軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

山野で見た蝶(4)北軽井沢探チョウ(1/4)

2019-08-23 00:00:00 | 
 8月に入ってからは軽井沢も30度を超える日が続き、夏本番になったが、少し前の、本格的な梅雨が長く続いた7月下旬、チョウの撮影がしたくなり、梅雨空の合間を縫いショップの定休日に、2週連続して北軽井沢に出かけてきた。うまくすれば前回6月には空振りに終わったアサマシジミも見られるのではという期待もあった。
 下草などがよく手入れされた高原に着くと、足元のヒメジョオンやナワシロイチゴと思われる花にたくさんのヒメシジミが群がっているのが見られ、交尾中の姿も見られた。吸蜜中のヒメシジミは夢中になっていて、簡単に手で捕らえることができる位である。前翅裏の黒い斑点を確認するためであるが、殆んどがヒメシジミ特有の丸い形状をしている。

 中には、黒斑の形状がミヤマシジミやアサマシジミの特徴とされている楕円~長楕円のものも含まれているが、♂の翅表の青色の広がり具合がミヤマシジミのものと違っていたり、色あいがアサマシジミの色とされる青灰色とは違っているようである。

 1回目の7月17日に出かけた時は、丘陵地の上の花々で多くのヒメシジミを見ることができた。また2頭だけであるが、カラスシジミも見られ、撮影することができた。翌週7月24日に2回目に出かけた時には、元の場所にあったヒメジョオンなどが刈りとられてられてしまっていて、ヒメシジミは、少し離れた場所にある林辺の花に集まっていた。

 背後の、高い樹の枝先にはウラゴマダラシジミがいた。長い間じっと止まっていたので、じっくり撮影ができた。このウラゴマダラシジミは、私には意外に思えるのであるが、日本に25種生息しているとされるゼフィルスの仲間である。尾状突起がなく、翅裏の紋様などゼフィルスらしさは全くない。カラスシジミのほうがよほどゼフィルスらしいのであるが、こちらはゼフィルスの仲間には入っていない。

 このほか、丘陵地の歩道脇に咲いているオカトラノオの花には、たくさんのヒョウモンチョウの仲間とスジボソヤマキチョウ、カラスシジミ、トラフシジミが集まっていた。

 今回は、これら北軽井沢で出会ったチョウを中心に、最近撮影した種を紹介させていただく。

 先ずヒメシジミから。前翅長11~17mmの小型のシジミチョウ。前翅裏の5番目の黒斑はヒメシジミではほぼ円形であるのに対して、ミヤマシジミとアサマシジミでは、これが大きく、楕円形をしているとされる。今回見た中には、このような楕円形の黒斑を持つ個体も多少混じっているのだが、これがヒメシジミの中の個体差の範囲内なのか、アサマシジミなのかの判定が私にはつかない。そのため、ここでは、ヒメシジミの中で紹介する。

 ヒメシジミ、ミヤマシジミ、アサマシジミの生態については、以前本ブログ(2019.6.28 公開)で紹介しているので、一般的なことは割愛するが、東信地方でのヒメシジミの分布と全般的なチョウ相については、「信州 浅間山麓と東信の蝶」(鳩山邦夫・小川原辰雄著 2014年 信州昆虫資料館発行 )に次の記述がある。今も逞しく生き続けているヒメシジミに比べると、アサマシジミは生息域が次第に限定されてきている。

 「ヒメシジミは、長野県では南部の大部分の地域を除き、低山地から亜高山帯にまで広く分布する。東信地方でも里山や渓谷、高原などの草地で広範囲に生息し、多産地も見られる。低山地では、里山の荒廃や開発などの影響を受ける場合もあるが、全般的に極端な減少は認められない。環境省版レッドリストで準絶滅危惧種、長野県版では留意種に区分されている。」

 「東信山麓は、なだらかな裾野が広がり、冷涼な気候を利用して古くから牧草地や高原野菜の好適な産地として利用されてきた。農村での生活は、燃料としての薪を取り、家畜の餌とするために採草を行った。牧場道は、藪にならないように定期的に潅木を刈り払った。こうして維持された草原や疎林には、秋の七草に代表されるような日本古来の植物が咲き乱れ、寒い大陸を起源とする草原性のチョウ達が乱舞した。現在でも、草原のアザミの花などには、ヒメシジミやキアゲハ、各種ヒョウモンチョウ、ヒメシロチョウ、ジャノメチョウ、アカセセリなどが訪れる姿を見かけるが、コヒョウモンモドキやヤマキチョウ、アサマシジミ、ヒメヒカゲ、ホシチャバネセセリをはじめとして多くの草原性のチョウたちは、最近ほとんど姿をみかけなくなった。」

 今回の短時間の撮影でも、まさにこのことが感じられる結果であった。

 では、今回撮影したヒメシジミを以下に見ていただく。先ず雌の方から。


ヒメジョオンで吸蜜するヒメシジミ♀1/9(2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸蜜するヒメシジミ♀2/9(2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸蜜するヒメシジミ♀3/9(2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸蜜するヒメシジミ♀4/9(2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸蜜するヒメシジミ♀5/9(2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸蜜するヒメシジミ♀6/9(2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸蜜するヒメシジミ♀7/9(2019.7.24 撮影)


葉上で休息中のヒメシジミ♀8/9(2019.7.24 撮影)


葉上で休息中のヒメシジミ♀9/9(2019.7.24 撮影)

 続いて雄の写真を見ていただく。


ヒメジョオンで吸蜜するヒメシジミ♂1/9(2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸蜜するヒメシジミ♂2/9(2019.7.17 撮影)


オカトラノオで吸蜜中のヒメシジミ♂3/9(2019.7.17 撮影)


オカトラノオで吸蜜中のヒメシジミ♂4/9(2019.7.24 撮影)


オカトラノオで吸蜜中のヒメシジミ♂5/9(2019.7.24 撮影)


葉上で休息中のヒメシジミ♂6/9(2019.7.17 撮影)


葉上で休息中のヒメシジミ♂7/9(2019.7.17 撮影)


葉上で休息中のヒメシジミ♂8/9(2019.7.17 撮影)


オカトラノオで吸蜜中ヒメシジミ♂9/9(2019.7.17 撮影)

次は雌雄ペアの写真。


ヒメジョオンで吸密するヒメシジミのペア1/3(右手前♂、左奥♀ 2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸密するヒメシジミのペア2/3(左手前♂、右後♀ 2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸密するヒメシジミのペア3/3(左♂、右♀ 2019.7.17 撮影)

交尾中の姿もわずかながら見られた。


葉上で交尾するヒメシジミ1/3(左♀、右♂ 2019.7.17 撮影)


葉上で交尾するヒメシジミ2/3(下♀、上♂ 2019.7.17 撮影)


葉上で交尾するヒメシジミ3/3(手前♀、後♂ 2019.7.24 撮影)

 この草原では随所で多数のヒメシジミが群れている姿が見られた。


ヒメジョオンに群がるヒメシジミ♂(2019.7.17 撮影)


ナワシロイチゴの花で吸蜜するヒメシジミ♀、♂(2019.7.24 撮影)


ナワシロイチゴの花に群れるヒメシジミ(2019.7.17 撮影)

 次は、前翅の5番目の黒斑が楕円形をしている個体。最初から3枚目までの写真の♂は同一個体のもの。


黒斑が楕円形をしているヒメシジミ♂1/3(2019.7.17 撮影)


黒斑が楕円形をしているヒメシジミ♂2/3(2019.7.17 撮影)


黒斑が楕円形をしているヒメシジミ♂の翅表3/3(2019.7.17 撮影)


黒斑が楕円形をしているヒメシジミ♀(2019.7.17 撮影)

 1,2枚目の♂の写真は、前翅裏の5番目の黒斑がかなり大きく、長楕円形をしている。3枚目の写真に見るように、翅表の縁の黒帯の幅は広く、ミヤマシジミでないと判定されるのであるが、ではアサマシジミかというと、そうとも言い切れない。というのは、翅表の色が青紫でヒメシジミの特徴だと思えるのである。

 アサマシジミの分布について、前出の「信州 浅間山麓と東信の蝶」には次のように記されていて、減少傾向が著しく、残念ながらそう簡単にはお目にかかることができないようである。

 「東信地方でも各地の草地・草原で多産したが、1980年代から急速に減少し、消滅した産地も多い。現在は確実な産地も数える程度となっている。環境省版レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類、長野県版では準絶滅危惧種に区分されている。」

 次はカラスシジミ。前翅長15~19mm。年1回発生し、食草はハルニレ。卵で越冬する。

 カラスシジミは以前自宅庭のブッドレアに吸蜜にやってきたことがあり、「庭に来た蝶」(2017.3.17 公開)で紹介した。今回、北軽井沢に2回にわたり出かけたが、そのつど出会うことができた。ただ個体数は多くはない。「信州 浅間山麓と東信の蝶」には次のように記されている。

 「長野県では県南部を除き、低山地から山地にかけて分布する。東信地方でも個体数は多くはないものの、各地の沢筋の樹林地などで見られる。低山地では開発などの影響を受けることもあるが、個体数の変動は少ないと考えられる。」

 今回見られた個体は、24日の1頭は尾状突起付近にやや傷みが見られたが、17日の2頭は翅の傷みもなく美しいものであった。ただ、両日ともずっと翅を閉じた状態であったので、翅表を撮影することはできなかった。そのため雌雄の別については、翅裏からだけの判定であるが、翅形は♀では♂より丸みを帯びること、裏の地色が♂ではより濃くなること、尾状突起は♂では短く、♀では長くなる傾向があるなどの特徴から、17日の2頭は♀と♂の両方、24日の1頭は♂であったと思われ、その旨記載した。

 先ず17日撮影の雌から。


ヒメジョオンで吸蜜するカラスシジミ♀1/2(2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸蜜するカラスシジミ♀2/2(2019.7.17 撮影)

 続いて17日と24日撮影の雄。


ヒメジョオンで吸蜜するカラスシジミ♂1/6(2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸蜜するカラスシジミ♂2/6(2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸蜜するカラスシジミ♂3/6(2019.7.17 撮影)


ヒメジョオンで吸蜜するカラスシジミ♂4/6(2019.7.17 撮影)


オカトラノオの花で吸蜜するカラスシジミ♂5/6(2019.7.24 撮影)


オカトラノオの花で吸蜜するカラスシジミ♂6/6(2019.7.24 撮影)

 写真でみるとおり、カラスシジミの翅の裏面はミドリシジミ類によく似ている。しかし、前記の通りゼフィルスの仲間ではない。
 
以下次回。






 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする