すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【国際親善試合】日本がドイツの息の根を止めた 〜日本 4-1 ドイツ

2023-09-11 04:56:56 | サッカー日本代表
前半の2ゴールでドイツ人の心は我が家に帰った

 日本はドイツに招待され、9月9日にドイツ・ヴォルフスブルクのフォルクスワーゲン・アレナでドイツ代表と対戦した。MF伊東純也のゴールなどで日本が4-1と圧勝した。カタールW杯で日本に負けた仇を打とうと自らセットした親善試合で、ドイツは見事に返り討ちにあった。

 選手別では、伊東純也とSB菅原由勢が織りなす右サイドの鋭さがひときわ目を引いた。特に何度も決定的な縦へのスプリントを繰り返した菅原は、完全にこれでレギュラーをつかんだだろう。彼は速いし、まるで忍者のように機敏だ。インテンシティも高い。

 日本が瀕死のドイツの息の根を止めた。ホストのホームで日本人による圧巻のゴールショーと、戦術的駆け引きが刻々と演じられた。カタールW杯後のテストマッチで負けが込み、国内でハンジ・フリック監督の解任論が吹き荒れるドイツ人たちには酷だっただろう。

 日本は4-2-3-1で試合に入った。そして前半11分に伊東が角度のないところから先制ゴールを上げる。同22分にもFW上田綺世がゴール。2-1でリードして後半に入り、日本は守備時5-4-1にフォーメーションを変えた。守備ブロックを厚くしドイツをシャットダウンしに行ったのだ。5枚で守る形に変えてからも2ゴールを加点し突き放した。非の打ち所がない日本の完勝だった。

対角のロングフィードが敵をえぐった

 テストマッチでずっと連敗が続くドイツは、これまで3バックを試すなどフォーメーションを二転三転させていたようだ。この日の彼らは4-1-2-3で来た。MFもできるキミッヒが右SBに入り、一列上がって中に絞り偽SB化するのが彼らのミソだ。だがそんな小細工は、日本の勢いの前に木っ端微塵に打ち砕かれた。

 日本は最終ラインを高く設定して試合に臨んだが、すぐ自陣に押し込まれた。だがその後、押し返す。そしてフィールドを大きく斜めに横切る対角のロングフィードを2度うまく駆使してドイツを揺さぶる。ピッチを広く使って相手を横に広げた。

 縦に疾走する右SBの菅原が非常によく機能し、右サイドを使って前半の早い時間に2点を奪い優位を築いた。これでドイツの焦りを誘い、スコア上もメンタル的にも相手を見下ろす立場に立った。おそらくこのときドイツ人たちの脳裏には、カタールW杯後の直近のテストマッチで1分3敗と散々なデキで国民から総スカンを食っている自分たちの境遇がよぎったことだろう。

 とすれば前半に奪った日本の2点で、実質この日はゲームが終わっていたのかもしれない。

 日本のフォーメーションは4-2-3-1だ。GKは大迫敬介。最終ラインには右から菅原由勢、板倉滉、冨安健洋、伊藤洋輝が構える。2CMFは遠藤航と守田英正。2列目は右から伊東純也、鎌田大地、三笘薫が並ぶ。ワントップは上田綺世である。

伊東が瞬殺の1ゴール目を上げる

 4バックのドイツは2CBがかなり開き、両SBを前に押し出してビルドアップする。試合の立ち上がり、日本は自陣に押し込まれ、前半2分には彼らのセットプレーを食ったが不発に終わる。だがその1分後にはすぐドイツのCKと畳みかけてくる。そんな彼らの第一弾の攻撃が終わり、日本は敵を押し戻した。

 さあ、ここからは日本の時間だ。

 右の低い位置に下がった遠藤航が右SB菅原に寄ってやってボールを受け、対角のすばらしいロングフィードを逆サイドの三笘に入れる。2人のマーカーに縦をふさがれた三笘は右へと切り込み、ボールを失う。

 だがそれが幸いする。前半11分の先制点につながるのだ。このときの三笘のボールロストから、ドイツは縦にボールをクリアした。これを左でひろった冨安が、ワンタッチで美しい対角の長い浮き球のパスを右サイドにいた鎌田に渡す。

 鎌田は右サイドに開いた菅原にパス。菅原はサイドを短く駆け上がり左SBシュロッターベックをかわした。そしてゴールライン際から右足で目にも止まらぬ強くて速いクロスを低く入れた。

 するとCBリュディガーの前に入りこんだニアの伊東が、足を伸ばしてワンタッチでコースを変えて瞬時にゴールへ流し込んだ。動きが速すぎて一瞬、何が起ったのかわからなかった。だが1-0。先制なのだ。

日本のコレクティブ・カウンターが炸裂する

 このあと双方とも最終ラインを上げ、非常にコンパクトなゾーンの中に両軍がすっぽりとおさまっている。その均衡を破ったのは伊東だった。縦パスに裏抜けし、右サイドを駆け上がって右足を強振した。だがこれはGKテア・シュテーゲンが正面で弾いた。

 ドイツもまだ元気だ。ラインを押し上げハーフコートマッチ化させた前半19分。左IHのギュンドアンが右IHヴィルツへ斜めのパスを繋ぎ、ヴィルツはペナルティアーク内から右斜め前へパスを出す。最後は右のゴールエリア角から右WGサネが左足でゴール左に押し込んだ。同点弾だ。

 だが日本はすぐ22分に突き放す。右サイドで伊東がためて時間を使ってから鎌田に預けた。次にボールはサイドを駆け上がる菅原に渡る。菅原は右サイドの敵陣深くから鋭いクロスを入れた。ニアの伊東がインサイドで合わせて流し、これに上田が反応し左足でゴール右下へ押し込んだ。2-1。勝ち越し弾だ。

 その後ドイツがラインを押し上げ、またもハーフコートマッチ化を企む。彼らはハーフウェイライン上に最終ラインを設定し、ポゼッションして押し込んでくる。日本はその攻撃を平然と受けながら、反撃の機会をうかがい幾度となく敵陣にカウンターを繰り出す。そんな虚々実々の駆け引きが前半いっぱい続いた。

 ドイツが攻めるときはハーフコートマッチの押し込み。日本が反発するときは、そこから組織的に何人もが縦パスを繋ぎ倒す速いコレクティブ・カウンターだ。両者とも、そんな「自分たちのサッカー」を繰り返した。

金持ちケンカせず、後半の日本は5-4-1で守った

 後半の頭から日本は5-4-1でコンパクトに守った。これでしばらく守備をする時間が続く。そして後半14分。上田に代えて浅野拓磨、鎌田に代えて谷口彰悟を投入した。冨安の守備は非常に利いている。

 このあとドイツが気のないパスをダラダラ繋ぎ、日本がひたすらミドル・サード〜ディフェンディング・サードでブロック守備する展開が続く。金持ち喧嘩せず、か? ドイツはミスが多い上に、爆発的なスプリントがない。ボールスピードも遅い。絶不調のチーム状況がうかがえる。彼らはなかなか日本の守備ブロックを崩せない。

 そんなか伊東が二度追いし、ものすごい距離を走ってカバーリングしている。久保建英は同じ右サイドの伊東の牙城は崩せないだろう。久保にはあんな執念の二度追い、三度追いはできない。そもそもインテンシティの高さが段違いだ。30分、守田と伊東純也に代え、久保と田中碧を投入した。続いて39分、三苫に代えて堂安律、菅原に代えて橋岡大樹を投入する。

 かくて45分。日本がブロックを作って自陣にいるなか、途中出場のゴセンスからボールを奪った久保が広大なスペースを1人でボールを持って飛び出した。久保はドリブルでGKをギリギリ引き付けてから、からかうように横についたどフリーの浅野にパス。浅野が無人のゴールに簡単に決めた。3-1だ。カタールW杯を思い出すハメになったドイツ人にとっては「恐怖のアサノ」がまたゴールした。彼らのトラウマは深い。

 続く47分。またも久保がドリブルでボールを持ち上がり、右サイドの敵陣深くからクロスを入れた。DF2枚の間で完全にフリーになっていた田中碧が、ヘッドでゴール左スミに叩き込んだ。4-1である。あんなゴール前で田中がどフリー。ドイツのDF陣は完全にボールウォッチャーになっていた。久保はたった15分の間に2アシストして見せた。そしてゲームセットだ。

「押し込む」=「優勢だ」はもう古い

 日本は古来からある「押し込む」という勝ち方ではなく、ふところにナイフを隠し持ち相手の攻めを柳のようにしなって受けては機を見て縦に速いカウンターを見舞った。このとき敵の背後にはたっぷりスペースがある。力をためた日本の狙いはそこだ。これが日本のスタイルであり、勝ち方なのだ。

 日本のポゼッション率は37%だった。これに対し負けたドイツは63%だ。いったい「日本はボール保持率をもっと上げた方がいい」などという必要が、どこにあるのだろうか? これが彼らの流儀なのだ。このやり方で現にドイツに圧勝している。

 そろそろメディアは「押し込む」=「優勢だ」のようなカビの生えた古い概念を変えた方がいい。まあ後半の5-4-1時には下がりすぎてちょっと間延びしたが、そこは今後の課題だろう。

 さて日本を本国へ招待してまで、カタールW杯敗北の借りを返そうとしたドイツの野望は打ち砕かれた。試合後、おそらくハンジ・フリック監督は、ひとり静かにトイレで首を洗っていたに違いない。

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