磯の上に 生ふる馬酔木を 手折らめど 見すべき君が 在りと言はなくに
万葉集 巻二・一六六 大伯皇女
「手折った馬酔木を愛する弟に見せてあげたいと思うけれど、彼が生きている
とは誰も言ってくれない」伊勢の斎宮であった大伯皇女が弟の大津皇子を偲んで
で詠んだうちの一首です。容姿端麗、知識深く、謙虚で人望厚い理想の皇子さ
まであったのに、政争に破れ自害させられます。いつの時代にもよくある話で
す。母(この場合は後の持統天皇)が息子を帝位に就けたいばかりに邪魔者
を排除する。理不尽ですが、歴史とはそういうものなのでしょう。でも、大津皇
子が生き長らえておられたら、どんな立派な天皇になられたかと、大津皇子
びいきの私は思わずにいられません。
それはともかく今年も馬酔木の花の咲く季節になりました。お友達の庭に咲い
ていたピンクのきれいな馬酔木です。馬が食べると足が萎えるので、こんな名
がついたとか。昔から日本にある木で、万葉集にもよく出てくる植物だそうです。
紅梅も、
サクランボのなる西洋実桜も遅ればせながら、やっと満開になりました。