宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

猫の手星雲などで見つかった特殊な光“円偏光”

2013年06月09日 | 宇宙 space
アミノ酸分子には、“左手”と“右手”のように互いに鏡像関係にある2タイプの組み立て構造のものが存在します。



“NGC 6334”星形成領域の
円偏光のようす
黒は光の電場ベクトルが
左回りの円偏光
白は右回り、
緑は円偏光のない部分


一般的な条件で合成されるアミノ酸は、この2つがほぼ同じ割合で作られるのですが、
地球上の生命を構成するアミノ酸は、なぜかほとんどが“左手型”なんですねー

その理由として、地球外起源の“円偏光”(振動の軌跡が円を描く特殊な光)に照らされたことにより、そこで生成されるアミノ酸の鏡像異性体異常が起こったと考えられています。

偏光のメカニズム図


2010年には、オリオン座大星雲“M42”の星形成領域で広範囲な“円偏光”が観測されています。

そして今回、“さそり座”の方向約5500光年彼方の“猫の手星雲”と呼ばれる、星・惑星形成領域を観測したところ、
これまででもっとも偏光度が高く広範囲に及ぶ赤外線円偏光を検出したんですねー
また、これを含む9つの星・惑星形成領域で“円偏光”が検出されました。











肉球のような“猫の手星雲”






これらの観測結果から、“円偏光”は星・惑星形成領域で普遍的な現象であること、
また、質量の大きな星が生まれる領域ほど“円偏光”が大きく、かつ広がっているという傾向があるようですよ。

さらに研究では、こうした大規模な“円偏光”がどのようにして生じるのかシミュレーションを行っています。

そして、中心星の光が周囲の構造で散乱され、星雲内の磁場に沿った向きのチリ粒子で減光されて生じた“円偏光”が観測結果と一致することを突き止めています。