すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【J1リーグ】名古屋のいいところしかないゲームだった ~第11節 名古屋 2-0 G大阪

2021-04-23 22:04:03 | Jリーグ
ついに首位と勝ち点3差に

 完勝だった。

 ガンバ大阪は「枠内シュート」すら1本も打たせてもらえなかった。

 一方、名古屋グランパスのMF相馬勇紀は、1ゴール1アシストと大爆発。先制点を取ったFWの山崎凌吾は今季3点目のゴールである。

 この日、名古屋のポゼッション率はなんと39%。敵を引きつけて敵陣にスペースを作り、相手の態勢を崩させてからカウンターを見舞うゲームモデルが光っている。

 これでリーグ2位の名古屋は9勝2分1敗で勝ち点29とし、首位・川崎フロンターレに勝ち点3差と迫った。次は4月29日と5月4日にその川崎Fとの2連戦を迎える。天王山だ。ついにトップを射程に捉えた。

 名古屋のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から成瀬、木本、丸山、吉田。セントラルMFは米本と稲垣。2列目は右からマテウス、柿谷、相馬。ワントップは山崎だ。

またマテウスがトランジションの悪さを露呈するが……

 序盤は両チーム、ロングボールの蹴り合いになった。そんな落ち着かない展開のなか、前半10分。名古屋は左SHの相馬が、ドリブルから枠内シュートを放つがGK東口がセーブ。

 16分にもマテウスが右からシュートを撃ち、これはガンバDFに当たりあわやオウンゴールだったがGK東口が収めた。

 そんななか、マテウスがまた悪いクセを出す。

 20分、ガンバのパスミスから名古屋ボールになる。絶好の速いショートカウンターのチャンスだった。だが肝心のマテウスがのんびり歩いて攻撃をスローダウンさせてしまい、せっかくのチャンスがフイになる。トランジション(切り替え)の悪さを露呈した。

 マテウスは序盤に接触プレイを受け、イライラが続きメンタルが落ち着かない感じだった。彼はいつもこうしてメンタルがトランジションに影響する。非常に攻撃力のある選手だが、ブラジル仕込みのムラっ気なメンタルがネックだ。

山崎が氷のように冷静な先制ゴール

 だがそんなもやもやを吹き飛ばしたのが前半29分の先制点だった。

 左サイドを相馬がドリブルし、最後のひと突きでマーカーをかわしクロスを入れた。これをファーにふくらんだFWの山崎凌吾が胸トラップし、落ち着いてきっちり左足で決めた。完璧なゴールだった。

 相馬のドリブルは川崎フロンターレ・三笘薫の「日本人が大好きな」チマチマこねるドリブルとは違い、爆発的な推進力がある。

 三笘のドリブルはとりあえず目の前の敵を抜くためのものだが、相馬のドリブルはクロスを入れるため、シュートをするため、という「次のプレイ」がハッキリしている。そんな特徴がよく出た好アシストだった。

相馬のよさが炸裂した2点目

 そんな相馬がこの日のハイライトを演出した。

 後半10分。敵のライン裏にたっぷりできたスペースに、左SBの吉田が強いグラウンダーのパスを入れ、相馬を走り込ませる。

 受けた相馬はドリブルでペナルティーエリアまでボールを持ち込んだ。そして左足で切り返しマーカーをかわすと、右足でシュート一閃。きれいにゴール右スミへ突き刺した。

 オープンスペースに爆発的な勢いで走り込んだ相馬のすばらしいオフ・ザ・ボールの動きが光った。彼は東京五輪スタメン奪取に向け、猛烈なアピールになっただろう。

カウンター攻撃を見据えた鉄壁のブロック

 一方、チーム全体の動きに目をやると、名古屋はボールを失えば例によってスルスルとミドルサードまでリトリートし、4-4-2の鉄壁のブロックを敷く。

 この状態で、例えばこの日は前半44分から47分までガンバがたっぷりボールをキープし続けた。だがまったくのノーチャンス。最後は名古屋が右サイドでボールを奪うと、マテウスがワンツーで抜け出したちまちチャンスを作った。

 堅い守備を生かし引き気味でブロックを作る。これにより敵をわざと前がかりにさせてバランスを崩させ、カウンター攻撃のチャンスを狙う。そんな名古屋のゲームモデルが光った。

 その直後にはガンバのCK崩れからのこぼれ球に反応した名古屋のCMF稲垣祥が、ペナルティエリアの外から低く抑えられた速い弾道のミドルシュートを見舞う。

 わずかにそれたが、稲垣のミドルは本当に得点確率が高い。

 かたや稲垣と2CMFを組む相棒の米本は、中央でのボール奪取から左サイドの相馬に向けダイアゴナルな長い放射状のパスを繰り出す。名古屋名物の「大きいサッカー」だ。

「リトリート劇場」発動

 笑ったのは2点目を奪い2—0にした後半10分以降である。これ以後、名古屋はガンバのボールになるとご丁寧にディフェンディングサードまで引いてブロックを作る余裕の「リトリート劇場」を展開した。

 まるでイタリアにいるみたいだ。

 ボールを失うたび名古屋が完全に自陣に引くので、ガンバ陣内には無人のスペースがたっぷりある。

 そのためガンバGKの東口はなんと1人でハーフウェイライン付近まで上がってきて、DF2人とともに「3バック」を作りビルドアップしている。GKのあんなシーンは初めて見た。

最後は5-3-2に変え守り切る

 そして試合終盤になると、今度は名古屋の指揮官の出番だ。「マッシモ・フィッカデンティ劇場」である。

 まずは後半32分に攻撃の要である柿谷に代え、守備的なCMFの長澤和輝を投入。米本をアンカーにした3センター含みの4-1-4-1にシステムを変えた。名古屋の勝ちパターンである。

 しかもそれだけじゃない。この日はさらに後半36分、攻撃の駒マテウスに代えてCBの中谷進之介を入れて3CBを形成し、システムをなんと5-3-2に変えたのだ。

 そのためガンバ陣内には無人のスペースがたっぷりできた。途中投入で2トップの一角に入った齋藤学がその前のスペースでガンガンプレスをかけ、ガンバのボールを1人で追いかけ回して猛ダッシュを繰り返す。

 まあ走るわ、走るわ。しかも彼はなんとボールを奪取し、後半51分にはドリブルからトウキックのおもしろいシュートまで放って見せた。

齋藤学のフォア・ザ・チーム

 チームはすでに守備的なモードチェンジをしている。ゆえに2トップがプレッシングし、少しでも敵の攻撃を緩和するのは当然だ。

 だがそれだけでなく攻撃の駒である齋藤学の頭には、おそらく首位・川崎Fに遠く離されて10点近くも差がある得失点差がよぎっていたのではないか?

「ここで俺が点を取れば、得失点差が少しでも縮まる」

 そんなフォア・ザ・チームな熱いメンタルがあの猛ダッシュを生んだのだ。この名古屋のチーム一丸となった一体感はすごい。

 さて終わってみれば、名古屋は10試合目のクリーンシートだ。

 相馬は29回もスプリントし、米本と稲垣の2セントラルMFは13キロ近く走っている。まったく名古屋のいいところしかないゲームだった。

 さあ、あとはゴールデンウイークに迎える首位・川崎Fとの黄金の2連戦だ。

 ぶちかまそう。

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