美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

米国中央銀行Fedの利上げ政策は、株価暴落を招く

2022年03月18日 20時19分16秒 | 経済
「グローバルマクロ・リサーチ・インスティチュート」からの全面引用です。

大井幸子女史によれば、世界経済の動向の決定的要因は米国中央銀行Fedの金融政策です。世界は、ウクライナ戦争に振り回されているかのようですが、戦争と株価のデータを分析すれば、戦争が株価に与える影響は限定的なのです。

引用した当論考は、タイトルにある通り「米国中央銀行Fedの利上げ政策は、株価暴落を招く」と主張しています。当を得たものなのかどうか、当方には判断がつきかねますが、とても興味深く読み進めたのは確かです。

世界政治と同じく世界経済も動乱期を迎えたようです。


***

3月FOMC会合結果は利上げ開始、政策金利は年内に2%以上となり株価暴落へ
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/21514
2022年3月17日 GLOBALMACRORESEARCH

アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は米国時間3月15日から16日にかけて金融政策決定会合であるFOMC会合を行い、コロナ後初の利上げを決定した。株式市場を崩壊させる「止められない利上げ」の始まりである。

ついに利上げ開始
今回の会合では元々0.50%の利上げも織り込まれていたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて市場はその可能性を除外していた。その織り込み通り、利上げ幅は通常通りの0.25%だったが、セントルイス連銀総裁ブラード氏だけは今回の会合で0.50%の利上げを主張して否決されている。

ブラード氏が0.50%利上げを主張した意味は小さくない。元々「インフレは一時的」でいずれ勝手に収まると根拠なく主張し続けていたパウエル議長に反論し、現在の利上げを主導したのがブラード氏らタカ派の連銀総裁たちだからである。

• パウエル議長に反旗を翻し始めた連銀総裁たち (2021/8/6)
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/14760

今後の利上げ速度はどうなってゆくだろうか。まずいつも通り発表された声明文を見てゆくが、やはり次のようにウクライナ情勢が言及されている。

ロシアによるウクライナ侵略は多大なる人的・経済的被害をもたらしている。アメリカ経済への影響は非常に不明瞭だが、侵略および関連する出来事は近くインフレに上昇圧力を与え、経済にとって重しとなりそうだ。

だがこの言及はあまり意味がない。投資家にとっての問題は、それでインフレを懸念し利上げが早まるのか、あるいは経済減速を懸念し利上げが緩やかになるのかである。だがそれについては書かれていない。Fedは言質を取らせないようにしているからである。

今後の利上げ見通し
今回の会合ではFOMCメンバーの今後の利上げ見通しをプロットしたドットプロットが発表されている。

こちらは声明文よりも具体的な手がかりを示してくれているが、前回12月に発表されたドットプロットではメンバーたちは年内に3回の利上げ(今回を含む)を見込んでいたのが、今回は年内に合計7回分ないし8回分となっており、Fedは前回から急激にタカ派になっている。8回分の利上げが行われると政策金利は2%になる

だがそれも驚きではないだろう。Fedが急にタカ派になった理由は、金融市場でFedがそうすると予め織り込まれていたからである。今後の利上げ見通しを織り込んで推移する2年物国債の金利は次のようになっている。



まさに2%になっている。つまり、Fedは今後の利上げをどうするかを自分で考えているのではなく、2年物国債の金利が2%になっているからそれに従ってこれから金利を2%にすると言っているのである。

これまで何度もパウエル議長の「インフレは一時的」を批判してきた債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏が次のように言っていたのを思い出したい。

• ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18701

はっきり言ってFedが存在する意味が分からない。Fedは2年物国債の金利で代替可能なのではないか?

700人以上の博士号を持ったエコノミスト? 何というお金の無駄遣いだろう。ブルームバーグ端末で2年物国債を眺めていれば十分じゃないか。

しかしこうも2年物国債をなぞった結論しか出さないのでは、内部のエコノミストたちは普段そもそもどういう仕事をしているのかという話にはなる。それでも税金で高い給与は支払われる。有権者が文句を言わないからである。

パウエル議長は今回の会合でいつも通り利上げペースに決まった道筋がないと表明した。利上げペースは当然会合の日になってみなければ分からないだろう。その時の2年物国債の金利水準を見なければならないからである。しかし金利を眺めるだけのその仕事は12才児でも出来るのではなかろうか?

結論
ということで、一応フォローアップしてみたがFOMC会合に注目することにほとんど意味はないのである。今後の利上げ方針は市場の意向によって決まる。中央銀行は既に金利のコントロールを失っている。

あえて言えば、1月に発表された量的引き締めへの道筋について具体的なものが何も出なかったことは株式市場にはプラス材料だろうか。

• アメリカ、2018年の株価暴落を引き起こした量的引き締めを発表
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19181

上記記事からの引用
「当時の株式市場は量的引き締めが開始されてから4ヶ月後の2018年1月末に一度下落し、そこから再上昇してから2018年終盤に大きく下落した。

だがこれから起こる今回2022年の暴落に比べれば当時の20%の下落などほとんど下落していないに等しいだろう。当時は結局Fedのパウエル議長が金融引き締めを撤回したから株価は戻ったのだが、今回は金融引き締めを撤回できない理由がある。インフレである。」


中央銀行が金利のコントロールを失っているのは、恐らくウクライナ危機の影響であり、ウクライナがなければブラード氏やメスター氏などタカ派のメンバーがもっと強く量的引き締め開始を主張しただろう。

だがどちらにしても金利は2%まで上がる。あるいはこれまで上がり続けている2年物国債の金利が今後も上がればFedもそれに従うだろうから、今年の利上げ幅は2%では済まない可能性はかなり高いのである。

筆者を含め多くの著名投資家は政策金利が1%前後に上がるところが株式市場の臨界点だろうと推測していた。だが今や2%利上げが既定路線となり、それが更に上がろうとしている。

• 1969年の米国で6%のインフレを抑えるためにどれだけの利上げが必要だったか
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19818

株式市場の命運は既に尽きている。短期的にはジム・ロジャーズ氏の言うように動いているが、どうなるだろうか?
• ジム・ロジャーズ氏: ウクライナ後に株価が上昇すれば最後の売り時に
WWW.GLOBALMACRORESEARCH.ORG/JP/ARCHIVES/21416


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 宮脇淳子さん動画【皇帝たち... | トップ | 及川幸久動画:【いま国際金... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事