読書感想文14 ~リオ 警視庁強行犯係・樋口顕~

2009-04-30 00:07:36 | 
今野敏氏の樋口顕刑事シリーズの第1編です。

今野氏といえば、SFですよね。
個人的にSFは趣味じゃないので読みません。
名前は知っていたが読んだことはない、というのが氏の作品でした。
ところが氏の刑事モノの評判がいいとかで、
本屋さんにも平積みされていたので、思い切って購入しました。
“本格警察小説”ということなので、SF色はないでしょう。

主人公はもちろん樋口顕という刑事。
通常の刑事小説と主人公像が一線を画しています。
というのも、樋口は常に自分を見る人の目を気にしながら、
組織からはみ出さないよう、波を立てないように生きている刑事です。
特別な直感力を持っているわけでも、
強引な捜査能力を持っているわけでもなく、
事実に基づき、丁寧に捜査を続けてきた結果、
周囲から信用される刑事になったという設定です。

悪くないんですよ。
そういう刑事もいるでしょうから。
でも、描写が弱いのか、存在感がとっても薄い刑事になっちゃってるんですよ。
さらには物語りも抑揚なく進んでいくので、
それぞれの効果が負に相まって、なんだか読者は消化不良に陥いっちゃうんですよね

なんで存在感が薄くなっちゃってるのか。
もちろん、強烈な個性を持った刑事として描かれていないので、
ある程度は仕方ないとは思うのです。
でも、何よりも、樋口刑事は作中で容疑者に惚れてしまうんですよね。
で、半感情的な捜査を推し進める。
例えばこれが3作目とかで、
前作でしっかりと樋口という刑事の人物像が確定していればそういう設定もアリなんでしょうが、
第1作目からこれでは、著者の意図に反した人物像が読み手にできてしまうのでは、
といらぬ心配をしてしまいます。
感情に流されて捜査をする刑事だと思われかねません。
もちろん、それを打ち消すような表現は、作中を通してされているのですが、
刑事が容疑者に惚れる、
というのはそんな努力をかき消してしまうくらいにスキャンダラスですからねぇ。。。
しかも容疑者が魅力的という表現も足りなさ過ぎです。
ちなみにタイトルの“リオ”は、この女性の名前です。

さきほど、物語に抑揚がないという表現をしましたが、
それを象徴しているのがラストだと思います。
殺人がまさに行われようとしている現場に、樋口ともうひとりの刑事が踏み込む場面です。
いってみりゃあここは山場です。
読み手にビンビンと伝わる緊張感がなければいけません。
でも、緊張感が伝わらないんですよねぇ。
なんだかあっさりと山場のシーンが終わっちゃうのです。
読み手によりけりかとは思いますが、
少なくとも僕には、一切の緊張感は伝わってきませんでした。

骨太警察小説の好きな読者には、物足りない作品だと思います。
事件、刑事、容疑者、
この樋口刑事を主人公にした作品は、
今のところ、3作目まで発表されているようですが、
2作目を読みたいとは、残念ながら思えませんでした。。。
ということで、氏の作品はこれで最初で最後になりそうです。
では。


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