宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

木星の水は彗星がもたらした?

2013年06月01日 | 宇宙 space
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の赤外線天文衛星“ハーシェル”の観測により、
木星大気の水が、1994年に衝突したシューメーカー・レヴィー彗星が運んできたものだ っということが分かりました。

シューメーカー・レヴィーは、1993年3月に発見された彗星です。
20個以上に分裂した彗星の核が、1994年7月17日から数日間にわたって木星の南半球に次々に衝突したんですねー

木星衝突の約2か月前に撮影されたシューメーカー・レヴィー彗星
発見前年の1992年、木星に接近した際に受けた重力で彗星核が分裂した


その規模は予想以上に大きく、衝突の瞬間のきのこ雲の発光が地上からもとらえられました。
その衝突痕は、研究者だけでなく天文愛好家の小口径の天体望遠鏡でも観測され、
数週間も残ることになります。









彗星衝突の影響は予想以上に大きく
衝突痕は数週間も残った







この衝突の翌1995年には、ESAが打ち上げた赤外線宇宙望遠鏡“ISO”の観測により、
初めて木星の大気に水が発見されます。
シューメーカー・レヴィー彗星が運んできたもの っという見方が広まっているのですが、直接の証拠が無かったんですねー

でも、水が見つかった成層圏の底には、
低温で水蒸気を通さない天然の“コールドトラップ”があるので、
水は木星内部ではなく、外部からやってきたことだけは分かっていました。

この謎をESAの赤外線天文衛星“ハーシェル”が、解き明かすことになります。
木星の水の分布を調べたところ、彗星が衝突した南半球には北半球の2から3倍もの水があり、
しかも、ほとんどが彗星の衝突位置に集中していることが分かったんですねー









木星大気中の水の分布






継続的に降ってくるチリの微粒子が運んできたのなら、水は均一に分布するはずだし、
そして、今回観測されたような高高度だけでなく、もっと低層にまで到達しているはずです。

また、たとえ氷で覆われた衛星が由来だとしても、観測されたような分布にはならないはずです。

“ハーシェル”の観測と同時期の2009年と2010年には、小天体衝突が目撃されています。
でも、同時に得ていた温度分布データから、これらの現象も原因にはなり得ないことが分かりました。

っということで、シューメーカー・レヴィー彗星が、水の起源であることが本決まりとなります。
研究結果では、木星の成層圏に存在する水の95%が、シューメーカー・レヴィー彗星の衝突で運ばれたものと見積もられています。

太陽系の4つの巨大惑星である木星や土星、海王星、天王星には、すべて水が存在します。
でも、その由来はすべて違うんですねー

今回、木星に関しては、そのほとんどがシューメーカー・レヴィー彗星が由来ということが明らかになりました。

シューメーカー・レヴィー彗星の木星衝突は、
人類が初めて目の当りにした劇的な天体ショーであると同時に、
惑星への水の供給を、人類がリアルタイムで目撃したという、
別の意味での奇跡の瞬間でもあったんですねー