「電子の発見」は、厳密に言えば量子力学の範囲内に入りません。電子の発見にとって画期的な実験だった「真空放電」が実施されたのは19世紀の半ばだったからです。
しかしながら、電子が発見されたプロセスをたどることは、目に見えないミクロな世界を学ぶ上での出発点としてふさわしいのです。
では、電子がどういう実験で見つけられ、どのような電荷を持ち、どのような質量を持っているのかをこれから学びましょう。
*「電荷」という言葉に戸惑われた方がいらっしゃるのではないでしょうか(私もそうでした)。電気のことを物理的、あるいは微視的にいうとき、電荷といいます。電荷には正と負がありそれぞれ正電荷、負電荷といいます。同じ符号同士の電荷は反発し合い(斥力、せきりょく)、異なる符号同士の電荷は引きつけ合います(引力)。
電子は、真空放電をきっかけに発見されました。
真空放電とは何でしょうか。蛍光灯と同じような形をした放電管というガラス管に電極をつなぎ、管内の空気を抜いていきます。そして、上記の電極A(陰極)と電極B(陽極)に高い電圧を加えると、図のように光っている部分が見られ、放電が起こります。このように、気圧が低いときに空間に電流が流れる現象を、 真空放電 といいます。
真空放電をしているガラス管内に蛍光塗料などをぬると、明るく発光します(蛍光灯は、このようなしくみで明るく光るのです)。
ちなみに「真空」とありますが、本当の真空のなかで光は発しません。1/100気圧から1/1000気圧くらいの非常に薄くした空気中で「真空」放電は起こるのです。それ以上もっと薄くすると光を発しなくなるのです。
この〈光を発する何か〉は、「陰極線」と名付けられました。
この陰極線の正体は何なのかということが次に問題になってきます。
高校物理解説講義:「電子の発見」講義1
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