about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『新・愛の嵐』(2)-6(注・ネタバレしてます)

2008-07-26 03:03:10 | 新・愛の嵐
〈第16回〉


・自らブラウスを引きちぎり、猛に乱暴されたふうを装う崇子先生。
この人はいったい何がしたいんだ。自分を愛した(そして裏切った)男に似た猛を最初は本当に欲しかったけれど、拒絶されて憎しみに変わったんだろうか。

・まんまと誤解してしまったひかるに猛は必死に弁明しようとするが、「汚らわしい」の一言に固まる。
下郎呼ばわりされて身分の違いを改めて思い知らされているところに、さらに、それもひかるに、貶めるような上から目線の言葉を投げられたために。いっそ泣きわめいてなじってくれた方がまだよかったろうに。
「汚らわしい・・・」と呟く猛の方が泣きそうな顔になっています。レイプ未遂という行為がひかるの潔癖さに引っ掛かってしまったのですね。この間自分も被害者になりかけただけになおさら。
・・・でもその時助けてくれたのも猛なんだが、その彼を信じられないものですかね。

・伝衛門は猛を信じると言ってくれたのに、なぜか猛は顔を上げない。ひかるの言葉に打ちのめされてるゆえでしょうが、肝心な時に。
後から懸命に(ひかると友春の時と違い崇子の名誉を守る必要はないので正直に状況を打ち明けて)抗弁するも、絹に退けられる。
ここでもとどめは「ひかるが一部始終を見ていたのですよ」。ひかるに軽蔑されたと思ったら、もうそこで抵抗する気力も無くしてしまったよう。
伝衛門がこのあたりをもっと突っ込んで聞いてくれればなあ。

・崇子に取り調べの状況を報告するにあたって、伝衛門は猛が素直に罪を認めたと嘘をつく。
これは自分の体面を守り崇子先生の気持ちを慰めるための嘘というより、彼女の反応を見ることに目的があったように思えます。
実際猛が大人しく罪を認めたと聞いた崇子は驚いたような反応をしているし、そんな崇子の顔色に伝衛門は目を留めている。

・猛が先生を襲う現場を想像するひかる。想像の中の猛は鬼畜な笑みを浮かべている。
勝地くんは悪役を演じたことないので(2007年の舞台『犬顔家の一族の陰謀』劇中劇でのブラック桃太郎くらい)、こんな表情を見るのは初めて。
女をレイプするような嫌らしさが上手く出てたように思いますが、ファンとしてはちと複雑。現在放映中の『四つの嘘』でもちょっとこんな感じの表情が見られます。

・猛がバイオリンの稽古に付き添いつつ、裏では「崇子さんへの欲望を膨らませてた」などと想像で物を言う文彦。
その口調と表情のねっとりした嫌らしさ。藤間くん若いのに上手いなあ。しかし14歳の妹にこんなエロ話しにわざわざやってくるかな。

・このさい猛を家から出すべきだと夫に進言する絹。
しかしひかるの身を心配するのはわかるが、「友春さんのことをお忘れになったのですか」については、「そっちこそ猛が体張ってひかるを助けたのを忘れたのか」とツッコみたくなる。
この後の「人間には生まれついての品性というものがあるということでございます」という台詞も、まさに友春がその反証になってるんですが。そういやあの件で絹の方は猛に一言の礼も言ってなくないか。

・伝衛門は「猛の目は嘘を言っていない」と言い切り、「わしの目が狂っていたといいたいのか」と怒る。
文彦の性質を見抜いて一時は勘当した点からしても、伝衛門の方が絹より人を見る目は確かですね。
ひかるも伝衛門の言葉を立ち聞きして、猛の言葉を信じなかった自分を反省してるようですし。

・土蔵で瞑想する猛の脳裏でひかるの「汚らわしい」という言葉がリフレインする。
崇子の発言といい、絹の「奥に隠されていた下劣な心が剥き出しになったのです」といい、身分が低い者は獣同然という決め付けへの苦しみ、封建的身分制度が生む軋轢がこのエピソードのテーマでしょう。

・崇子先生のブラウスを持ってきて、猛の気持ちはよくわかると勝手な感想を述べ、あまつさえブラウス匂いを嗅ぐ文彦。――変態ですか?

・猛をレイプ犯扱いにして、あれこれ邪推を述べる文彦についに猛がキレる。
確かにキレるのも無理ないが、いきなり主家の坊ちゃんに殴りかかるのはあまりに理性が飛びすぎでは。特に首を締めるのはヤバい。
「バカにしやがって」という言葉からすると、ケダモノ扱いがつくづく腹に据えかねての爆発なんでしょうが、これじゃ本当にケダモノです。
伝衛門たちが来なかったら文彦殺しかねなかったですし。

・伝衛門たちが制止してもそちらに顔も向けず手も緩めない猛。
伝衛門に叩かれてやっと正気に戻るあたりは、友春を殴ったときと同じパターン。殴られたときの体の揺れ方と「うわあっ!」という叫びは、本気で殴られたみたいに見えます。
そしてこの騒ぎの結果、猛は柱に鎖でつながれるという本当のケダモノ待遇に。猛のすがるような、絶望を宿した目が辛いです。
謹慎一週間の罰をそれ以上重くしなかったのは、息子の首を締められたことを思えば非常な温情なんですが、それもこの時の猛には通じてないようですしね。

・猛があんなひどいことするとは思えないとひかるに訴えるお花。自分は先に自分を救ってくれた猛を疑ったのに、父もお花も猛を信じていることにひかるはいささか衝撃を受けているようです。

・猛の処分について厳しい口を聞いたばかりの絹が、猛に代わって工事の予備調査の班長をすると申し出た文彦には目を細める。
母の情として自然ではありますが甘い親ですよね。そういやこの間、猛なしで工事はどうなってたんだろうか。

・バイオリンを弾く崇子を見るひかるの目には明らかな猜疑心がある。
しかし「猛はやってないといっています。本当のことを知りたいんです」とは崇子を嘘吐き呼ばわりしてるに等しい。この小細工なしのストレートさもひかるらしいといえばらしいですが。
続く「猛は野獣じゃありません!」 これこそが今の猛が一番聞きたい言葉じゃないでしょうか。

・猛の鎖を外そうとするひかるに猛は「やめろ」「やめてくれ」といつになく乱暴な口をきく。
子供時代、木に吊るされたときにひかるが懸命にロープをほどいてくれたのと記憶がダブって、野生児な猛に戻ってるような感じです。

・鎖を解かれても、ここから一歩も動かないと言い張る猛。「どうせ俺は汚らわしい人間です」と彼が低く暗い声で言い放つのに、ひかるは自分の言葉がいかに彼を傷つけていたかを悟る。
蔵に入れられてからの猛の一連の行動は、不当に疑われた、欲望を抑えられないケダモノ扱いにされたことへの抵抗であり、それはかえって彼の精神の誇り高さを証明している(手段は文彦の首を締めるなど多分にケダモノ的だけど)。
彼の行動がそのまま、絹や崇子の「身分の低いものは心性も下劣」という決め付けへのアンチテーゼになっています。

・自分もハンガーストライキにのぞむひかる。
これは猛への面当てや両親にプレッシャーを与えて猛を釈放させようという計算ではなく、ナレーションも言うとおり、猛を疑った自分への罰ですね。
猛の誇りを傷つけたことを知ったひかるは、彼の心を溶かすために自分の反省を形にしてみせるしかないと思ったのでしょう。潔癖な彼女らしい身の処し方です。

 

(つづく)


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