時事解説「ディストピア」

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キューバの体制崩壊を望むゲバラの甥(『世界』2015年4月号感想)

2015-04-12 00:28:29 | キューバ・ベネズエラ
我が国にも明治天皇の玄孫という微妙な血縁関係以外にセールスポイントがない二股男が
皇族を気取って極右活動を続けているが、キューバにも似たような人物がいたらしい。


最近、『週刊金曜日』や『世界』でチェ・ゲバラの甥へのインタビュー記事が掲載されている。

竹田某同様、ゲバラの甥という微妙な血縁関係を利用して原稿料を頂いているくせに、
叔父が苦労して作った国が滅ぼされるのを願っている物凄い男である。


アメリカとキューバの関係が変わりかかっているこの時期に
反体制派の言い分をそっくりそのまま掲載させる岩波って一体何なんだろうか?



まぁ、とりあえず、この男の言い分を聞くとしよう。


この男、10歳の頃に母国のアルゼンチンからキューバに亡命したのだが、
その際にゲバラの親族ということで優遇されたことについて疑問を感じたらしい。


「学校に通い始めると、伯父の理想とは裏腹に、自分がほかのキューバ人よりも
 ずっと良い生活をしていることに大きな疑問を感じるようになりました」


ところが、その後、中学に進学した後に、他の生徒同様に
午前中は農作業に従事し、午後から勉強に勤しんだことに不満をもらしている。



「農村部にある学校で、朝は畑で働き、午後は勉強をしました。
 農作業は厳しく、生徒たちは冷ややかで、まるで刑務所のようなところでした。
 チェは革命を通して、労働を喜びとし自己犠牲をいとわない「新しい人間」を
 育てることを目指しましたが、その理想とはほど遠い状況でした」


ごらんの有様である。
自分だけ特別扱いされるのはおかしいと言いながら、
いざ他の生徒と同じ扱いを受けたら、まるで刑務所だとブーたれている。

労働を喜びとし自己犠牲をいとわないのが「新しい人間」だと言いながら、
自分は他の学生と共に畑で働くことが大嫌いというわけだ。何と言う矛盾。

(大体、1日中ならいざ知らず、朝だけの農作業がそこまで苦痛なのか?)


その後、高校を中退し酒びたりになったらしいのだが、
18歳ごろから反体制派になったのだそうな。1983年にアルゼンチンが民政移管すると、
帰国したが、それをきっかけに完全に資本主義国の申し子に目覚めたらしい。


「私にとってアルゼンチンは、キューバとはまったく違う世界でした。
 キューバでは、資本主義国には多くの問題があると聞かされていましたが、
 そうしたものは見当たりませんでした。」


これ以降は、キューバに対する恨みつらみをこれでもかと書いているのだが、
やはり、家族や親族との関係を損ねるかもしれないという不安もあるらしい。

ただ、本人は舌の根も乾かないうちに、
「その過程で、私は伯父にこう言われた気がします。「おまえ自身に語りかけることで
 わかった真実を、私にも聞かせてくれ」と。」とほざいているのであまり気にしてないのだろう。



私がこの甥について腹立たしく思うのは、偉そうなことを言う割りに、
常にゲバラの名を挙げて自分の意見を正当化させていることだ。

自分が正しいと思うのなら、いちいち会ったこともない伯父の霊を妄想し、
「ゲバラが言うから俺正しい」と言うのではなく、ゲバラが間違っていると言っても、
自分は正しいと信じるから、告発を続けるとはっきり言ってやれば良いのだ。
(こういう女々しさが、このインタビュー記事の全体を覆っている)


アメリカによる経済封鎖がキューバの革命の進行を妨げたのではないか
という質問に関しては次のように述べている。

「全体主義的政権にとって外敵というのは、都合の良い存在です。
 その敵に全責任を押し付けられますからね。
 そうやって国民に陳腐な愛国精神を抱かせ、団結させる。
 スペインにとっての英領ジブラルタル、
 アルゼンチンにとってのフォークランドも、
 キューバにとっての米国と同様です。しかも、これは非常にうまく機能します」



ここで、ゲバラの実子であるアレイダ・ゲバラの言葉を引用しよう。

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米国が最初にとった行動は経済封鎖です。

キューバは世界屈指のニッケル資源国です。
1940年代、米国はニッケルに注目し、「キューバのために」と言って、
ニッケル工場建設に協力しました。しかし、ここに罠があったのです。


国際市場で売れるニッケルの純度は98%前後。

しかし、米国の協力のもと、つくられた工場では純度85%前後のニッケルしかつくれません。
こんな純度では世界中のどの国も見向きしませんでした。

しかし、一カ国だけ積極的にキューバのニッケルを購入した国があります。
それが米国企業だったんです。米国企業は安価のニッケルを購入して合金することで利益を得ました。


キューバにとって不利な貿易でしたが、それでもいくらかの外資獲得を果たしたのも事実です。
その状況が変わったのが1960年代から。

米国による経済封鎖が始まり、米国企業はもちろんのこと、
日本など諸外国の企業もキューバのニッケルを買えなくなりました。


米国がそれを許さなかったからです。
経済封鎖のため、米国内では厳しい罰則が設けられました。
キューバと売買した企業は500万~1000万ドルの罰金、または企業資本の没収されるというのです。

ここで強調したいのが、たとえ国家間で問題があったとしても、
人道的に食品や薬品などの輸出入は禁止されるべきではありません。

キューバ国内で流通する薬品のうち、8割は米国製でした。
食品も多くを輸入に頼っています。いま日本が経済封鎖をされたならば、どうなりますか?

子どもや貧しい人たちが犠牲になるのです。

http://www.futoko.org/special/special-40/page0912-1743.html
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ボンクラの甥と、このアレイダ・ゲバラの発言、
どちらがキューバの国民のためになるだろうか?


少なくとも私は、アメリカの対外政策がキューバに与えた甚大な被害を
「全体主義国家」のスケープ・ゴートと一蹴して無視する輩を信用しはしない。


ちなみに、アレイダ・ゲバラは父と同じ医者となり、
主に途上国を中心に、医療チームの一員として海外で患者を診ている。

先日、エボラ熱がアフリカで発生した際にも、発生地域にかけつけ患者を治療した。


どこぞのゲバラの名前だけ借りて
金稼ぎをしている元不良と
天と地ほどの差がないだろうか?



私は、この甥が
「キューバには、人々が自由で平和な国であってほしい」と、
 30~40年も前の個人的体験をもとにキッパリ言ってしまうのも恐ろしいと思うが、
それを真摯に受け止めて記事として掲載してしまう岩波書店も恐ろしく思う。


このインタビュー記事だけを読めば、キューバはオーウェルが描くような
全体主義国家で、民主化が必要な地獄の国だと錯覚するのではないだろうか?


こういうプロパガンダは東ウクライナやリビアやベネズエラでも行われていることだが、
岩波(『世界』編集部)は、これら国家に対してもキューバと同様、アメリカの思い描く
虚像を「これが!!!真実です!!!」と宣伝して回るのではないだろうか?


ペレストロイカにせよ、冷戦終結後にせよ、日本のほとんどの左翼は
東側「に」歩み寄るというよりは、東側「が」歩み寄ることを強要しながら、
いかに東側が悪魔が支配する国であるかをギャンギャン叫んでいたような気がする。

今、それと同じことを岩波がまた繰り返しているように思えてならないのである。


無論、こういう行為をして喜ぶのはアメリカをはじめとした支配国である。
つまり、岩波は「アメリカの横暴をゆるすなー!帝国めー!」と言っておきながら、
実際に、その手のアメリカ帝国論の本を多く出版しておきながら、いざ具体的な話になると、
「へへっ、おっしゃるとおりでございやす!こらしめてくだせぇっ!」とゴマをすっているのである。

これはアラブの春やイラク戦争直前の折に最も強く現れた。

こういう出版社がオピニオン・リーダーであるかのように振舞っているあたりからも、
今の左翼が相当にヤバイレベルに陥っていることがそれとなくわかるのである。


・追記

現在の日本の言論状況でもっとも危惧されるのが、
ほとんどの左翼(団体・出版社)が、この「見えない支持者」に陥っていることだ。


彼らはアメリカの対外政策が沖縄に向けられると、なかなか良い意見を言う。
だが、これがいざ東側(東欧、中東、アフリカ)に向けられると、とたんに
プロパガンダの片棒を担ぎ、積極的に現地の国家体制の崩壊を果敢に主張する。


そして、案の定、崩壊後に訪れる内戦で多くの人間が傷つくと、
「こんなはずではなかった!」「真の民主主義を!」と自分の責任をはぐらかすのである。


これは人種差別はよくないと言いながら、在日コリアンや中国・韓国人を
徹底的にこき下ろす右翼や一般市民と同じものだ。

理屈や一般論では賛同するが、具体的な問題になると簡単に反動的になる。

独裁国家では国によってプロパガンダが遂行されるが、
真の独裁国家では、国よりも民間団体が積極的に扇動に勤しむ。


9.11直後の報復主義に基づくアフガン侵攻を忘れてはいけない。
(大多数のアメリカ市民とメディアの扇動に基づいて実行された)