植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

木っ端拾いの材木流し

2020年03月29日 | 時事
 「明日ありと思う心の仇桜」 このタイトルで昨年の3月28日にブログを書いていました。このフレーズをよく口にしていたのは、以前勤めていた金融機関でお仕えした役員支店長であります。頭脳明晰・博学でエネルギッシュな方でした。「夜半に嵐の吹かぬものかわ」と続いて、花は散りやすく、桜の季節には、明日があるなどと、迷わず花を見に出かけるものだという意味ですが、この支店長は、先延ばしにしないで出来る仕事は残業してでも終わらせる、というのが口癖でした。

 その支店長のもらした言葉がいまだに忘れられません。
「木っ端拾いの材木流し」というフレーズでした。何の件で言われたのかはとおうの昔に忘れましたが、目先の利益を逃さぬように追っかけているそばで、本来大事にすべき価値のある材木がドンブラコと流されていく、という話ですね。ウチの家内は「爪で拾って、箕(み)で零す」と口にします。「箕」というのは手箕とも言って、昔は竹で編んでいました。穀物から土・肥料に至るまで両手で持ち運べる便利なざるですね。こぼれたお米や小豆などの小さな作物を勿体ないから指先で拾っているうちに誤って箕ごとひっくり返すという徒労・無駄な作業のことを呼びます。

 ちゃんとした言葉では、「小利を得んとして、大利(たいり)を失う。」と中国の「貞観政要」にあります。我が国で昔から、一文惜しみの百知らずとして目先の利益に拘ることの愚かしさを戒める言葉があり、古今東西、あるあるなのでしょう。

 今回の武漢熱は、底知れぬ脅威を世界に与え、リーマンショックどころか「世界恐慌」の再来と恐れる人も出てきています。その起源から経過を思い起こすと、当事者や責任者そして為政者の「小利」が、現在の事態を引き起こしたものだと誰でもわかりますな。武漢での未知のウィルスの出現を隠し、病気をデマ扱いし、当事者たちが自分の責任逃れをしたその時点で、もし世界的な影響や損害を判断して、情報開示と初期の拡散防止を徹底していたらこんなことにはなりませんでした。

 国賓を招くために、あるいは国内の観光業者・旅行関連業界の利益を優先して、中国からの旅行者の大量流入をゆるしたのもそう。オリンピック開催に拘り、感染者の見た目の数を抑え込むために検査の実施、件数増加を渋ったのも、報道で「大した病気ではない」と楽観論を流したのもそう。一時的に経済を止めることなどできないと、頭から抜本的な対策をとることを放棄しました。

 結果として、どんどん事態は悪化しています。もう、見えざる敵、そこにある脅威が日本人の心と生活を脅かし始めました。もはや、早期に終息する、とか重篤化・死亡率が低いとかののんきな論調は見られなくなりました。遅いんですよ、もう。目腐金をばら撒いても、死んだ人は生き返りません。潰れた零細企業が元に戻ることもありません。
 
 これから、緊急にやるべきことは、生命維持・心肺装置の大量生産、抗体・治療薬開発製造、大規模な患者収容・隔離施設の確保です。全国の公的施設を一斉に改装・改築して、病床や治療設備を突貫工事で作るべきなのです。勿論、濃厚接触者用の待機施設も必要です。箱モノ好きのお役人さんが、津津浦浦に建てた保養施設やらナントカ館などを今から、医療・隔離施設化して、来るべき爆発的感染と医療破綻に備えるのですよ。自衛隊だって、実際何もやっていないに等しいですね。昨日あの横浜港のクルーズ船以来2回目の出動だそうですよ。

 医療関係者不足は仕方がありません。でも、少なくとも消毒・清掃・保安・雑用の助けとなる人手はいくらでもいますな。専門知識が無くても、医大生・看護学校生を動員している国もあります。元、看護師経験者を募ることもあるのでは。
 
 弱者対策、これはもう市役所が窓口で、食料配布しかありません。配給でも炊き出しでもいいのです。閑古鳥の飲食店の従業員や大将を動員すれば、飢え死には避けられるし、零細飲食店の救済にもなります。年金生活者でも、きちんとした正規雇用者なら、わずかな一時金など当てにしてませんよ。真に必要とする人だけに手厚く金を回すことで足ります。そうした、考え得るすべての策を尽くして目の前の脅威に備える、それしかありません。

 中小企業対策無利子融資だとか、終わったらV字回復だとか、根拠もない口先だけのあの方の言葉が空しいなぁ。
 目先の目くらましみたいな政策を並べて木っ端を拾う暇が有ったら、先を見据えて、最も大事な感染拡大を止める、病人を救うため医療崩壊を避け医療体制の拡充バックアップを優先し、人の命という材木が流れないよう手立てを講じる、それが一番だと思うのです。

 

 
コメント
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