サイエンス好きな男の日記

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相続税対策として配偶者に資産をどれほど残すべきか(2)

2023-05-14 08:33:11 | 資産運用

前回、相続税の配偶者控除を考慮しない場合について、子供により多くの資産を相続する場合について検討しました。

今回は、相続税の配偶者控除を考慮した場合について検討します。

まず、この相続税配偶者控除とは、よくある説明としては、配偶者が相続した課税資産が1億6千万円まで、あるいは法定相続分までであれば、非課税となる、というものです。

国税庁のWebサイトでは以下の説明になります。(参照:第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》関係

---  ここから  --

19の2-7 法第19条の2第1項第2号に規定する「当該相続又は遺贈により財産を取得したすべての者に係る相続税の総額に、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額が当該相続又は遺贈により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額」の算出方法を算式で示すと、次のとおりである。 (昭47直資2-130追加、昭50直資2-257、平6課資2-114改正、平15課資2-1、平19課資2-5、課審6-3、平19課資2-5、課審6-3改正)
A×(C又はDのいずれか少ない金額÷B)

(注) 算式中の符号は、次のとおりである。

  1. Aは、当該相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものに係る贈与を含む。以下19の4─4までにおいて同じ。)により財産を取得したすべての者に係る相続税の総額
  2. Bは、当該相続又は遺贈により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額(当該合計額に1,000円未満の端数があるとき又はその全額が1,000円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てるものとする。以下19の2─7の2において同じ。)
  3. Cは、法第19条の2第1項第2号イに掲げる金額
  4. Dは、法第19条の2第1項第2号ロに掲げる金額

---  ここまで  --

そして、C および D の説明としては以下になります。(参照:相続税法

---  ここから  --
イ 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額に民法第九百条(法定相続分)の規定による当該配偶者の相続分(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続分)を乗じて算出した金額(当該被相続人の相続人(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人)が当該配偶者のみである場合には、当該合計額)に相当する金額(当該金額が一億六千万円に満たない場合には、一億六千万円)
ロ 当該相続又は遺贈により財産を取得した配偶者に係る相続税の課税価格に相当する金額
---  ここまで  --
 
上記の A は、一次相続時の相続税の合計額であり、前回での記号を使うと F です。
上記の B は、本人の遺産であり、前回の記号を使うと a です。
上記の C は、配偶者の法定相続分もしくは1億6000万円のどちらか大きいほうの金額
上記の D は、配偶者が相続した金額であり、前回の記号を使うと p x a です。
 
ここでも前回と同様、以下のパラメータを設定します。なお、以下、金額の単位はすべて「万円」です。
 
本人と配偶者の資産:a, b
法定相続人:配偶者および子供(n人)
本人死亡時に配偶者が相続する資産割合:p
 
したがって、相続税配偶者控除(E)は
 
E = F x Min ( Max ( a/2, 16,000 ) , p x a ) / a = F x Min ( Max ( 1/2, 16,000/a ), p )   となります。
 
F = f (t/2) + n x f(t/(2xn))
t = a-(3000+600 x (n+1))
f(x):  法定相続分に対する相続税
 
E/F = Min ( Max ( 1/2, 16,000/a ), p )   より
 
a ≦ 16,000 の時
Max ( 1/2, 16,000/a) = 16,000/a ≧ 1 より  E/F = p 
 
16,000 < a < 32,000 の時
Max ( 1/2, 16,000/a) = 16,000/a < 1 より、E/F = Min (16,000/a, p) 
0 ≦ p ≦ 1/2 のとき、16,000/a > 1/2 より、E/F = p
1/2 < p ≦ 1 のとき、16,000/a > p であれば、E/F = p,   16,000/a ≦ p であれば E/F = 16,000/a 
 
a ≧ 32,000 の時
Max ( 1/2, 16,000/a) = 1/2 より、E/F = Min ( 1/2, p) 
0 ≦ p ≦ 1/2 のとき E/F = p
1/2 < p ≦ 1 のとき E/F = 1/2
 
上記から
a≧ 32,000 かつ 1/2 < p ≦ 1 のとき E/F = 1/2
16,000 < a < 32,000 かつ 1/2 < p ≦ 1 かつ 16,000/a ≦ p であれば E/F = 16,000/a 
上記以外はすべて E/F = p
となります。
 
相続税配偶者控除を考慮した、配偶者に対する相続税として
G(a,p) = p x F - E =  (p - E/F) x F   を定義します。
 
その結果、
a≧ 32,000 かつ 1/2 < p ≦ 1 のとき G = (p -1/2) x F  (領域A)
16,000 < a < 32,000 かつ 1/2 < p ≦ 1 かつ 16,000/a ≦ p であれば G = (p- 16,000/a) x F  (領域B)
上記以外はすべて G = (p - E/F) x F = 0 (領域C)
 
上記より、よく言われるように、配偶者が相続する遺産(p x a)が 16,000 以下あるいは法定相続分(p=1/2)以下であれば相続税がかからない、つまり G = 0 となることがわかります。さらには、法定相続分を超え、かつ遺産が16,000を超えていたとしても、G=0 (非課税) となる場合があることもわかりました。
 
以上から、相続税配偶者控除を考慮した、配偶者に対する相続税Gが定式化できました。
 
以下では、この相続税Gを使って、二次相続後の子供全員の資産c2(p)を定式化します。
 
本人死亡時(一次相続時)

配偶者が相続する遺産割合を p とすると、一次相続後の配偶者の資産 b2(p) は以下になります。
b2(p) = (配偶者の資産) + (相続した遺産)- (相続税配偶者控除を考慮した、配偶者に対する相続税)= b + p x a - G(a,p)

子供が相続する遺産割合の合計は 1-p なので、一次相続後の子供全員の資産 c(p) は以下になります。
c(p) = (子供全員が相続した資産)- (子供全員に対する相続税)= (1-p) x a - (1-p) x F= (1-p) x (a-F)

上記は、前回とほぼ同じです。違いは、配偶者に対する相続税について、相続税配偶者控除を考慮した部分だけです。
 
 
配偶者死亡時(二次相続時)
 
相続人は、子供なので、合計 n 人

よって、相続税の基礎控除は 3000 + 600 x n

課税資産総額:= 配偶者資産 -  基礎控除 より、課税資産総額は t2 = b2(p) - (3000+600 x n)

子供一人当たりの法定相続分が 1/n なので、子供一人の課税資産は t2 / n 。よって子供の法定相続分に対する相続税は f (t2 / n )
二次相続による子供全員に対する相続税は F2 = n x f(t2/n)

相続によって子供全員の資産 c2(p) は以下になります。
c2(p) = (一次相続後の子供全員の資産)+(一次相続後の配偶者の資産)ー(二次相続による子供全員の相続税)
         =   c(p) + b2(p)  - F2
         = (1-p) x (a-F) + b + p x a - G(a,p) - n x f(t2/n)
         = (1-p) x (a-F) + b + p x a  - G(a,p) - n x f [ { b + p x a - G(a,p) - (3000 + 600 x n) } / n ] ・・・①

ここで、b = k x a とし、新たな変数 k を導入します。よって①の b + p x a の箇所は、 k x a + p x a = (k + p) x a

さらに、c2(p) を規格化するため、H(p) = c2(p) / ( a + b ) = c2(p) / ( (1+k) x a) を定義します。

よって①より

H(p) = [ (1-p) x (a-F) + (k + p) x a - G(a,p) - n x f { { (k + p) x a  - G(a,p) - (3000 + 600 x n)} /n } ] / ( (1+k) x a) ・・・②

ゆえに、H(p) を最大化する p を求める、ということになります。

これを解析的に解けるといいのですが、とてもできそうな気がしません。

今回は、相続税配偶者控除を考慮した場合の、二次相続後の子供全員が受け取る遺産総額の定式化までとします。

次回、n, a, k, p のパラメータに対して具体的にH(p) を求め、H(p)が最大となる p について検討します。

 

今回のまとめ:

相続税配偶者控除を考慮して最終的に二次相続後の子供全員が受け取る遺産総額を求めました。

本人と配偶者の資産:a, b = a x k
法定相続人:配偶者および子供(n人)
本人死亡時に配偶者が相続する資産割合:p

一次相続時の法定相続分に対する相続税総額:F
F = f (t/2) + n x f(t/(2xn))
t = a-(3000+600 x (n+1))
f(x):  法定相続分に対する相続税

相続税配偶者控除を考慮した、配偶者に対する相続税:G(a,p)
G = (p -1/2) x F ( a≧ 32,000 かつ 1/2 < p ≦ 1 )
G = (p- 16,000/a) x F  (16,000 < a < 32,000 かつ 1/2 < p ≦ 1 かつ 16,000/a ≦ p)
G = 0 (上記以外)

一次相続後の配偶者の資産: b2(p) = b + p x a - G(a,p)

一次相続後の子供全員の資産 :c(p) = (1-p) x (a-F)
 
二次相続による子供全員に対する相続税: F2 = n x f(t2/n)
 
二次相続後の子供全員の資産 :c2(p) = (1-p) x (a-F) + b + p x a  - G(a,p) - n x f [ { b + p x a - G(a,p) - (3000 + 600 x n) } / n ]
 
c2(p)を本人及び配偶者の資産合計で規格化:H(p) = [ (1-p) x (a-F) + (k + p) x a - G(a,p) - n x f { { (k + p) x a  - G(a,p) - (3000 + 600 x n)} /n } ] / ( (1+k) x a)
 
 
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