美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

中共のいまとこれから (美津島明)

2015年09月22日 20時12分35秒 | 政治
中共のいまとこれから (美津島明)



昨日、九月十九日(土)に放映された、ちゃんねる桜討論会「危ない!中国の行方」を観ました。中共の現状と展望に関して興味深い話がいろいろと出たので、みなさんにもそれをご紹介しようと思って、アップした次第です。詳細は、本編に譲るとして、全体を通して聴いてみて漠然と残った印象を述べてみようと思います。

七、八月を通じて、止まらない株価大暴落や人民元切り下げによる外貨の流出やここにきての輸出入額の低下などを目の当たりにすることで、国内外の〈中共当局は、経済をコントロールしうる〉という神話が崩壊したことは明らかです。習近平政権の経済政策は、目下、打つ手がことごとく裏目に出るという八方塞がりの情況にあるのです。要するに、実体経済の貧弱さをそのままにしておいて、二〇〇八年以来の米国の金融緩和に歩調を合わせて人民元を大量発行することで、いいかえれば、マネーの力だけで高度経済成長を成し遂げてきたことのツケが回ってきたということなのです。中共は、そのいびつさを、無理やり調整させられる抜き差しならない局面にさしかかっているのです。

アメリカは、昨年末金融緩和をやめました。そうしていまや、来月にでも利上げを断行するところまできています。そうすると、ドルのアメリカ本国への還流が促進され、ただでさえ強まっている大陸中国からのドルの流出の流れがさらに強まることが容易に予想されます。その事態は、中共にとって、既存の高度経済成長モデルの破綻を意味します。それゆえ中共当局は、世界のどの権力者よりも、アメリカの利上げを恐れているのです。

事ここに至って、中共に残された道は、突き詰めていえば、次の二つしかありません。

ひとつは、膨らみすぎた経済の規模に見合った金融システムの抜本的改革を断行する道です。具体的に言えば、自国の金融市場の自由化(ゴールドマンサックスなどの海外投資機関が、大陸中国の株式市場で自由に取引できるようにすること)を受け入れ、管理変動相場制を放棄して、他の先進国と同様の変動相場制への移行を実現すること(為替相場への介入を原則断念すること)です。この道を歩むのは、大陸中国の経済面での抜本的近代化を敢行し、そのことを通じて、中共が既得権益を放棄することを意味します。それが、すさまじい勢いで環境破壊が進み国民生活の総体が破滅に向かいつつある現状を改革する国民本位の国家を実現する道であるのは論を俟ちません。この先には、人民元がIMFのSDR(特別引き出し権)を構成するバスケット通貨となり、晴れてドル・円・ポンド・ユーロと並ぶ国際通貨に昇格する展望がおのずと開かれます。

もうひとつの道は、中共の高官たちが既得権益を手放すこと拒否し、国内経済に対する統制を強化し、人民元の自由化をかたくなに拒み、社会主義経済に逆戻りする道です。これが、膨らんだ経済規模を縮小させ、中共に対して根深い不満を抱くことになる大陸中国の人民たちを強権で押さえつけ、少数民族への圧政を強化する道であることは論を俟たないでしょう。中共当局は、相変わらず既得権益を享受し続けるのでしょうが、一般国民は不幸のどん底に叩き込まれることになるでしょう。

おそらく中共当局は、その間の「いいとこどり」を狙っているはずです。つまり、国内の既得権益の仕組みをそのままにするために、口先だけの人民元の自由化案をIMFに提示し、中共寄りのラガルド専務理事をだまして、人民元の国際通貨化を実現しようと目論んでいるはずなのです。これが実現すれば、中共は、ドルの裏付けなしで人民元を大量発行することが可能になり、ふたたび、高度成長路線に戻ることができるようになります。また、危うく画餅に帰するところだったAIIB(アジアインフラ投資銀行)は、人民元の潤沢な資金源を得ることになり、俄然息を吹き返します。念願の「人民元帝国」の誕生です。そのかわり、先進諸国と歩調を合わせて国際金融秩序を守ることなどさらさら念頭にない中共当局は、パワーアップした人民元を笠に着て、やりたい放題を繰り返し、世界経済はさんざんひっかきまわされ、軍事バランスは修復不可能なほどに崩れることが容易に想像できます。要するに、世界は、経済システムの安定と安全保障体制とを脅かす時限爆弾を抱え込むことになるのです。

だから、24日から訪米した習近平と会談するオバマ米大統領の責任は、じつのところ、きわめて重いのです。その場でオバマは、中共に都合のいい「第3の道」など選択肢としてないことを、つまり、米国はそれを絶対に認めないことを、習近平に対してはっきりと伝えなければならないのです。その意味で、今後の世界経済がうまくいくかどうか、および、中共発の大きな紛争の勃発を未然に防ぐことができるかどうかは、オバマの双肩にかかっているのです。オバマは、先ほど述べた「第一の道」が、大陸中国の人民の幸せを実現し、世界経済の安泰をもたらし、世界平和を維持するためのただひとつの道であることを、あの習近平に対してかき口説き、彼を説得しなければならないのです。オバマよ、大統領を辞める前に、それくらいの大仕事をしなさいよ。

では、よろしかったら(合計三時間弱になってしまいますが)、ご覧ください。後悔しないことだけは、お約束いたします。紹介記事では、触れなかったのですが、習近平の軍事パレードの裏話など、週刊誌ネタ的な意味でも、とても面白い話が満載です。

1/3【討論!】危ない!中国の行方[桜H27/9/19]

2/3【討論!】危ない!中国の行方[桜H27/9/19]

3/3【討論!】危ない!中国の行方[桜H27/9/19]

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