ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

鹿野川ダム(再)

2018-04-17 03:33:39 | 愛媛県
2018年3月26日 鹿野川ダム(再) 
 
鹿野川ダム(再)愛媛県大洲市肱川町宇和川の肱川水系肱川本流中流部にある国交省四国地方整備局が管理する重力式コンクリートダムです。
肘川は流路延長103キロの一級河川で愛媛県最大の河川ですが、支流の多さに加え大洲盆地を貫流した先の下流部が狭窄となっていることから、豪雨の際のバックウォーター現象による洪水被害が絶えませんした。
1953年(昭和28年)に建設省は肘川流域総合開発事業に着手し1958年(昭和33年)に治水・発電を目的とする鹿野川ダム(元)が竣工し、管理は愛媛県に移管されました。
1981年(昭和56年)に肘川上流に野村ダムが完成しますが、野村ダムは利水に重点を置いたダムだったことから、その後も洪水被害は絶えずさらなる洪水対策が迫られました。
一方鹿野川(元)ダムには不特定利水容量がなく下流の渇水対策に限度があること、貯水池の水質悪化などダム構造上の問題が浮上してきました。
そこで国交省四国地方整備局は2006年(平成18年)に同ダムを国交省直轄管理に移管して鹿野川ダム再開発事業に着手し、2018年(平成30年)に同事業は竣工しました。
再開発事業は
①トンネル洪水吐の新設とクレストゲート改良による洪水調節機能の増強
②選択取水設備と低水位放流施設の新設による不特定利水目的の付加
③曝気循環装置設置によるに貯水池水質改善
の三点からなっており洪水調節容量は従来の1650万立米から1.4倍の2390立米に増強されました。
再開発により特定多目的ダムとなった鹿野川ダム(再)は野村ダムと連携した肘川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、愛媛県公営企業局肘川発電所での最大1万400キロワットの発電を目的としています。
また肘川主要支流である河辺川では治水目的の山鳥坂ダム建設が始まっています。 
 
追記
2018年(平成30年)の平成30年7月豪雨では鹿野川ダム、野村ダム双方で過去最大規模の流入量を記録しサーチャージ水位に到達、これに対応した異常洪水時防災操作(緊急放流)により西予市野村地区及び大洲市で死者9名、浸水家屋3500戸という甚大な洪水被害が発生するとともに肱川発電所が被災し運転不能となりました。
この件により緊急放流時の地域への告知方法の見直しが大きな議論になる一方、緊急災害時において既存ダムの事前放流による洪水調節容量の確保、いわゆる『ダムの事前放流に関する治水協定』が全国各ダムで締結されるきっかけとなりました。
愛媛県企業局肱川発電所は2023年(令和5年)1月の運転再開を目指し復旧工事が進められています。 
 
 
鹿野川ダムは国道197号線にあります。
まずは下流から
クレストには改造されたラジアルゲートが4門並びます。
向かって右手が肘川発電所で、写真では見えませんが発電所わきに新設された低水位放流設備があります。
 
左手が新設工事中のトンネル洪水吐吐口。
 
左岸から
対岸は管理事務所 ダム周辺の桜はちょうど満開。
 
クレストのラジアルゲート
従来のゲートよりも2.8メートル高くなり洪水調節容量が1.4倍に増えました。
 
天端は車両通行可能
2011年(平成23年)に設置された新ゲート操作室建屋はまだまだピカピカ。
 
天端から
トンネル洪水吐建設のための仮設道路が伸びています。
 
愛媛県公営企業局肘川発電所
低水位放流設備の追加に合わせて発電容量は不特定利水容量に変更され、発電は利水放流に合わせて行う利水従属発電となりました。
 
ダム湖(鹿野川湖)は総貯水容量4820万立米と愛媛県第2位の規模。
右手は曝気循環装置。
 
再開発事業によって刷新された選択取水設備。
 
トンネル洪水吐呑口の建設工事が続いています。
 
 
2252 鹿野川ダム(元)
愛媛県大洲市肱川町宇和川
DamMaps
肘川水系肘川
FNP
61メートル
167.9メートル
48200千㎥/29800千㎥
国交省四国地方整備局
1958年
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3600 鹿野川ダム(再)(1318)
愛媛県大洲市肱川町宇和川
肘川水系肘川
FNP
61メートル
167.9メートル
48200千㎥/36200千㎥
国交省四国地方整備局
2018年再開発事業竣工


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