当シリーズ、こわごわとはじめてみたのですが、一応お読みになっていらっしゃる方もいるようなので、「その2」をアップいたします。
一曲目は、「Tシャツに口紅」の元ネタ、「カラーに口紅」です。
コニー・フランシスが歌った当楽曲は1959年5月に発売され、ビルボード最高5位でした。大瀧詠一は、小学校時代を振り返って、次のように言っています。
自分のファースト・チョイスという意味合いではコニー・フランシスだったわけ。親戚のうちに「カラーに口紅」があったんだよ。(中略)とにかく「カラーに口紅」ばっかりかけてたね。あれはアメリカン・ポップスの良いエッセンスが全部込められていると思うのね。あのリズム。ドラムとベースのタイトな感じと楽しい感じ。イントロのジェームズ・バートンのカッコいいギター。あれどう弾いてんだかよくわかんないんだよ、未だに。
カラーに口紅/コニー・フランシス
「Tシャツに口紅」は、1983年に発売されたラッツ&スターの2枚目(シャネルズ時代から通算すると11枚目)のシングルで、大瀧詠一は作曲者として当楽曲に関わっています。ちなみに、作詞は松本隆、編曲は井上鑑(あきら)です。2016年に発表された『DEBUT AGAIN』で、大瀧詠一による当楽曲のボーカルを聴くことができます。Youtubeで大瀧詠一の歌を聴くことはできませんので、ラッツ&スターの同楽曲を掲げておきます。リーダーの鈴木雅之は同楽曲を評して「早すぎた名曲」と言っています。セールス的にはあまり振るわなかったようです。それにしても、良い曲です。
Tシャツに口紅
二曲目は、「LET’S ONDO AGAIN」の元ネタ、「LET’S TWIST AGAIN」です。当楽曲は、カール・マンとデイヴ・アぺルの共作で、チャビー・チェッカーが歌っています。1961年で最もヒットした楽曲のひとつです。このウズ・ウズした感じといささかの悲哀感がいいですね。先ほど触れたラッツ&スターが同楽曲をあるライヴで取り上げているので、それも掲げておきましょう。
Chubby Checker - Let's Twist Again (lyrics)
LET'S TWIST AGAIN
Youtubeにたまたま「LET’S ONDO AGAIN」があったので、載せておきますね。これを歌っているのは、大瀧詠一ではなくて布谷文夫です。布谷文夫は、大瀧詠一が早稲田大学に入学した後に、はじめて出会った音楽関係の人物です。たしか専修大学に通っていたと思います。北海道出身です。彼には、『悲しき夏バテ』という1973年に発売された傑作アルバムがあります。それをプロデュースしているのが大瀧詠一です。なんというか、天然の無意識の奇人変人で、どこか愛嬌もあります。抜群の和製ブルースセンスの持ち主でもあります。同アルバムから「冷たい女」を掲げておきましょう。言い忘れるところでしたが、「LET’S ONDO AGAIN」はもちろん大瀧詠一が作った楽曲です。イントロのつながり具合がドンピシャリ、うまくいったところで震えが走ったそうです。
Let's Ondo Again’81 /アミーゴ布谷
冷たい女 布谷文夫 ~アルバム 「悲しき夏バテ」 より~
「LET’S ONDO AGAIN」は、第一期ナイアガラ・レーベルの最後のアルバム『LET’S ONDO AGAIN』に収録されています。大瀧詠一の言葉に耳を傾けましょう。
1978年のカレンダーをジャケットにしたアルバム『ナイアガラ・カレンダー78』がセールス的に全く不発に終わった78年のお正月、ナイアガラ第一期の活動を終わる事を決定しました。そして“最後”のアルバムとして企画されたのがこの『LET’S ONDO AGAIN』です。楽曲そのもののアイディアはラジオ番組『ゴー・ゴー・ナイアガラ』に寄せられたファンの葉書からで「チャビー・チェッカーも“ツイスト”をヒットさせた後に“レッツ・ツイスト・アゲン”を作っているので“ナイアガラ音頭”の続編も作ってほしい」という依頼でした。
当楽曲もそうなんですが、『LET’S ONDO AGAIN』全体、半分はヤケクソで作ったところがあるとは思うのですが、そのせいといおうか、怪我の功名と申しましょうか、独特の魅力があって、「コレは、傑作アルバムなんじゃないか」と思えてくるのです。次回にでもそのことに触れられたらと思います。
なんだか、けっこう長くなってしまいました。今回はこんなところで(実は、「ペパーミント・ブルー」の元ネタと思しき楽曲も目星をつけたりしておりますので、次回をお楽しみに)。
*上記の、大瀧詠一のコメントの引用は、いずれも『大瀧詠一 Writing&talking』(白夜書房)からです。
カラオケでは、ラッツ&スターのバージョンでしかないので、大瀧バージョンは大変ありがたいですね。
カラオケフリークの割に音域が狭い私にとって、この曲はシャウトできる最高の曲です。十八番になってしまいました。さびの部分だけで何回でも行けます。
お互いに不器用な男女の情感のやり取りが最高ですね。
「はっぴいえんど」時代のベストボーカルの、大瀧詠一の実力が遺憾なく発揮されている名曲です。
ついでながら、カラオケさえ同調圧力で禁じられ、反社会的な行為と指弾される現在で、カラオケ業界の存続と、独自工夫を願って止みません。カラオケ頑張れ、軽音楽を愛する者たちよ、頑張れ。