時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

北朝鮮の水爆実験について2

2016-01-08 00:16:32 | 北朝鮮
前回取り上げた朝鮮新報の記事だが、昨日の時点で以下のように書き換えられていた。

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○元の記事

朝鮮が初の水爆実験/朝鮮政府が声明発表

朝鮮中央通信によると、朝鮮政府は6日に声明を発表し、
同日午前10時、初の水素爆弾実験が成功裏に行われたと伝えた。

声明は、「われわれの技術、われわれの力に100%依拠した今回の実験を通じて、
われわれは新たに開発した実験用水素爆弾の技術的諸元が正確であるということを
完全に確認し、小型化された水素爆弾の威力を科学的に解明した」と指摘した。

声明は、今回の水素爆弾実験について、
米国をはじめとする敵対勢力による核威嚇と恐喝から国の自主権と民族の生存権を守り、
朝鮮半島の平和と地域の安定を担保するための自衛的措置であると指摘した。


そのうえで、朝鮮は責任ある核保有国として、侵略的な敵対勢力が
朝鮮の自主権を侵害しない限り、すでに明らかにしてきた通り、
先に核兵器を使用せず、どのような場合にも関連手段と技術を移転することはない
と述べた。

また、米国の対朝鮮敵視政策が根絶されない限り、
朝鮮の核開発中断や核放棄は絶対にありえないと強調。
正義の核抑止力を質、量ともに絶え間なく強化していくと明らかにした。

朝鮮中央通信は同日、金正恩第1書記が昨年12月15日、
朝鮮労働党を代表して初の水素爆弾実験を行うことに関する命令を下し、
今年1月3日に最終命令書にサインしたと伝えた。

また、今回の核実験が朝鮮労働党の戦略的決心に沿って行われたと指摘した。

http://chosonsinbo.com/jp/2016/01/20160106riyo/

○修正後の記事

朝鮮が初の水爆実験/朝鮮政府が声明発表

朝鮮中央通信によると、朝鮮政府は6日に声明を発表し、
同日午前10時、初の水素爆弾実験が成功裏に行われたと伝えた。

声明は、「われわれの技術、われわれの力に100%依拠した今回の実験を通じて、
われわれは新たに開発した実験用水素爆弾の技術的諸元が正確であるということを完全に立証し、
小型化された水素爆弾の威力を科学的に解明した」と指摘した。

声明は、水爆実験の成功によって、
朝鮮は水爆まで保有した核保有国の前列に堂々と立つことになり、
わが人民は最強の核抑止力を備えた尊厳高い民族の気概をとどろかすことになったと述べた。

また、今回の水素爆弾実験について、
米国をはじめとする敵対勢力による核威嚇と恐喝から国の自主権と民族の生存権を守り
朝鮮半島の平和と地域の安定を担保するための自衛的措置であると指摘。

米軍の原子力空母打撃集団と核戦略飛行隊を含むすべての核打撃手段が
絶え間なく投入されている朝鮮半島とその周辺が、
世界最大のホットスポット、核戦争の発火点になっていること、


米国が敵対勢力を糾合して各種の対朝鮮経済制裁と謀略的な「人権」騒動に執着して
朝鮮の強盛国家建設と人民生活の向上を阻み、「体制崩壊」を実現すべく狂奔していることに言及し、
朝鮮の水爆保有は主権国家の合法的な自衛的権利であり、
誰もけなすことのできない正々堂々たる措置であると強調した。

声明は、朝鮮は責任ある核保有国として、侵略的な敵対勢力が朝鮮の自主権を侵害しない限り、
すでに明らかにしてきた通り、先に核兵器を使用せず、どのような場合にも
関連手段と技術を移転することはないと述べた。

そのうえで、米国の対朝鮮敵視政策が根絶されない限り、
朝鮮の核開発中断や核放棄は絶対にありえない
と強調。
正義の核抑止力を質、量ともに絶え間なく強化していくと明らかにした。

朝鮮中央通信は同日、金正恩第1書記が昨年12月15日、
朝鮮労働党を代表して初の水素爆弾実験を行うことに関する命令を下し、
今年1月3日に最終命令書にサインしたと伝えた。
また、今回の核実験が朝鮮労働党の戦略的決心に沿って行われたと指摘した。
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より民族主義的な主張になったと同時に、米韓の継続した武力威嚇についても言及されている。

北朝鮮が述べているように、アメリカと韓国は毎年、北朝鮮の領海付近で軍事演習を実施している。
その演習では核兵器を搭載することができるB2ステルス爆撃機・B52爆撃機・F22ステルス戦闘機が
参加しており、2005年には北朝鮮の首都である平壌上空を飛行、急降下と急上昇を繰り返していた。


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米韓合同軍事演習「フォールイーグル」(野戦機動演習)に
ステルス戦闘機F22が参加する理由は、平壌への威嚇にあるとされる。

米国は軍事演習を使って、もうひとつの重要な対北心理作戦「作戦計画5030」
(北朝鮮動揺計画)を行っているとされるからだ。その中身は、レーダーに捕捉されない
ステルス戦闘機を平壌上空に送りこみ急降下や急上昇で威嚇するというものだ。

米軍が同演習にステルス機(当初はF117)を投入したのは2005年から。
同年の夏、平壌上空に侵入する「5030」の秘密作戦があったことをスクープしたのは、
日本の軍事専門家、恵谷治氏だった。恵谷氏はいう。


「この年F117は平壌上空から
金正日総書記の住む宮殿めがけて急降下、急上昇を繰り返した。
爆撃機の爆音と振動はものすごい。
金総書記は本当の恐怖というものを体験したはずだ


恵谷氏のスクープはその後、予期しない形で裏付けられている。
米韓合同軍事演習に参加していたF117のパイロットが米軍事専門誌に
「私にとって最も記憶に残る任務は北朝鮮の領空をかき回したことだ…
その任務のことを考えると、気が遠くなるような感じだ」(エアフォース・タイムズ)と証言したのだ。

北朝鮮は、通常なら国際社会に『米帝が領空侵犯の暴挙』などと騒ぐはずだが、
これまで一切、反応してこなかった。これは「捕捉不能なステルス戦闘機に
北朝鮮空軍機は緊急発進すらできなかった」(恵谷氏)からだと分析されている。

今回、F222機が沖縄県嘉手納基地から「フォールイーグル」に参加のため
韓国北部の京畿道烏山の米軍基地に到着したのは3月31日だった。
その後、訓練に従事し、4月3日には沖縄に帰還している。
最高速度マッハ2・5、戦闘行動半径約2200キロ。

恵谷氏は「F22は平壌に侵入しただろう」と推測する。

平壌では1日最高人民会議が開かれていた。
2日には「寧辺の核施設再稼働」宣言も行われている。
米国が対北心理作戦を仕掛けるには絶好の時期だったはずというわけだ。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130407/frn1304071023001-n1.htm
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元は産経の記事らしいが、こういう軍事演習が毎年行われている現状に対して
北朝鮮が強く抗議するのは、ごく当たり前の感情だと思うのだが、多くのメディアは、
この演習を「例年行っているもの」と称して、問題のあるものとは認めてこなかった。

「いつもやっている演習」→「だから問題ない」というこの理屈はいかがなものだろうか。
 その理屈でいえば、北朝鮮の核実験もいつもやっていることだから問題ないのではないか?
 
こういう理不尽な主張を当然視しているのが今のメディアや知識人の態度なのである。



上の地図は日本地図を上下逆さまにひっくり返したものだが、
北朝鮮は、上図のように周辺を米軍基地に囲まれ、
核弾頭を搭載できる爆撃機や、同国の都市・基地への空爆が可能な戦闘機が
定期的に飛び回っている状況の中
、水爆実験を行ったというわけである。
その意図は抑止以外の何者でもない。
(なお、上図には記されていないが韓国にも米軍基地はある)


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北朝鮮、「水素爆弾は使用しない」


北朝鮮が「どの国に対しても核兵器は使用しない」と表明しました。

イルナー通信によりますと、北朝鮮は7日木曜、
水爆実験の実施を発表した北朝鮮に対する世界的な非難に対して、
「北朝鮮は単にひとつの実験を行ったに過ぎず、侵略されない限り
 決してそれを他国に対して使用することはない
と述べました。

北朝鮮はさらに、
「北朝鮮の核兵器製造計画はアメリカの北朝鮮に対する敵対政策の終結によってのみ停止される。
 そうでなければ、核開発を断固推進する」としました。

アメリカと一部の国は、北朝鮮で6日水曜発表された水爆実験に疑問を示していますが、
この問題は世界で大規模な反響を呼んでいます。

韓国は、声明を発表し、
「北朝鮮の行動は挑発行為であるのみならず、朝鮮半島の存続と未来にとっての脅威だ」としました。

この核実験の実施を受け、国連安保理は緊急会議を開催し、北朝鮮に対する新たな決議を採択し、
同国による核実験の実施に対抗するために新たな措置を講じることが必須だとしました。

北朝鮮の同盟国である中国でも、抗議文書が北朝鮮大使に手渡され、中国政府の抗議が伝えられました。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/61307
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一連の報道を見て、納得がいかないのは北朝鮮と米国は未だに戦争中であり、
平和協定を結ばない限り、いつ北朝鮮が攻撃されてもおかしくはないという状況を
全く考慮していないことだ。

北朝鮮と同様に大量虐殺兵器を有しておきながら、対話によって放棄し、
その後、アメリカ主導の多国籍軍の攻撃によって滅んだ国が二つある。


イラクとリビアだ。

イラク戦争では、2003年3月、国連安保理の容認なしに米英などが武力を行使したが、
同年10月の安保理決議1511で、事後的に同国への攻撃が追認された。

リビアもまた同様に大量虐殺兵器を放棄した後に、
NATOが現地のイスラム過激派と協力しながら爆撃を行い、文字通り地球上から消滅した。

この件について国連の潘基文事務総長は、
この空爆は国際社会が「市民を保護する責任」を実践しているのであって
不当な内政干渉には当たらないと語り、
軍事行動の目的はカダフィ政権の打倒ではなく、
あくまで 「一般市民の保護」 にとどまるのだと強弁した。


いずれの地域においても、現在は混乱の状態であり、ISなどの過激派の巣窟となっている。
空爆さえなければ、このような事態は発生しなかったのである。


両国の体制を破壊し、過激派によるテロと同国への空爆で
何千何万の人命が失われた最大の責任者は国際社会(国連)そのものだ
と言えよう。


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サウジ戦闘機がサヌア空爆でクラスター爆弾を使用

サウジアラビアの戦闘機が、イエメンの首都サヌアの住宅地を禁止兵器で空爆しました。

イエメンのニュースサイト・サバーネットによりますと、サウジの戦闘機は
国連の警告を無視し、6日水曜、サヌアの住宅地をクラスター爆弾で空爆しました。

国際法規によりますと、クラスター爆弾は禁止兵器とされています。

サウジの戦闘機がサヌアで大々的にクラスター爆弾を使用していることで、
多くのイエメン市民が死亡し、またサヌアのインフラや建物に大きな被害が出ています。

サウジアラビアによるこの犯罪は、国連がサウジ主導の連合軍による
クラスター爆弾のイエメンでの使用に関して警告してから、わずか2日後に行われました。


イエメンの数百人の学生は6日、サウジのイエメン各地に対する
攻撃の継続に抗議して抗議集会を行い、教育機関に対する攻撃を非難しました。

イエメンの大学生は、イエメンに対するサウジ主導の連合の攻撃停止のために、
国際社会が努力するよう求めました。

サウジアラビアは一部の同盟国とともに、アメリカの支援を受けて、
昨年3月26日からイエメンに対する大規模な攻撃を開始しました。

この攻撃により、これまで、
女性や子供を含むイエメン人数千人が死亡し、数万人が難民化しました。

また、イエメンの80%のインフラ施設や医療施設、
サービス施設も破壊されています。


http://japanese.irib.ir/yaman/item/61301-%E3%82%B5%E3%8
2%A6%E3%82%B8%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F%E3%81%8C%E3%82%B
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サウジアラビア主導の連合軍による
住宅地へのクラスター爆弾の投下は
北朝鮮の水爆実験と同じ日に行われた。


以前から警告を受けていたにも関わらず、それを無視して行ったサウジの空爆と
警告を受ける前に行った水爆実験のどちらがより悪かは子どもでもわかることだ。

住宅地を狙ったイエメン市民の殺害は無視に近い反応で、
誰も死なない単なる実験には経済制裁の検討である。


国連の報告によると、2014年9月から11月にかけてのアメリカのシリア空爆で、
デリゾール、イドリブやアレッポ等において民間人を含む865人が死亡している。

この間、北朝鮮はシリア国民の誰も殺していない。

今年の2日にはイスラエル軍がガザ地区を爆撃しているが、
イスラエルは国際社会から経済制裁を受けたことは一度たりともない。

当然、北朝鮮はパレスチナの人々を殺害したことなどはない。

右翼が何かと目の敵にする御用新聞の朝日の社説には「東アジアの脅威であるだけでなく、
世界の核不拡散と核軍縮の努力に逆行する振る舞いに、国際社会は厳しく臨むべきだ。」
と書いていたが、明らかに平和を脅かしているのは欧米とその同盟国である。


核を持つか持たないかを基準に善悪二元論を展開し、
眼前のジェノサイドには目もくれようとしない「国際社会」が平和の守り手になれるのだろうか?

その独善的な態度がイスラム過激派を産み、彼らから報復を受けているのではないか?
先のパリの同時多発テロは、その象徴的事件だったのではないか?

私は北朝鮮だろうとどこの国だろうと核は持つべきではないと考える。
そのためには相手国の安全が保障されることが何よりも必要とされると思う。

北朝鮮の苦境を知りながら、あえてアメリカに対して一切の批判を行わず、
同時期に行われたサウジアラビアなどの親米国家の民間人虐殺を不問とする
現在の「国際社会」(正確には大国中心の国際政治)はあまりにも偏った正義感を有していて、
殺されてもよい人間と滅んでもよい国を話し合って選んでいる。それではいけないと思うのである。


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