ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

白水ダム(白水溜池堰堤)(参考掲載)

2022-12-23 17:46:56 | 大分県
2022年11月18日 白水ダム(白水溜池堰堤)
 
白水ダム(白水溜池堰堤)は左岸が大分県竹田市鴫田、右岸が同市次倉の一級河川大野川にある灌漑目的の表面石張粗石コンクリート造重力式ダムです。
大分県竹田市から豊後大野市一帯は阿蘇火砕流による火山噴出物が厚く堆積し透水性が高い一方浸食により谷は深く、揚水技術のない時代丘陵上に広がる平坦地の開墾は困難を極めました。
明治後半より近代土木技術の活用により開墾地よりも標高の高い上流に水源を求め、豊後地方で井路(いろ)と呼ばれる灌漑用水路を引くことでようやく大規模な新田開発が可能となりました。
豊後大野市緒方町から竹田市の大野川南岸地域でも大野川を水源として1914年(大正3年)に富士緒井路が通水し本格的な新田開発が進められますが、その後上流に荻柏原井路の取水堰が建設されたことで取水量が大きく低減しました。
これを打開するために富士緒井路耕地整理組合は大野川への溜池堰堤の建設を決断、1934年(昭和9年)に着工し1938年(昭和13年)に竣工したのが白水ダムです。
現在は耕地整理組合を引き継いだ富士井路土地改良区が管理し、約280ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
白水ダムは全面越流式の石積堰堤ですが、堰堤下部が軟弱地盤であり越流時の洗堀を防ぐために左岸は円形の階段状、右岸は武者返しと呼ばれる局面流路となっています。
転波越流の美しさは特筆で、麦焼酎のCMで取り上げられて以降全国的な知名度が増し、愛知の長篠堰堤、秋田の藤倉ダムとともに日本三大美堰堤とされています。
また技術的、文化的価値を評価してAランクの近代土木遺産に選定されているとともに1999年(平成11年)には国の重要文化財に指定されました。
堤高14.1メートルと河川法上のダムの要件を満たしていませんが、ダム便覧には参考掲載されています。
 
白水ダムを下流から見る場合は左岸の鴫田地区へ、上から見下ろす場合には右岸の次倉地区へのアプローチとなります。
今回は左岸の下流側からのみの見学となりました。
2026年(平成8年)までの予定で10月~6月までの非灌漑期は土砂排出作業が行われていますが、今年は作業が中止のため美しい越流を愛でることができました。


堰堤下部が軟弱地盤のため越流時の洗堀を防ぐために左岸は円形の階段状、右岸は武者返しと呼ばれる局面流路になっています。 




堰堤は貯水池の左岸寄りに作られているため、水の流れはダムの右岸側により強く当たります。(10枚目写真参照) 
加えて堰堤下部が軟弱地盤となっており、減勢のために武者返しと呼ばれる独特の局面流路となっています。 
さらに武者返しを流下した水を導流するための溝が掘られるとともに縦にも副ダムが設けられています。


武者返しの擁壁も石積み。
それでなくても美しい転波が、曲線に沿って流下する様は『究極の美』と言っても過言ではありません。


ダムの説明板。


駐車場のトイレ
実はこれグッドデザイン賞受賞。


トイレの壁に白水ダムの説明書きが貼られていますが、これが非常にわかりやすい。
大野川は周辺各土地改良区(戦前は水利組合)の取水口が集中しており、それによる水争いや取水量の減少を補うために白水ダムや大谷ダムが建設されました。




これを見ると右岸側に武者返しが作られた理由がよくわかります。


本来なら排砂工事のために越流は見れないはずですが、今年は諸事情で中止。
一方で時間の 係で右岸側の見学は割愛してしまいました。
美しい越流が売りの堰堤ではありますが、表面石張りをじっくり見るために非越流時にも訪問したいものです。
 
S502 白水ダム(参考掲載)(1926)
左岸 大分県竹田市鴫田
右岸     同市次倉
大野川水系大野川
14.1メートル
87.26メートル
富士緒井路土地改良区
1938年


コメントを投稿