時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

鳩山由紀夫氏のウクライナ論

2015-04-29 00:30:41 | リビア・ウクライナ・南米・中東
日本では全く騒がれていないが、ロシアでは鳩山由紀夫氏のクリミア訪問は
ちょっとしたニュースになっていて、良心的日本人として評価されている。


これが日本では売国奴よばわりされているのだから、なんとも皮肉な話。
逆に安倍は、モスクワの戦勝記念式典の出席を断ったせいで日本の評価を下げている。


本当に何も騒がれていないので心配になるが、今、ロシアでは
日本が18億ドルもの大金でキエフを財政支援していることに対してかなり怒っている。


そういう中、鳩山氏の訪問は日露の緊張を緩和するちょっとしたイベントだったのである。
今回、取り上げるインタビュー記録は、今月中旬に鳩山氏がクリミアについて述べたものだ。


長すぎるので、クリミアについて語られている一部文章のみを抜粋する。

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鳩山元総理の冒頭発言
久しぶりにカメラが並んで、政治家に戻ったような感覚を覚えております。

今日私をお招き下さったのは、"なんでクリミアにいったんだ、お前"みたいな
話だと思っておりますので、まずはそれをメインに申し上げながら、
総理時代のこと、普天間のことなどを皆様方にお話をさせていただければと思います。



なぜクリミアに参ったのかその答えをひとつ申し上げれば、
日本という国を真の意味で独立した国家にしたい、ということからでございます。




鳩山という家においては、祖父の頃からロシアとの関係というものが
重要な位置を占めていたものですから、総理時代にも、
北方領土問題の解決に向けて少しでも役に立ちたいと考えておりました。


当時のメドベージェフ大統領との間で数回会談をいたしましたけれども、
北方領土問題の打開に向けた方向性を見出すことができないまま、総理を辞めることになりました。



私はプーチン大統領の間に、この問題を解決させなければならないと強く考えております。
そして大変良いことに、安倍首相とプーチン大統領は6回も首脳会談を行い、
両者の会見は大変良好だと伺っております。したがって、プーチン大統領と
安倍首相との間で、解決に向けた議論がスタートするんではないかと期待をしておりました。



ところが昨年の冬から春にかけて、いわゆるクリミアの問題が起きて、
日本は米国に追随するような形でロシアに対する経済制裁を加えました。


私が推察するに、安倍総理、あるいは日本政府は、
あまり経済制裁をやりたくなかったんじゃないかと思いますが、
しかしアメリカに押し切られる形で、お付き合い程度の軽微なものでしたけれど、
制裁を加えたんだと思います。




昨年の秋、モスクワを訪れた時にナルィシュキン国会院議長から、
「日本の政治の間違いによって制裁が課せられて、私達はそのことを大変遺憾に思う」
と言われました。たとえ軽微なものであっても、ロシア側とすれば
経済制裁というものを深刻に受け止め、その結果として
プーチン大統領の来日が今になっても決まらない、という状況になりました。




プーチン大統領が日本に来るということがまだ決まらない状況の中で
北方領土問題の打開に関して真摯な議論ができるはずもありません。
私もそれは大変にもったいないことと思っております。



従って私は、本当にアメリカに従うような形で日本が経済制裁を行うべきであったのか。
あるいはこれからも制裁を続けて行くべきなのか、現地に行って是非見てみたいと思ったのです。

また、数日前に、ここ外国特派員協会で古賀茂明さんが招かれて、
メディアと政治、特に政権とのあり方についてお話があったと伺っております。
今回のもう一つのテーマはそこにもあると思っています。



日本の政府、あるいは外務省は、アメリカという国の情報は基本的に正しいものであると受け入れて、
それで日本の対応の判断をしているように思いますが、今回のウクライナの問題に関して申し上げると、
必ずしもアメリカの情報が全てではないように私には思います。


ウクライナ問題に詳しい知識人の方の意見として私が理解しておりますのは、
やはりアメリカ、欧米側が、プーチン大統領がソチのオリンピックで
ある意味で手足が縛られている時に様々な画策を行って起こしたものである
と理解するべきだと思います。特に、アメリカの軍産複合体に支援を受けている
ネオコンが背後で様々な活動をしていたことが明らかになっています。


ヤヌコビッチ政権はそのような方々によって非合法に追放された、
そのように解釈するべきではないかと思います。



これは見方によって大きく異ることであるわけですが、当然アメリカ側とすれば、
市民活動・市民運動の方々が民主化を求めてヤヌコビッチ政権を倒したということになると思います。
見方によるものですから、どちらが正しいと一概に申し上げることは出来ないかもしれません。

しかし一方の側だけが正しい、すなわちオバマが正義で、プーチンが常に悪である、
という判断をすることは必ずしも適当ではない、そのように思います。



私が申し上げたいことは、このような問題を解く鍵でございまして、
例えば市民活動派と治安部隊の双方に多くの死傷者が出た事件がございますが、
その時、両者が同じ銃弾で殺されたという事実があります。

市民活動側、民主化を求める側からすれば当然ヤヌコビッチ側がやったということですけれども、
どうも事実はそうではない、ということでございます。



また、ヤヌコビッチ政権が追放されたあと、暫定政権、そしてポロシェンコの政権が
できていくわけでありますが、その彼らの政権が「ウクライナ化」ということを
強く求めていったことが騒乱を大きくしたと思います。




閣僚の中に多くのネオ・ナチの人が存在していることも含めて、
この新しい政権において、ウクライナ語が強要され、
ロシア語が公用語から外されるという状況が起きました。

クリミアは特にロシア系の方が5割を超しています。
もしロシア語が公用語から外されると、そういう人たちが
公務員として登用される道が閉ざされていく事になります。



そういった人たちの、新しい政権ができることに対する恐怖が、彼らを住民投票に導きました。
9割を超すかたが住民投票においてロシアへの編入に賛成したわけでございます。
私はその住民投票が行われたほぼ一年後にクリミアを訪れました。
そこには当然戦車もありませんし、滞在中、兵士の姿も一切見ませんでした。


当然、私がクリミアの全ての現実を見ることができたわけではありません。
しかし、クリミア連邦大学とセヴァストーポリにあります
モスクワ大学の分校で講演をさせていただきましたが、
集まった多くの若い学生の目は非常に輝いて、朗らかでございました。


私が見る限りにおいて、作られた平和というよりも、
彼らは今の状況に満足しているように思いました。


従って、私は今、彼らが満足をしているということにおいて、
状況が1年間で好転してきているという現実を理解するべきだと思っています。



住民投票の結果が9割を超えていた、という数字そのものが大きな意味を持つとは思っていません。
なぜなら、例えばクリミア・タタール人という少数民族は選挙のときには
55%の投票率だったと言われています。55%というのは、日本の国政選挙を見ると
そんなに低い数字ではないように思いますが(笑)、政権の行動によって、
1年前は投票に好意的でなかった人たちも、現在は99%の方々が
ロシアのパスポートを持っており、7割の方々が編入に賛成しているということを伺いました。



クリミアは、一言で言うと18世紀後半からロシアの領土であったということもあり、
それが再びロシアの領土になったということだと私は思っています。

従って、今、クリミアがロシアの領土になって平穏を取り戻している中、
日本も含めて欧米の国々がこれからも経済制裁を加えるべきかどうかということに関しては、
しっかりと慎重に考えるべきだと思っています。



私は2月に行われた、ミンスクでの東ウクライナを中心とするいわゆる停戦合意の報道の中に、
クリミアの文字がどこにも無かったということに注視するべきではないかと思います。


すなわち、ドイツやフランスから見ると、クリミアの問題というのは
これ以上大きな問題にしない、基本的に解決済みだと思っておられるのではないかと思います。



従って、私はクリミアの問題において、ロシアに対する経済制裁は
日本が真っ先に解くのがもっとも適切な処置ではないかと思っています。

昨日、そのことを議論した時に、元外務官僚の東郷和彦さんが
「近々安倍首相がオバマ大統領と会談をするときに、この話をするべきでないか」
とおっしゃいました。彼の主張は、これからもロシアに対する経済制裁を続けると、
ロシアは急速に中国に接近する。そのことはアメリカにとっても日本にとっても
メリットがある話ではないだろう、ということです。


私はこのようなことが日米首脳会談において議論されることを期待しています。
この会談にはもっと期待することもあるわけですが、
まずはクリミア問題についてのみお話を申し上げた次第であります。

http://blogos.com/article/110686/
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何か新しいことを述べたわけではないが、
クリミア問題についての要点をわかりやすく説明している。


こういう人物がつまはじきにされていることもまた、
日本のメディアのヤバさを如実に示しているような気がする。



念のため、言っておくが、これでも鳩山氏は保守派の人間である
本人も保守派を自称しているように、別に彼は左翼ではない。


そういう人間でさえ、まともな発言をしているように見えるのは、
それだけ日本でのウクライナ問題の語られ方が極端だということを示している。

ビートたけしは右ですよ、リテラさん

2015-04-29 00:22:27 | 日本政治
私は日本の右傾化は左翼が右傾化しているのであって
右翼が右傾化しているのではないということを再三、主張している。



これに加えれば、最近の論壇は右翼が左傾化していることも見逃せない。


といっても、別に右翼が足を洗って社民党や共産党の支持者になったわけではない。
逆に、表面的には左翼っぽいポーズを見せるようになってきているのだ。


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「最近のテレビは何もいえない」ビートたけしがテレビの自主規制を暴露し大批判!

報道局を圧力文書で脅し、コメンテーターの発言にイチャモンをつけ、
気に入らない番組を作ったテレビ局を呼びつける。
安倍政権のメディア、とくにテレビに対する圧力が日に日に強まっている。

一方、テレビの側も対抗する気などさらさらなく、権力のいうがまま、完全に骨抜きにされている。


しかも、テレビ局の関係者やコメンテーターたちはこんな状況におかれながら、
「圧力なんてない」「これをしゃべったらダメといわれたことはない」などと口をそろえ、
自分たちの弱腰ぶり、政権との癒着をひた隠しにする始末だ。

ところが、そんななか、ある大物芸人がテレビの圧力、自主規制の存在を暴露し、批判した。

「最近、テレビじゃ何も面白い事がいえなくてムカムカしてるんだ」


現在、発売中の「SAPIO」(小学館)5月号が「誰がテレビを殺したのか」
という大特集を組んでいるのだが、そのトップバッターとして、
あのビートたけしが登場し、吠えているのだ。

http://lite-ra.com/2015/04/post-1058.html
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この記事を読むと、さもビートたけしが安倍に抵抗している芸能人であるかのように見える。

だが、そもそもビートたけしは保守派の人間である。

彼自身、南京事件を否定しようとする歴史改ざん運動に携わっているし、
彼の名が冠された『ビートたけしのTVタックル』は有名な右翼番組だ。

記事にも紹介されているSAPIOは昔からある右翼プロパガンダ雑誌だ。
そういう雑誌に顔を出す御仁が左翼であるわけがなかろう。

つまり、政治的立場で言えば、たけしは安倍に近い人間なのである。


じゃー、なんで北野はリテラの記事で安倍にケチつけてんのという話だが、
よく読むと、何も北野武は安倍が慰安婦を否定しているだとか、
現地の反対運動を無視して沖縄米軍基地を立てようとしているだとか、
そういう左翼的な理由で反対をしているわけではないことがわかる。


テレビ業界の人間として、政府にケチをつけられるのが嫌だというそれだけの話である。
これは、業界の重鎮としては、しごく全うな意見だ。しかも、北野は長年TVタックルで
遠まわしに安倍の主張を後押ししていたプロパガンダ芸人だ。本人からすれば心外だろう。


「なんだよ!ずっとお前を支持してきたのに恩を仇で返しやがって!」といったところだ。



このように、最近の論壇では、右翼が安倍やネトウヨにケチをつける傾向がある。

小林よしのりや池上彰などのニュース芸人たちが「けしからん」とホザいている。
(忘れてはならないのは、ネトウヨの言い分は彼らの意見を真似たものであること)


最近、騒がれている古賀氏にしても、彼は元々は自民党側の官僚で、
小泉政権の時から、解雇規制緩和、法人税減税、郵政民営化といった
新自由主義政策に尽力してきた人間なのである



それがなぜか今、いかにも左翼の人間であるかのように語られている。
実に不思議だ。古賀は現在の格差社会をもたらした張本人の一人なのに。


いや、本当は理由がわかっている。
実のところ、今の出版業界では、意外と右翼本が売れないので、
解説芸人が生き残るには右にも左にも良い顔をしなければならない
のである。



単発では右翼本はヒットを出すのだが、
デタラメを書けばいいだけの専門知識が必要とされない楽なジャンルなので、
著者が多すぎて、一部の人間を除いて、全体としてはあまり売れないのである。


そういうわけで、池上彰をはじめとして、右翼でも左翼でもない「良心派」を
気取って客観的な解説(笑)を提供しようとしている輩が増えている。


ある意味、石原や橋下よりも卑怯な連中だと私は思う。
極右の連中は「自分は右翼だ、何がいけない、文句あっか」という立場だが、
池上や北野は「私は右翼ではありません」と言いながら右翼的発言をしている。

あきらかに後者のほうが読者や視聴者をだましている。

リテラも、最近の週刊誌の中では最も良心的なメディアではあるのだが、
せいぜい、中道左派といったレベルに留まっており、左翼でもなんでもない。



その証拠に、リテラは古賀氏は擁護しても、鳩山氏は擁護していない。

彼の先日のウクライナ問題に関しての発言は非常に含蓄のあるもので、
左翼を気取りたい人間ならば、当然、取り上げなくてはならないものだ。


ましてや、鳩山氏は正真正銘、政府の圧力を受けていたのだから、
記事のネタとしては、非常に美味しいはずだ。では、なぜ取り上げないか?


それは、鳩山由紀夫という保守を自称する政治家が、日本政府と違う見解を述べているからだ。
例えば、ウクライナ問題にしても、ロシアを擁護する発言をしている。


つまり、鳩山の発言は古賀のそれとは内容が質的に異なるものである。
一方、古賀の発言は安倍よりも程度が低いだけで、それは量的な問題である。


鳩山が「から揚げにレモンをかけるのは邪道」派なら
古賀や池上は「から揚げにレモンをかけるのが王道」派であり、
安倍は「から揚げはレモン汁で満たした鍋の中にドボンと入れて食うべき」派といったところか。


上の例からもわかると思うが、要するに今の良心派(笑)は
「レモンをつけすぎや!」と怒っているのにすぎないのであり、
「レモンをかけずに食え」と言っているわけではない。この違いを把握しないといかんだろう。