マキペディア(発行人・牧野紀之)

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浜松の一条堤の行方

2013年02月26日 | ハ行
 2月21日、下記のメールを静岡県庁の担当課長に送りました。返事はまだ来ていません。

    記(私のメール)

森林保全課、青島課長殿

 NHKテレビの夕方のニュースで、「例の一条堤は盛り土の前後の法面にクロマツを植えて防潮堤とする案が決定され、準備が進んでいる」と報道されました。本当ですか。

 なぜクロマツなのですか。

 世界的植物生態学者の宮脇昭さんはこう言っています。

──このように、マツはどんな場所でも育つが、長持ちするためにはそれを支える構造が必要で、広葉樹に支えられていない場所でほ決して長持ちはしない。植物社会学的に見ると、マツが自生している海岸沿いの多層群落の森には、必ず塩水を止めてマツを支えるトベラ、シャリンバイ、ウバメガシ、ハマヒサカキなど中、低木の常緑広葉樹が生えている。

 したがって、新たに海岸沿いに植物社会学的なシステムをつくる場合には、クロマツだけの単植林は適切ではない。マサキやトベラ群集などの常緑広葉樹の中に、その下位単位として、量的には多くても質的には小さいマツを植える必要がある。

 針葉樹の根は浅く、防災に適していない

 さらに、マツの単植林が防潮、防災に適さない理由として、一般的に広葉樹に比べて根が浅いという点があげられる。

 マツなどの針葉樹は、根が横に伸びる傾向があるため、地震や津波などには弱い。しかも、土壌が悪化して根がダメになると、身を守るために蒸散作用で上部の枝から水分を蒸発させて枯らしていく。

一方広葉樹は、主根が縦に長く伸びる特徴がある。長くしっかりと根を張ることで水脈をつかむと共に、枯葉が年々蓄積され、それが豊かな表土を形成して降水を浄化・保水する緑のダムの役目を果たし、土壌環境がより豊かになる。豊かな土壌環境は地力を高め、他の植物の生育を促すという好循環を生む。

 このように、樹木にとっての土台である根群の特性や土壌環境は、その樹木や森全体が長持ちするかどうかの決め手になる。

 実際に、比較的根が浅いマツだけの林は自然災害などには脆く、防潮、防災には適さない。特に、海岸の砂浜の見通しをよくするために、下草刈りをくり返し、低木層、亜高木層を排除してマツと外来の雑草だけにしてある状態では、見かけ上は風情のあるりっぱなマツ林と思われるかもしれないが、いったん津波などが押し寄せた場合はあっという間になぎ倒されてしまう。(宮脇昭著『瓦礫を活かす「森の防潮堤」が命を守る』、学研新書、167-9頁)

 あなた方は、これまでのクロマツは植え方が悪かったから根が下に伸びなかったなどとシロウト談義をしていますが、なぜ実証されている理論を採用しないのですか。これが川勝知事の歴史学ですか。

 誠意ある回答を1週間以内にお願いします。

2013年2月21日、牧野 紀之


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