すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

映画『ダーウィンの悪夢』が描く勝ち組と負け組の末路

2007-07-31 13:22:05 | 映画
 週末にビデオレンタルで新作映画を借りて観た。『ダーウィンの悪夢』『イカとクジラ』『UNKNOWN』の3本だ。

『ダーウィンの悪夢』は、2004年ヴェネツィア国際映画祭でヨーロッパ・シネマ・レーベル賞を受賞したのを皮切りに、2006年セザール賞(フランスの権威ある賞)で最優秀初監督作品賞、また2006年アカデミー賞では長編ドキュメンタリー賞にノミネートされている。

 映画の舞台はアフリカのビクトリア湖だ。外来魚“ナイルパーチ”の増殖をきっかけに、さまざまな悪夢が連鎖反応的に引き起こされる現実を描く。南北問題(勝ち組と負け組)や貧困、現実逃避としてのドラッグ、搾取の構図などを、構造的な問題として射抜いている。

 生態系の頂点には人間がおり、なにより人間に対する影響がいちばん大きいんだってことを思い知らされる作品だ。超おすすめである。

 この映画のテーマを敷衍すれば、ネカフェで寝泊りして食いつなぐ「日本難民」や年金をもらえない「年金難民」、ワーキングプア、生活保護を門前払いされる人たちに行き当たる。日本にとってアフリカは、もうすぐそこである。

 一方、『イカとクジラ』は、インテリ夫婦の離婚をトリガーに息子たちが反乱を起こす家族問題を扱った映画だ。必要な時期に親に甘えられない子供たちはどうなってしまうのか? 今や日本でも家族の崩壊は深刻である。

 世の中じゃ、とかく憲法がどうとか大きな物語が語られがちだ。だけど実は日本人にとっていちばんシビアな問題は、我々を取り巻く外の世界じゃなく人間の内側にある。

 家族問題はもちろん、「自分は生きる目的を持ち、生きたいように生きなければならない」てな自己実現幻想に取り付かれた自分探しや、その果てに来るニートとかワーキングプア、ウツ病、自殺の問題などなど。大きな物語に気を取られて足元を見ない状態が続くと、5年~10年もすればホントにこの国は危なくなるだろう。

 最後に映画『UNKNOWN』は、ひとことで言えば映画『SAW』のプロットをパクって発展させ、犯罪ミステリーっぽい心理スリラーにした作品だ。パクりと言っても十分に楽しめるデキだった。ラストにもうひと工夫ほしいところだけど……ごにょごにょ。

 以上、3本とも観て損はない映画である。レンタルで3本借りて、3本とも一定水準をクリアしてるってのは珍しいなあ。いやラッキーでした。

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