すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【J1リーグ】鳥栖が豪快な2ゴールで2連勝する ~第11節 FC東京 1-2 鳥栖

2021-04-25 19:22:04 | Jリーグ
FC東京、懸命な猛追も及ばず

 J1第11節。アウェイの鳥栖は爆発的な2ゴールで先制し、前半は彼らの独壇場で終わった。

 鳥栖の攻撃的MFの仙頭啓矢が要所で一列下り、アンカーの松岡大起と2CMFのような形を組む変則システムは守備力が高い。FC東京にまったく付け入るスキを与えない。

 だがハーフタイムをはさみ、後半からシステムを4-1-2-3から4-4-2に変えたFC東京が1点を返して激しく反撃する。一進一退の展開になった。

 しかし猛追は及ばず。交代出場したレアンドロの惜しいシュートを最後に、FC東京の逆襲は潰えてタイムアップだ。かくて鳥栖の2連勝で激闘に幕が下りた。

 鳥栖の攻撃的MF、樋口雄太は1ゴール1アシストの大活躍だ。FWの酒井宣福も2試合連続となる完璧なゴールを叩き込んだ。

 終盤、選手交代でDFを増やし、守備を固めた鳥栖・金明輝監督のうまい試合運びが光った。

鳥栖は3-1-4-2と4-4-2システムを使い分ける

 鳥栖のフォーメーションは攻撃時3-1-4-2、守備時4-4-2だ。スタメンはGKが朴一圭(パク イルギュ)。最終ラインは右からファン・ソッコ、エドゥアルド、中野伸哉。

 アンカーは松岡大起、2列目は右から飯野七聖、樋口雄太、仙頭啓矢、小屋松知哉。2トップは林大地と酒井宣福だ。

 攻撃時は両サイドがウイングハーフ的に振る舞い、2トップの背後の中央のMFは樋口が攻撃的に、かたや仙頭は後ろの面倒も見てやや守備的にプレイする。

 一方、FC東京のフォーメーションは4-1-2-3である。GKは波多野豪。最終ラインは右から岡崎慎、渡辺剛、ジョアン・オマリ、小川諒也。

 アンカーは森重真人。右インサイドMFは安部柊斗、左インサイドMFは東慶悟。3トップは右から永井謙佑、ディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトンだ。

鳥栖のFW酒井が完璧な先制弾

 立ち上がりはFC東京が支配したが、前半18分に鳥栖が反転攻勢する。

 樋口が右サイドから、左足でドンピシャのダイアゴナルな強いクロスを入れる。これに敵DFと競り合いながらFWの酒井が頭で合わせ、完璧なヘディングシュートを見舞う。

 鳥栖の先制弾だ。

 酒井がうまくカラダを入れた。彼はフィジカルに優れ競り合いに強い。頼もしいアタッカーである。

 鳥栖のビルドアップは攻撃的な左CBの中野伸哉が、幅を取り高く前へ張り出す。これでオフェンシブなMFが4人から5人へと変化し、2バックの状態で組み上げる変則的なスタイルだ。

 チームにはカラダをぶつけてハードワークできる選手がそろっており、球際のデュエルが激しく競り合いに強い。

鳥栖のMF樋口がファインゴールを決め2点目

 前半33分。一列下りた鳥栖の仙頭が、フィールド中央のライン間にいる樋口にグラウンダーのパスを出す。

 これをゾーンのギャップで受けた樋口は、ダイアゴナルな強くて速いグラウンダーのスルーパスをペナルティエリアに侵入した酒井に送る。だが酒井はマーカーともつれて倒れた。

 このときマークについたFC東京のCB渡辺が、右足で酒井の左足を小突いて倒したように見えた。だが笛は鳴らない。

 そして34分、鳥栖の2点目が入った。

 まず鳥栖の酒井および林と、FC東京のアンカー森重が競り合う。で、鳥栖がボールを奪取した。このとき仙頭がボールを松岡に預け、松岡はダイレクトで前縦にいた樋口にパスする。

 樋口はそのままひらりとターンしてドリブルし、ペナルティエリア手前右からゴール左スミへと豪快に突き刺す。ファインゴールだ。

 このときFC東京は、左インサイドハーフの東が樋口を追走しただけ。だれも強く競りに行かなかった。左SBの小川も絞りが遅れた。またCBのジョアン・オマリは、ゴール前の敵選手につられて下がり寄せに行けなかった。

FC東京はプレスが弱く競り合わない

 FC東京はマークが甘く、競り合わない。そのため鳥栖の選手はボールを持つと、ほとんどノープレッシャーで自由自在にパスをつないだ。

 また2点先行している彼らは、FC東京ボールになれば念には念をとディフェンディングサードまでリトリートして4-4-2の強固なブロックを敷く。

 一方のFC東京は、ビルドアップ時に右SBの岡崎が高い位置取りをする。で、2CBと左SBが右にスライドして3バックを形成する。だがビルドアップ後にうまく前でボールをつなげずフン詰まってしまう。

後半、FC東京が激変した

 そんなFC東京は後半の頭から、右SBの岡崎に代えMFの内田宅哉を入れた。同時にCBの渡辺をひっこめ、MFの青木拓矢を投入する。

 FC東京はこの交代で内田を右SBに、またアンカーの森重をCBにして4-4-2に変えた。そしてアダイウトンを左SHにし、ディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑の2トップにした。

 ハーフタイムにFC東京の選手たちは、長谷川健太監督からネジを巻かれたのだろう。彼らは前半の動きとはぜんぜんちがい活発だ。

 そして後半8分。FC東京は小川がキッカーを務めた左CKから、森重が競りながらヘディングシュート。ボールはゴールの左ポストを直撃して入った。

 これで1-2だ。追撃である。

FW林大地が猛然とプレスバック!

 続く後半9分。FC東京は森重が鳥栖ボールを奪い、カウンター攻撃を見舞う。森重は前縦にいた永井へ浮き球のパス。永井はこれをヘディングで右サイドのディエゴ・オリヴェイラへ。

 オリヴェイラは鳥栖陣内をドリブルで駆けるが、なんとこれに鳥栖のFW林大地が激しく並走する。FWの位置から自陣ゴール前まで戻り切った林は、最後に一発、強烈なタックルをかます。

 そのためたまらずオリヴェイラはシュートをバーの上へはずした。

 自ゴール前まで全力疾走する林の熱いプレスバックだ。こんな壮絶な守備をするフォワードは見たことがない。

FC東京が激しくハイプレスをかけ始める

 だがFC東京はディエゴ・オリヴェイラのシュートで勢いづき、ボールを保持してポゼッションする時間が長くなった。左SB小川諒也がオーバーラップして積極的にシュートを放つ。いい選手だ。

 これに対し鳥栖はピッチを斜めに横切る放射状の長いサイドチェンジを入れるなど、大きい展開をしている。

 FC東京も負けじと、前半とは打って変わって激しく競るようになる。彼らは永井を中心に強くハイプレスをかけるようになった。FC東京のほうが「個の強さ」があり、それに対し鳥栖が組織力で対抗する構図だ。

 いまや双方たがいにポゼッションし合い、どちらが勝つのかまったくわからない展開になった。劇的な死闘である。

鳥栖が名古屋に勝ったのはフロックじゃない

 後半38分、鳥栖はFWの林に代えてDFの田代を入れ、3バックから4バックに変える。守備を固めて試合を終わらせる作戦だ。

 後半46分、途中出場したFC東京のレアンドロが、鳥栖DFの前で左に切り返して強烈なシュートを見舞う。だがこれを鳥栖のGK朴一圭は、ジャンプして左手1本で弾いた。ファインセーブである。

 このシーンがついに幕切れとなり、終わりを告げるレフェリーの笛が静かに鳴った。

 これで鳥栖は2連勝。7勝2分3敗で堂々の3位である。前節、鉄壁の守備を誇る名古屋グランパスにリーグで唯一、土をつけたのはフロックじゃない。

 自ゴール前まで自陣を縦に走り切り、壮絶なプレスバックを見せたFW林大地の熱い姿が今も頭から離れない。

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【J1リーグ】柏のハイプレスが冴え渡る ~第11節 柏 5-1 徳島

2021-04-25 07:00:00 | Jリーグ
徳島はビルドアップを壊された

 ビルドアップに迷いがある徳島ヴォルティスの最終ラインに対し、柏レイソルが容赦なくハイプレスをかけてボールを刈り取った。

 徳島はダニエル・ポヤトス監督が就任する3節前までは、ハイライン・ハイプレスでいいサッカーをしていたが……。新監督はどんなサッカーを志向しているのか、よく見えない。

 試合の途中で徳島の左SBジエゴがベンチの監督に何か言っていた。もしかしたら監督とのコミュニケーションがうまく行ってないのだろうか? 徳島が心配だ。

柏は日本代表の江坂任に注目だ

 徳島のフォーメーションは4-2-3-1である。スタメンはGKが上福元。最終ラインは右から岸本、鈴木大誠、福岡、ジエゴ。

 セントラルMFは岩尾と藤田譲瑠チマ。2列目は右から杉森、宮代、藤原。ワントップは垣田だ。

 一方、柏のフォーメーションは3-4-2-1。この日も1ゴールを上げた、日本代表に選ばれている江坂任が注目の選手だ。関係ないが柏の選手はイケメンが多い。

徳島のバックパスをプレスが襲う

 ボールを保持した徳島の中盤はプレスを受けると、こわがってすぐバックパスしてしまう。ボールを下げて最終ラインで回そうとする。これに柏が、待ってましたとばかりに狙いのハイプレスをかける。飛んで火にいる夏の虫だ。

 この展開がえんえんと90分間続いた。

 その徳島のポゼッション率はなんと66%だ。ポゼッション率がそれだけあれば、ふつう勝っていそうなものだが。要はいかに徳島は最終ラインで意味もなくムダにボールを持たされていたか? という結果である。

 一方、柏は中を締めた守備が非常にタイトですばらしく、万一、徳島にボールを渡してもまったく危なげない。特にセントラルMFの仲間が守備に非常に効いている。いい選手だ。

 チーム全体のゲームモデルといい、選手個々の質といい、さすが名将ネルシーニョが丹精込めて作り上げたチームだけのことはある。そんな彼らが12位にいるというのは不思議だ。開幕ダッシュに失敗したからだが、彼らならいまからでも遅くない。勝負はこれからだ。

徳島はロングボールで敵を下げさせるべき

 ではそんな柏に対し、徳島はどうプレイすべきだったのか? 徳島は最終ラインでプレスを受けたら、例えばいったんロングボールを入れて相手のゾーンを下げさせるなどの対策を取るべきだった。

 にもかかわらず真っ正直にバックパスしてはプレスを受けるのでは、敵が刀を構えるところに首を差し出すようなものである。これではどんなチームでも勝てないだろう。

 あるいは背後にマークがついていても、例えばその選手の足元にボールを当ててそれをダイレクトで落とす、そしてボールをサイドに開く、などのトライもすべきだった。とにかくボールを動かすことだ。

 にもかかわらず、この日のように後ろ向きのパスばかりではどうしようもない。

 一時期、Jリーグではバックパスが疫病のように流行ったが、いまではすっかり収まっている。つまりJ2から昇格したばかりの徳島は、いわば時代に遅れているのだ。このやっかいなバックパス癖から脱出する必要がある。

 万一、このバックパスが新監督の指示なのだとしたら……問題を早期に除去すべきだろう。

江坂と呉屋が光った柏の1点目

 そんなこの日の展開が象徴的だったのは、柏の1点目のゴールだった。あの得点劇にこの試合のエッセンスがすべて凝縮されている。

 まず徳島のビルドアップに対し、柏が激しくプレスをかけて押し上げてきた。

 そして江坂がペナルティエリア付近で徳島のパスを巧妙にカットし、左へパス。それに呼応した呉屋がエネルギッシュに左足を振り抜き見事にシュートを決めた。

 こんなふうに徳島は柏のプレッシングを受けながら、よりによって最大の危険地帯である最終ラインでボールを無理やり回そうとした。

 5-1の敗戦はその結果だ。

 なにごとも経験である。徳島はこの試合をよく分析し、ぜひ今後に生かしてほしい。

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