑星ができるとは考えにくいんですよねー

でも、将来的には中心星により近いところをアルマ望遠鏡で観測することで、
同じような仕組みで惑星が作られる可能性がある場所… 惑星のゆりかごを見つけることができるのかもしれませんね。

ミリ波観測で暗い銀河を15個発見

2013年06月18日 | 宇宙 space
南米チリのアルマ望遠鏡をつかった観測で、
これまで見つかっていなかった、非常に暗い銀河が15個発見されました。

電波の一種で比較的波長が短いミリ波・サブミリ波の観測では、
可視光や近赤外線では、宇宙空間のチリにさえぎられて見逃されている、
多くの銀河を見つけることができます。

これらのミリ波・サブミリ波は、チリに吸収された光が再放射されたものや、
銀河中の豊富なチリが放つ赤外線の波長が引き伸ばされたものなんですねー

従来ミリ波・サブミリ波で見つかってきた銀河は、
チリに厚く覆われて、星の形成がひじょうに活発な… いわば特殊な銀河でした。

でも、今回アルマ望遠鏡を使った高感度のミリ波観測により、
チリが豊富であるものの星形成活動は穏やかな、より「一般的」な銀河をとらえることができたんですねー

今回の発見で、ミリ波・サブミリ波で特別に明るい銀河と、一般的な銀河をつなぐ天体が検出されたことになります。
これは銀河進化の全体像に迫る、大きな一歩になりました。













くじら座方向の観測領域と、
今回見つかった銀河(従来観測)
との比較(イメージ図)









さらにこの研究から分かったことがあります。
それは、現段階で“宇宙閉経放射”として含まれるミリ波・サブミリ波放射のおよそ80%は、
このような未検出の「一般的」な銀河だということ。

アルマ望遠鏡を使って、さらに暗い銀河の観測を行うとともに、
星形成活動や、チリの量などを詳しく調べることで、銀河の進化の全体像が明らかになりそうですね。