ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

新宮川ダム ダム研見学会

2024-06-25 08:00:00 | ダム見学会
2024年4月26日 新宮川ダム『ダム研見学会』
 
福島県会津美里町にある新宮川ダムは、例年4月~5月の融雪期には18門のクレスト自由越流頂から融雪放流が行われ、その美しさ故に『東の白水堰堤』とも呼ばれ、ダム愛好家間では春の風物詩になっています。
しかし、ダム構内の立入りは制限されダムは左岸下流側とダム湖上流からの遠望に限られています。
一方、福島県 新宮川ダム管理所ホームページには事前予約でダムの見学が可能な旨が記されています。
昨年8月に日本ダム協会よりダムマイスターを拝命以降、フェイスブックの勉強会グループ『ダム研』メンバーを中心に平均月1回ペースで見学会を開催してきました。
2024年(令和6年)4月は、ゴールデンウィークに休みが取れない代休として4月25~26日に休暇を獲得し2泊3日で宮城・福島のダム歴訪を計画、その期間中、宮城の大倉ダム、福島の新宮川ダム大川ダムの3基のダムで職員様同行による見学会を実施することになりました。
さらに新宮川ダム見学に併せて、同ダムの受益組織である『会津宮川土地改良区』が操作を受託している鶴沼川防災ダムについてもダムマイスターによる取材という形で取材見学の許可を頂きました。
ここではまず福島県農林水産部が管理する新宮川ダム見学会について紹介したいと思います。
新宮川ダムの詳細については『新宮川ダム』の項を、鶴沼川防災ダムについては『宮川ダム』『二岐ダム』『栃沢ダム』の項をご覧ください。
 
2024年(令和6年)4月26日、見学会の開始は午前10時からですがその前にダム下へ。
例年ですとゴールデンウィーク前のこの時期に融雪放流が行われるのですが、今年の冬は記録的な少雪。
そのため融雪放流も前倒しとなり残念ながら放流はちょろちょろ。


国道401号線松坂第1トンネル内に新宮川ダムへの管理道路入口があります。
関係者以外立入り禁止の管理道路を進むと目の前にダム湖とダムの上流面が現れます。
灌漑期を控えダム湖は満水。


手前は表面取水設備、対岸の建屋は艇庫。


水利使用標識
会津宮川土地改良区管内4490ヘクタールの農地が受益地となります。
水稲向けが主となりメインの灌漑期は5月6日~9月10日ですが、畑地や果樹園地も受益対象のため、水利権は年間を通して配分されています。


管理事務所の玄関。


玄関わきの定礎。


まずは、ダムの操作室でダムの概要や運用方法について説明を受けます。
ここには福島県農林水産部の職員さんおよび会津宮川土地改良区の職員さんが常駐されます。


いよいよダムの見学開始
普段立ち入れない場所の見学はいつもドキドキです。


天端は4メートル幅。
堤頂長は323メートルに及びます。


左岸ダムサイトに石碑が2基
こちらは竣工記念碑。


裏には会津宮川農業水利事業の説明。


こちらにはダム湖である『会津美里湖』と刻されています。


新宮川ダムのキャラクターの『はかせくん』
『はかせ』は近接する博士山に由来します。
当初はクマタカという設定でしたが、実は博士山に生息するのはクマタカではなくイヌワシ。
ということで、のちにイヌワシという設定に変更されました。


いよいよ監査廊へ。
2004年(平成16年)の竣工から20年
内部のコンクリートは白くきれいな状態が保たれています。


左岸ダム下へ。
豪雪地帯ということで、積雪期用にシェルターつき通路が設けられています。


こちらは小水力発電所で最大出力は1100キロワット。
管理は会津美里土地改良区が行い施設管理用電力として利用され、余剰電力は東北電力に売電します。
中は見学できず。


発電所の水利使用標識。
最大取水量は2.6立米/秒、最大出力は1100キロワットですが、平時は1.8立米/秒を取水し約600キロワットの発電を行います。


発電所に隣接する放流設備内部
大口径および小口径の2門のジェットフローゲートを装備。
向かって左が主ゲート、右が副ゲートになります。


放流設備のプレート。


取水設備及び放流設備の図面。


向かって左手が小水力発電所。
右手は放流設備。
訪問時は発電所経由で放流されていました。


ダム直下の管理橋から
ここから融雪放流を見たかったなあ!!






底部監査廊を進みます。


排水ピット。


プラムライン。


三角堰漏水計。


揚圧計。


右岸の監査廊階段
新宮川ダムにはエレベーターはありません。


堤高69メートルの登り返しですが、すでにバテバテの方も…。


右岸から下流面。
農業用コンクリートダムとしては珍しく堤頂部を自由越流頂が占めます。


上流面。


艇庫の内部
豪雪地帯らしく巡視艇だけじゃなく除雪機やスノーモービルも格納されています。


天端から見た艇庫。


天端からダム下を見下ろす。


左手は先ほど見学した管理用発電所と放流設備。


天端から1.4キロ下流の宮川ダムを遠望
1962年(昭和37年)竣工の農地防災ダムです。

 
ダム湖は会津美里湖で総貯水容量1032万立米
本州の農業用ダムとしては屈指のスケールを誇ります。


堤頂部にあるプラムライン。


最後に取水設備へ
農業用ダムですから表面取水となります。


これにて約1時間45分の新宮川ダムの見学は終了。
基本的に見たいところはすべて見せて頂ける充実した内容となりました。
上記のようにこの冬は記録的な少雪のため、融雪量が少なく灌漑期に向けた貯留など関係者一同大変なご苦労をされています。
ご多忙の中、丁寧な対応をしていただきました福島県及び会津宮川土地改良区の皆様には厚く御礼申し上げるとともに、今年一年大きな災害なく安定した灌漑用水の補給ができますことを心より祈念申し上げます。

この後は宮川ダム二岐ダム栃沢ダムのいわゆる鶴沼川防災ダム群の取材見学となりますが、それはまた別項で。