新緑の美しい静かな大原の寂光院近くの宿に一泊しました。
すぐそばに清流の流れる雰囲気の良い民宿でした。
宿泊客の半分が外国人。京都です!
建礼門院の居所であったことで名高い寂光院は、そこから歩いて
ニ、三分。おとなりさんと言ってもよい近さです。
寂光院は聖徳太子が建立されたという古い古い尼寺ですが、それより
何より、平家物語の終章の舞台として有名なところです。
平清盛の娘であり、安徳天皇の母として栄華を極めた後の建礼門院、平徳子が、
その後一転、都を追われ、壇ノ浦で幼い息子安徳天皇と共に入水するのですが、
自分だけが引き上げられて、京都に送還され、この大原の地で安徳天皇はじめ
滅びた平氏の菩提を弔い余生を過ごしたという物語は、悲しくも劇的で、この
地の静寂との対比に深い感慨を覚えすにいられません。
京都とはいえ、比叡山麓の山深い里での生活は質素なものだったのでしょう。
でも、ここは柴漬けの発祥の地だったり、建礼門院の御付きの阿波内侍が花
や薪を頭に乗せて売り歩く大原女の元祖だったりと、魅力的なエピソードに
もこと欠きません。
しかしやはり最も感動的なのは、平家物語の「大原御幸」でしょう。
建礼門院の夫高倉天皇の父親、つまり舅である後白河上皇がお忍び
で会いに来られ、はじめは固辞していたものの、涙ながらの再会を
果たしたという逸話です。
一度焼失した本堂が、十七世紀の初め淀君により再建され、それがまた
しても平成十二年に放火により焼失という、お寺自体も数奇な運命をた
どっています。そんな栄枯盛衰など露知らぬげに、大原菊が今年も寂光
院のお庭で可憐な花を咲かせています。