もう三月も下旬、学校が春休みに入り、近くの小さな公園から子ども
たちの明るい声が響いてきます。その公園の片隅では、沈丁花の花
が開き、よい香りが漂っています。沈香のようなよい香りがして、汀
子(クローブ)のような花をつけるので、こう呼ばれるとか。名前から
して日本的ですが、学名はdaphne odora(香りのよいダフネ)、ギリ
シャ神話の、アポロンに言い寄られ、逃げたけれど、逃げきれなく
なったところを月桂樹に変えられたという女神の名前です。ちょっ
とイメージが合わないのですが。
「降りしきる雨の吐息に 濡れて傾く沈丁花、、、」
石川さゆりの『沈丁花』の歌い出しです。沈丁花には雨が似合います。
可愛いクロッカスも咲いています。これもギリシャ神話に縁の花です。
クロッカスという若者が羊飼いの娘に恋をしたけれど実らず、悲
しみのあまり自殺し、哀れに思った花の女神フローラが、彼をクロ
ッカスの花に変えてあげたのだと。ギリシャ神話って、人間が花や
木や星に変えられる話が多いですね。
日が射してもうクロッカスの咲く時分 高野素十
梅と彼岸桜と椿の競演、春先の散歩は目の保養です。