時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

日本の左翼はイランやキューバを守れるか

2015-04-16 00:09:09 | 反共左翼
先日の「世界」(岩波書店の雑誌)の内容を読んでも、
どうも日本の左翼は平和や人権をうたっておきながら、
眼前の大国による侵略行為に対して批判をするどころか積極的に支持さえしてしまうような気がする。


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イランとロシアの国防大臣が、ロシアの対空ミサイルシステムS300の
イランへの供与に関する対立を解消することで合意しました。


ファールス通信によりますと、
イランのデフガーン国防軍需大臣とロシアのショイグ国防大臣は、
20日火曜朝、テヘランで、軍事問題に関する合意を締結しました。


この合意では、テロや分離独立派、過激派への対策、両国の利益、
地域の平和と治安の確保に向けた協力の拡大が強調されています。


デフガーン大臣は、現状において、有力なロシアと独立したイランは、
地域や世界の安定の重要な柱になっているとし、

「イランは、テロ対策において責任ある役割を果たし、
 地域の政府や国民を守り、地域の治安と安定の強化に向けて
 責任を持って行動するつもりだ」と語りました。


さらに、レバノンのシーア派組織ヒズボッラーの戦士多数が殉教した、
最近のシオニスト政権イスラエルによるシリア南部での攻撃を非難し、
「シオニストや覇権主義者が過激派テロリストを全面的に支援しているのは、
 地域や世界の安全を乱すためだ」と語りました。



また、地域の問題は、地域諸国の努力によって解決すべきだとし、
「地域の出来事に対する外部からの干渉は、状況を複雑にすると共に、
 危機を増大させるだろう。世界的な決意により、過激派、暴力、テロを根絶すべきだ」と述べました。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/5
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ロシア下院のプシコフ外交委員長が、
「S300ミサイルシステムのイランへの移送は、戦争の勃発を防ぐ」と語りました。


フランス24が15日水曜伝えたところによりますと、
プシコフ委員長はイランに対するミサイルシステムS300の移送に関するロシアの決定について、

「ローザンヌで核協議が行われ、6カ国が参加した。
 この協議でのイランの発言は、信頼に値すると判断された。
 現在、われわれはイランの核計画に関する最終合意書を作成中である」と語りました。


プシコフ委員長また、「極度に緊張した段階を経て、
現在、政治的な協議の段階に入っており、国連安保理による軍事的な制裁は、
今年末までに解除されるだろう。このような状況において、
国連安保理の制裁の解除後、イランに対するロシアの武器移送は、違反行為とはならない」
と述べました。



さらに、「S300ミサイルシステムの移送は、政治的な協議と矛盾しない。
アメリカや中東諸国の一部の党派には、常にイランに対する
軍事攻撃の脅迫を提示しようとする人が存在する。
もしイランに対する軍事攻撃が行われれば、それはローザンヌの枠組み合意と、
政治的な話し合いの終わりを意味する」としました。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/53871
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外国のインターネット・ユーザー達は、
イランに対するS-300ミサイル供与禁止をロシアが解除したことについて、
積極的に自分達の意見を書きこんでいる。

彼らは、プーチン大統領は、
今回の決定によりイランに対する軍事行動を阻止したと指摘している。



新聞「Washington Post」の読者らは
「イランはロシアの武器を購入する権利を有している。
 なぜなら、この国は、米国そしてイスラエルの脅威にさらされているからだ」との考えを示した。

あるユーザーは
「イランは、このシステムを必要としている。なぜならイスラエルは、
中東の近隣諸国を爆撃し急襲するため定期的に飛行機を飛ばしているからだ」と書いた。


又多くの読者が「プーチン大統領は、その行動によって、
地域の軍事紛争を阻止し、地域の軍事バランスを維持している」と評価した。



新聞「The Wall Street Journal.」のコメントの中で、
ユーザーのJohn Geddie氏は「そうすることでプーチン大統領は、
イランに対する軍事行動の可能性を葬った。S-300は、
世界最良の地対空、対ミサイル・システムの一つである」と書いている。



さらにCNBCの読者は、米国の対外政策のレトリックのダブルスタンダードを指摘して
「ロシアあるいは中国が他国に武器を売ろうとするといつも、
ホワイトハウスはあらゆる悪意を持って妨害するが、
自分達が他国に武器を売るときは『すべて合法的だ』と済ましている」と指摘した。



ユーザー達は、自主的で米国に依存しない
外交政策実施を恐れないプーチン大統領の個人的資質を高く買っている。


例えばAFPのある読者などは
「プーチンだけが、オバマの鎖を締めている。それはなぜか?
 彼はオバマを恐れていないからだ」と書きこんだ。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20150415/198627.html#ixzz3XOK8x4gt

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恐らく、上の対空ミサイルに関する一連の動きについて、
岩波系の知識人は「軍拡競争が始まった!」と騒ぎ立てる一方で、
イランに対するアメリカ・サウジ・イスラエルの封じ込め運動については触れないだろう。


あるいは、アメリカやイスラエルの威嚇行為を指摘する声に対しても
「イランの全体主義体制を正当化させる方便」とみなして聞き流すだろう。



今回のキューバに関する岩波のそれは、まさにそうなっている。
2015年3月・4月号のキューバに関する記事は、まさにそういう内容だった。



既存のフィデル・カストロ体制を全否定した上で、
ラウル政権を幾分、褒め、アメリカの言うことを聞いて「民主化」することを願う。


雪解けやペレストロイカ、冷戦終結時の態度と全く同じ。



非西欧型社会を散々にこき下ろし、頑迷な全体主義国家が
民主化してくれることを喜ばしく思うという「こちら側」の問題を省みない態度。


非西洋国家の「自省」と「変革」を喜ぶこの態度。


どことなく、南米・アフリカ大陸の先住民を野蛮と決め付け差別し、
現地の有力者により西洋化すると「文明化した」と大喜びする侵略者を思い出させる。



『はだかのソ連』という本が1961年に毎日出版社から出版されたことがある。

スターリン政権を地獄の日々と形容し、ソ連の民衆を被害者として美化したのち、
フルシチョフ政権のソ連は今までと違う新しい社会を築くだろうと評価している。



これと同じことが世界の先月号で書かれていていた。
いわく、フィデルカストロの政権は頑迷に社会主義政権を固持していたが、
柔和なラウルが音頭を取るようになったことで、キューバも新しい社会になるのだとか。


ペレストロイカの時も、それまでのソ連の行為をこれでもかと非難して、
これからはゴルバチョフが何とかしてくれるから大丈夫だという意見が結構あった。



彼らは冷戦終結後、やはりソ連の今までの努力を全否定し、
これからは新しいロシアになるであろうというお決まりのパターンを取った。



要するに、彼らがしていることは支持の仮面をかぶった糾弾なのである。
一見、支持しているように見えるが、実は敵国の批判がメインになっている。


こういう見解は、実のところ、現地の国民にとっては大変な侮辱である。


「雪解け」という小説を1954年に書いたソ連作家イリヤ・エレンブルグは
 大祖国戦争(第二次世界大戦)が終わったとたんに、手のひらを返した
 西ヨーロッパの役人、知識人に対する恨みつらみを手記に書いている。


彼はスターリンの死後にスターリンを批判し始めた最初の人間の一人だが、
スターリン政権時のいくつかの過ちを認めても、それを根拠に
自分たちが今まで参加した活動すべてを否定されることに対しては激しく怒っているのだ。


というのも、彼はソ連の芸術派遣員でもあったため、海外の文化人や政治家と接触し、
あるいは海外のメディアが自国を甚だしく攻撃する様子を熟知していたからだ。


スターリン政権時にソ連を訪れ、ソ連への礼賛者から批判者へと転向した
アンドレ・ジイドに対する彼の口調は非常に厳しい。こういう感情は、
まるで壊れた玩具をゴミ箱へ投げ捨てるような真似をする他国の反共左翼には理解できないだろう。


東ドイツの元国民の中にも、東ドイツ全否定論に対して、
「いや、不自由な面もあったが、それなりに幸福な暮らしが送れた」と反論する人間がいる。

東ドイツの政権に対して不満はあったものの、それでも東ドイツならではの
生活や文化を楽しんでいた人々も大勢いたのである。それが西ドイツに吸収された途端、
東側の価値を否定して生きていかなければならなくなった。このアイデンティティの喪失を
取り上げ、西ドイツのあり方を批判した人間の一人が先日亡くなったギュンター・グラスだった。


要するに、彼らは彼らなりに国づくりに参加していたわけだ。
現在の日本も、不完全な選挙制度や投票率の低さから、必ずしも民意が反映された
結果にはなっていないわけだが、それを理由に戦後日本および戦後左翼の軌跡が全否定され、
アメリカに首を垂れ、アメリカ型の経済方式に改造するのが正義だと言われたら腹を立てるだろう。


不思議なことにキューバがアメリカに頭を下げ、市場化するのを喜ぶ連中は、
自国がアメリカに頭を下げ、市場化することに対しては断固反対の姿勢をとっている。


これは実に奇妙なことだ。アメリカが80年代以降、日本に強いているのは
国営企業の民営化と規制緩和だ。要求は同じなのに、なぜ日本は駄目でキューバは良いのだろう?


「これまでは最悪の地獄の国だったが、これからは天国になるぞ」という言い方は
 既存の国家の全否定(それはアメリカやヨーロッパのプロパガンダの全肯定でもある)
 を前提にした発言で、相対的あるいは絶対的に欧米型国家が非欧米型国家に勝る、
 非欧米型国家は野蛮な全体主義国家であるという蔑視に基づいた発言である。

 この種の蔑視が誰にとって都合が良いかは言うまでもない。


ついでに言うと、この手の意見はイランやキューバ、ロシア、中国、北朝鮮などの
非欧米型国家については、十分なページ数をかけて執拗に攻撃した後、
申し訳程度にアメリカやEU、NATOについてチョロっとたしなめて中立を気取る。



こういう老人に冷水をかけた後、マッチ一本をよこすような行為が
本当にアメリカやヨーロッパの帝国主義を抑止するのだろうか?


私はそう思わない。


少なくとも私は、国交正常すらネタにして、これまでのキューバの軌跡を
全否定し、「社会主義の失敗」と断定し、市場主義の部分的導入を小躍りするような行為は
左翼というよりは、現地の資本を収奪しようとするハゲタカ連中と同類に見える。