宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

ダークマターの分布が“冷たい暗黒物質”モデルと一致

2013年06月25日 | 宇宙 space
ダークマター(暗黒物質)は、電磁波による観測で直接見ることはできないのですが、重力的な影響からその存在が確認されている物質です。
宇宙の物質の約85%を占めると考えられているのですが、まだその正体は謎のままなんですねー

ダークマターについて、現在もっとも有力なモデルは、“冷たいダークマター”と呼ばれるものです。

“冷たい”とは、熱運動の速度がひじょうに小さいことを示していて、「ダークマター同士あるいは通常の物質との間には重力だけが作用する」 っという理論です。

このモデルが正しければ、銀河団のような質量の大きい天体におけるダークマターの分布は、銀河など低質量の天体と比較してあまり中心に集中せず、やや拡がるはずだとされています。

直接見ることはできないダークマターですが、
その重力によって、銀河団の向こう側にある天体像をゆがませる“重力レンズ効果”を調べれば分布を知ることができるんですねー

銀河団の観測画像から背景の天体像のゆがみ(重力レンズ効果)を解析して、
それを引き起こす重力源であるダークマターの分布をあぶり出すプロセス


すばる望遠鏡で撮影した50個の銀河団における、ダークマターの分布を調べた結果、
ダークマターの分布を平均すると、“冷たいダークマター”モデルが予測するものにひじょうに近いという結果が得られました。

観測された個々の銀河団のダークマター分布(左)
それらを平均したダークマター分布(中央)
各種モデルで予測されるダークマター分布(右)
予測分布のうち、観測データともっとも一致するのが“冷たい暗黒物質モデル”なのが分かる。


従来の研究では、銀河団中心への集中度が大きい… つまり“冷たいダークマター”モデルと一致しない結果が報告されていたのですが、今回の結果は有力モデルを支持するものとなったんですねー

これまでの研究では、用いた銀河団のサンプルが少ないので、
銀河団の個性が結果に影響しているのではないかと疑われていました。

でも今回は、50個という過去最大の銀河団サンプルを偏りなしに選択して、
すばる望遠鏡で撮影した高精度のデータを解析することで、ダークマターの分布の平均的な姿を導き出しています。

今後は、ダークマターの性質や銀河形成に関わる物理過程を解き明かすため、銀河スケールでのダークマター分布を測定するようですよ。