時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

NHK「ニュース7」のプロパガンダについて

2014-12-06 20:23:58 | マスコミ批判
ニュース番組は一見、公正中立、事実を伝えているように見える。
しかし、実際にはある特定の政党に有利な報道を行っているのが現実だ。


特にNHKは安倍の息がかかっていることで有名なTV局だが、
1週間後の選挙を前に、同局のニュース番組『ニュース7』で工作を仕掛けていた。


各政党の党首が演説をしている風景が流されていたのだが、
最初に放送された安倍首相の演説は聞き捨てならない内容だった。


「雇用は増やし、賃金も増大した。
 前の民主党の時代に戻っていいのか」


という内容なのだが、以前に話したように、
アベノミクスによって増大したのは非正規の雇用であり、正規の社員は逆に減っている。

また、賃金には名目賃金と実質賃金というものがあり、
アベノミクス以降、後者は下がる一方だ。


簡単に説明すると、名目賃金というのはいわゆる給料で、
これが仮に20万から30万に増えたとする。この場合、名目賃金は増えたと言える。

しかし、ここで物価が2倍になったとしよう。
生活費が以前は12万かかったが、今は24万かかったとしよう。

すると、以前は20-12=8万が余分に残ったが、
     今は30-24=6万しか残らない。

このように、主に物価に影響される
生活費の上昇・下降も含めて計算した賃金を実質賃金という。


繰り返すが、アベノミクスによる円安とインフレ、
加えて消費税が8%に上がった結果、生活費が上昇し、実質賃金が下がっている。


つまり安倍の発言は9割がた嘘に近い事実なのだが、
この点についてNHKは訂正をしたりしない。


これでは、本当に安倍政権のおかげで
暮らしや経済が良くなったように錯覚するのではないだろうか?



しかも、安倍の主張は自民党以外の政党に入れたら、雇用も賃金も下がるぞ
と脅しを入れたものであり、自民党に敵意を抱いていない聴衆なら
すんなり信じて票を入れてしまうのではないだろうか?

さらに、その後の左派系党首の演説も、
消費税8%をやめる(共産)、改憲阻止(社民)など、
確かにそういう演説はしているが、アベノミクスが失敗し経済が低迷しているという
肝心の事実の指摘は流していない。


民衆というものは自分の日常生活を守るのに精いっぱいであり、
消費税が上がろうが改憲しようが、明日の飯を食える保証があるなら、
つまり経済政策が確かかどうかを基準に票を入れるのである。


アベノミクスが成功しているかのような報道をし、
結果的に自民党のイメージアップに貢献する。


プロパガンダという派手に嘘をつくものを連想しがちだが、
実際には、ニュース番組などの中立性が保障されていると
皆が錯覚している媒体を通じて、じわりじわりと追い詰めるのである。

アジア女性基金の問題について

2014-12-06 00:33:16 | 歴史全般
同じく、イ・ウォンミョン教授の文章から。


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「アジア女性基金と日本政府の責任回避>

先に紹介した大沼保昭「慰安婦問題とは何だったのか」(2007)と
柳原一徳「従軍慰安婦問題と戦後五十年」(1995年)での議論をもとに、
「女性のためのアジア平和友好基金」(以下「アジア女性基金」と略称)に関して、
なぜ私が日本政府がしっかりとした被害者の補償作業に協力しなかったと主張したか、
簡単に説明します。


1.1995年6月1日、日本政府は、いわゆる「民間募金構想」、
すなわち、「女性のためのアジア平和友好基金」の事業計画については、
次のように述べています(柳原編、33-34)。


①従軍慰安婦のための国民的な補償のための資金を民間からの資金で調達する。

②従軍慰安婦のための医療、福祉などを目的とした事業を行う者については、
政府の資金から資金をサポートする。

③事業が実施されるとき、政府は、従軍慰安婦に国家としての
率直な反省とお詫びの気持ちを表明する。

④政府は、過去の従軍慰安婦の歴史資料を整理して、歴史の教訓とする。



2. 上記の政府発表から確認できるのは、

1)それは「民間募金」の性格を持つこと、

2)「従軍慰安婦のための医療、福祉などを目的とした事業媒介機関」については、
政府の支援金になることがありますが、「慰安婦個人への補償」には、
政府の資金が使われていない
ことを意味します。


3. 大沼教授も自身の著書の中でメリットを明らかにしたが、政府から借り入れた資金は
「財団法人アジア女性基金」を運営するための人件費と運営費、事業費として、
また、その多くは慰安婦への補償ではなく、同時代の女性に対する暴力を
予防するための事業に使われたと明らかにしています。
(大沼、131)。


4. しかしながら、日本政府は慰安婦問題に対する
国際社会の批判が公論化されるたびに、アジア女性基金をもとに、
日本は慰安婦一人一人に首相の謝罪の手紙を送って補償していると、
戦後補償責任の正当性を国際社会に広報する世論戦を展開するために、
アジア女性基金を積極的に活用しました。



5. アジア女性基金について、日本政府が「非協力的」だったとは、これを意味します。
日本政府の一貫した態度は、戦後賠償責任の問題はサンフランシスコ講和条約と
日韓協定で終わった。だから慰安婦個人の国家賠償責任がないということです。

朴裕河教授は個人補償の多くの部分が公的資金と言っているが、
これはこのような事実をまだ知らないか、誤認していることから始まったと思われます。


6. 大沼教授も述べているが、慰安婦問題が日本社会で沸騰された初期を除いて、
日本政府は慰安婦問題という「台風」は時間の経過ととも静なるとの態度で
一貫しています。政府の発表の中で、「過去の従軍慰安婦の歴史資料を整理して
、歴史の教訓に時にする」という方針もやはり回避しました。


7. 民間の「アジア女性基金」を作り、募金に参加した人々の善意は尊重されるべきです。
しかし、これとは別に、私は「アジア女性基金」を作り、運営を担った
大沼教授などの認識からは、日本敗戦後の「一億総懺悔」論のように、
植民地主義と帝国主義の責任主体を蒸発させた現象と似た印象を受けました。

これが私の主観的印象なのかは、じっくり考えてみましょう。

8. 慰安婦問題の「責任主体」は誰でしょうか?日本政府です。


日本政府が責任を背負うことは何でしょうか?

「国家賠償」はいったん論外にするにしても
(私はその時期がいつでもしなければならないという立場ですが)、

「教育」の次元ではこの問題が反映されるよう
「歴史資料を整理して」「教訓にする」ための行動に出ることです。


しかし、現在の日本政府はどうでしょうか?

教科書検定承認の問題でも分かるように、
責任を否定する行動をむしろ強化しています。


9. 私は日本軍慰安婦問題の専門家ではない。
現在は切迫して山積した個人的なことが多く、余裕がありません
(すぐに次の週にある世界市民教育のシンポジウム関連の発表文もこれから記述します)
が、いつか機会があれば、慰安婦問題に対する私なりの体系的な思いを込めた文を
一方書いて発表することで、研究者としての私の責任を背負おうとはしています。

10. しかし、わたしは朴裕河先生と「問題設定」が違うので、
(先生の慰安婦問題についての議論は、脱植民地主義の一角の
「サバルタン」(従属的社会集団)の概念と関係があるのではないかと推測するが)、
先生の著作を中心に議論をすることはないでしょう。もちろん、
私は自分の視点から「事実」を見つけ、「解釈」し、
また、「批判」をすべき議題があるからです。

11. 議論の過程で、朴裕河先生の心を痛めたなら、心よりお詫びを申し上げます。
フェイスブックのスペースというのは、リアルタイムに意見を提出している
ところなので、私はミスしたことも多いでしょう。皆さんの健闘を祈ります。
http://east-asian-peace.hatenablog.com/entry/2014/07/06/005231
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このように、アジア女性基金自体が
日本政府の国家責任の否定に利用されており、
最悪な場合、慰安婦制度という史実そのものの否定に利用されている。


加えて、慰安婦制度をめぐる問題は差別の問題である。
日本の極右は在日・本国コリアンを差別するための口実として、
日本人の誇りを傷つけるチョーセン人を許すなという正義をでっち上げているのだ。


このことに関して韓国のニューライトが無知だったとするならば、
彼らは自分の利益のために差別に加担したも同然だ。卑劣極まりない。


なお、イ教授も述べているように、
首相の謝罪文をネタにして「日本は既に謝罪している(のに韓国は……)」
という言説を流し、「その事実をアメリカに知らせれば慰安婦問題は解決される」
という珍説を述べている自称インテリジェンスがいる。池上彰だ

書評紹介 朴 裕河 「帝国の慰安婦」

2014-12-06 00:00:32 | 浅学なる道(コラム)
ネトウヨと大差ない意見を熱を込めて語る朴裕河と対照的に、
イ・ミョンウォン(慶煕大)教授の書評は読んでいて大変ためになった。

一部を紹介したいと思う。なお、全文は以下のページで読める。
http://east-asian-peace.hatenablog.com/entry/2014/07/06/005231

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1. ナヌムの家と「慰安婦」被害者が朴裕河教授が出版した
<帝国の慰安婦>の出版禁止の仮処分申請と名誉毀損訴訟をして、
これに対して朴教授が対応、訴訟をしたことに遺憾の意を表します。

現在の状況では、一審までは行くでしょうが、お互いの間で調整し、和解されるよう望みます。

2. 私は朝鮮人慰安婦を専門的に研究した者ではありません。朴裕河教授も同じでしょう。
私は韓国文学を、朴教授は日本文学を専攻しましたが、
私が慰安婦問題に対して関心を持ったきっかけは、
私の専攻である近代文学の研究から来ました。


6. 沖縄南部の糸満市まぶし君の沖縄平和公園には
いくつかの種類の朝鮮人慰霊施設があります。朴正煕が造成したという朝鮮人の
慰霊碑もあり、平和の礎に記入されている朝鮮半島出身鶴瓶、軍部、慰安婦の角皿雨も、
当時の日本軍32軍司令官である浮島の角皿雨と一緒にいるのも見ました。



7. 沖縄の人々は、現在も日本を「ヤマト」と呼んで、日本人を
「ヤマトンチュ」と呼びます。沖縄を「ウチナー」と自分たちを
「ウチナンチュ」と呼びます。沖縄戦当時に滞在していた朝鮮人たちを「チョセナ」と呼びます。


8. 朴裕河教授は日帝下強制連行された慰安婦と
日本軍との関係をこのような"日本国民"だったと言うが、
沖縄で沖縄人、朝鮮人、日本人たちは朴教授の考えとは異なる考えた行動であった


最も明らかなのは、"馬"が異なっていたため、
沖縄や日本語で似たもの同士会話すると、スパイ容疑で処刑することが日常茶飯事でした。



9. 沖縄の朝鮮人慰安婦は、台湾、南方、朝鮮半島、中国、
粒度する日本軍に沿って沖縄に連行された。中国から来た慰安婦たちは、
日中戦争前後「看護部」を含む「勤労挺身隊」に行って「慰安婦」に転落した人と、
当初から「慰安婦」として強制連行された人々であり、朝鮮半島から
沖縄に強制連行された慰安婦は、1944年10月10日の空爆直後、
軍部と一緒に沖縄に連行された人々です。


12. 後で長く分析するべきですが、朴教授が「アジア女性基金」
及び「強硬派」慰安婦と支援団体を批判している論理は、
大沼保昭・東京大学教授の「慰安婦問題は何だったのか」
(中央公論、2007)の主張と似ていて、多くの部分で同じです。


13. したがって、私は朴裕河教授と議論するよりも、
大沼教授の著作を問題にして、これを批判的に検討するのが
一応先行しなければならないと思います。この問題について
多くの知見を持っているハンギョレのハン・スンドン記者や
中立的な態度を堅持しているキル・ユンヒョン記者などが検討してみるといいと思います。



14. 私は韓国の日本文学学会や歴史学界も問題だと思います
日帝末「慰安婦」問題について、韓国の史学界は、
これは「女性学界」の問題だというふうに研究を放棄しました。

だから、何人かの女性の学者たちと私のような国文学者
たちが議論をすることになったのです。日本で留学生活をした
日本の学者たちが、この問題についてしっかりとした議論をしないで、
今日のような事態が演出されたものです。


15. アジア女性基金は、右派とリベラル、そして北朝鮮問題に
造詣の深い和田春樹教授も参加しました。しかし、日本の吉見教授を
含む慰安婦問題の解決に積極的に良心的左派知識人たちは参加していません

<アジア女性基金>の方は、まるで「第3の道」を開くというふうに、
特に初期の慰安婦の真相究明に尽力した日本国内の左派と
韓国と挺身隊対策協のような支援団体を「強硬派」と非難しました。



16. 大沼保昭氏が中心になった「アジア女性基金」は、
慰安婦ハルモニたちの世俗性を強調しました。歴史的審判が重要なのではなく、
その場で生きていく"お金"が重要である。これを否定してはならない、というふうでした。
日本政府は、過去も今も「道義的責任」をとると言っています。

17. 「道義的責任」という言葉。本当に美しい言葉です。
「法的責任」は話にならない、それは不可能であるが、困難であるとの
免罪ロジックがこの「道義」の真の意味です。


朴裕河教授が巧みに歪曲しているが、
「アジア女性基金」について、日本政府は協力しませんでした。


官民合同募金形式での資金のうち、公的資金は、
ほとんどが「公務員労組」などを中心とした金額であり、
皮肉なことに、在日朝鮮人もの寄付金を出しました。

18. 韓国政府は、金泳三政権と金大中政府を経て、元慰安婦への国家的支援を決定しました。
日本に向けて「お金」ではなく、国の法的責任と賠償を要求している
ものです。

米国政府もこのような韓国の態度を支持し、現在も日本政府を圧迫しています

19. <アジア女性基金」は半分の成功と失敗に終わりました。
今回ムン・チャングク氏の首相指名に反対したセヌリ党議員の
中にイ・ジャスミン議員がいました。なぜでしょう?
フィリピンも日本軍慰安婦の被害国だったからです。

20. <アジア女性基金>事業は終わりました。
アジア女性基金の最初の広告は、韓国の「ハンギョレ」に掲載されており、
当時の東亜日報の記者だったイ·ナギョン(現全羅南道知事)が
これを積極的に評価する記事を書いた事があります。
<アジア女性基金>側で、自分たちのビジネスの目標を説明するために、
韓国の知日派知識人たちとの世論形成をお願いしましたが、
その時にも難色を示したと、大沼教授は「慰安婦問題とはなんであったのか」
で書いています。

その本には、ソウル大学のイ·ヨンフン教授と一緒に
朴裕河教授が「アジア女性基金」を理解する珍しい
韓国の知識人だとして、高く評価されています


21. 慰安婦問題は、単純な国家暴力ではありません。
これは、植民地主義と帝国主義と男根主義が総合された20世紀の悲劇です。

旧日本軍が「慰安婦」の印象を記している文には、
彼女らが「妹」「妻」「同志」だったとか、死を目前に置いた瞬間に
「救いの女」だった式のとんでもない発言が頻繁に登場します。
限界状況での感情的な倒錯だと私は思います。


22. 私たちが慰安婦問題を議論するのは大沼氏や朴裕河教授が言うように
「反日ナショナリズム」のためではありません。私は自分の研究の立場を
「非民族主義的・反植民地主義」の観点に堅持しています。

私と似たような考えをする人も多いことをお知らせいたします。

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朴に代表される日本人と朝鮮人の友好関係を強調する人間は、
得てして大日本帝国国内でのヒエラルキーに無頓着である。


実際には、琉球や朝鮮人は二等市民として扱われていた。
システムとして平等な関係ではなかったのである。

そして、日本の戦争犯罪の場合、大将や高官の個別的責任を
求めているのではなく、大日本帝国の政府や軍部が創造した差別システムに
対して非難しているのであり、そのシステムの設計者として日本政府を訴えているのだ。



このように国家責任を追及する姿勢をガン無視する朴氏の態度は、
後述されているアジア女性基金の全面的な美化と慰安婦の侮辱へ繋がる。


実際に、慰安婦団体が慰安婦を操っているという彼女の言い分が
正しいとするならば、なぜパク氏と協力して第二、第三の慰安婦団体が
設立されないのだろうか?アジア女性基金の申し出を受け入れたために
バッシングを受けた慰安婦もいる。なぜ彼女たちと一緒にパク氏は
何らかのアクションを行わなかったのだろうか?


答えは明白で、パク氏の言説が韓国国内の親日派(※)にしかウケないものだからである。
(植民地時代に日本政府に協力して自国の民を弾圧した連中のこと。
 彼らは第二次大戦後も北朝鮮に対抗する存在として韓国で権力を
 握り続けた。戦後、日本の戦犯が政財界に返り咲いたのと似ている)

===
私たちが慰安婦問題を議論するのは大沼氏や朴裕河教授が言うように
「反日ナショナリズム」のためではありません。

私は自分の研究の立場を「非民族主義的・反植民地主義」の観点に堅持しています。
===


日本の市民団体も同じ気持ちだと思う。
少なくとも私は人種差別とその派生形(帝国主義・植民地主義)に
対して抗う立場から、この問題に対して反対姿勢を取っている。


パク氏を含めた韓国のニューライト、日本の右翼は、
国家責任や法的責任を論じるや否や反日のレッテルを貼り、拒絶する。

これは結局は「日本の戦争犯罪」を語るな、忘却せよという態度である。

しかし、この忘却せよという高圧的な姿勢が皮肉なことに
国際社会に関心を抱かせ、今、着々と糾弾の声が高まりつつある。


そういう意味では、この本は日本政府に対する風当たりが
ますます強くなる原因となるものだろう。もっとも、その代償として
在日・本国コリアンへの異常な差別を助長させることになるのだが。