ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

金堀谷溜池

2023-06-04 17:10:49 | 福岡県
2023年5月19日 金堀谷溜池

金堀谷(かなほりたに)溜池は福岡県八女市黒木町今にある灌漑目的のアースフィルダムです。
八女市黒木町では9基の灌漑用溜池が堤高15メートル以上のダムとしてダム便覧に掲載されていますが、うち7基が位置未確認となっています。
金堀谷溜池もその一つで、ダム便覧には1939年(昭和14年)に黒木町の事業により竣工と記されています。
当時の町営事業で建設されたと思われ、管理は受益者で組織される金堀谷溜池水利組合が行っており、池の南方、矢部川右岸段丘上の水田に用水を補給しています。
金堀谷溜池はダム便覧に経緯度が記載されていない『位置未確認』物件ですが、八女市が作成した『若山・金堀谷溜池ハザードマップ』で位置を特定できます。

国土地理院地形図の池周辺の道路は不正確、またグーグルマップでは道路が記載されていませんが、舗装された車道が右岸を通り車でのアプローチが可能です。
天端は未舗装ですが九州電力の送電線巡視路となっており、こちらも小型車の通行なら問題ないでしょう。


天端脇だけ草が刈られており、上流面は草ぼうぼう。


右岸の洪水吐
越流部などはなく掘り込みが入っているだけ。


導流部は道路を潜って堤体右岸を流下します。


右岸湖畔の池栓。
複数の穴に木栓を差し込む昔ながらの取水設備。


上流面。


総貯水容量はダム便覧で1万4000立米、ため池データベースで2万4000立米
いずれにしても小さな溜池に違いありません。


下流面
こちらは上流面以上に草ぼうぼう
近年は受益農家の離農や高齢化で草刈りの手もままならないようです。


さらに引いて撮ります。
木も生い茂り堤体は緑の中に埋没しています。
堤高はダム便覧が15.9メートル、ため池データベースが16.9メートル
見た目は微妙な高さですが、谷を塞き止めており堤体基部はさらに下流に続きます。


下流から踏跡を辿り、池直下に到達できました。
口を開けているのは底樋管、上の水路は洪水吐導流部。


底樋管から用水路が続きますが、かなり土砂に埋まっています。
今は水路内の黒いパイプで導水しているようです。

ダム基部の石積擁壁。
高さは3メートルほどありますが、九州北部水害で被災したようでかなり崩れています。注目すべきは積まれている石が黒色片岩である点。
片岩は薄く割れやすいため石積みには不向きなんですが、この辺りは三郡変成帯で片岩が広く露頭しており、この石しか入手できなかったのでしょう。
同様に片岩が使われている溜池としては、愛媛県の渕ヶ谷溜池があります。


荒れ気味ではありますが、いまだ現役の溜池であることが確認できました。

2346 金堀谷溜池 (1984)
ため池データベース 402101002 
福岡県八女市黒木町今
矢部川水系右支流(河川名不明)
15.9メートル(ため池データベース 16.9メートル)
38.4メートル(ため池データベース 41メートル)
14千㎥/14千㎥(ため池データベース24千㎥/)
金堀谷溜池水利組合
1939年


2 コメント

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現役の溜池 (tibineko)
2023-06-04 23:20:04
何というか・・・ちょっとした探検ですね。
きっと人通りなんて無いだろうと思うのですが、静かすぎて怖いような・・・
関係ない話ですが・・
八女の黒木町ではご当地マンホールは見つかりませんでした。
住所を見て、ああ、そう言えば八女市内以外の旧自治体は、殆どマンホール空白地帯だった事を今更ながらに思い出しています。
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黒木町 (まっち)
2023-06-05 13:26:24
黒木町と言えば女優の黒木瞳さんの出身地として記憶していました。
現地に行って、『こんな田舎の人だったのか?うちの実家より田舎やん!!』
黒木町は西部を除けばあとは矢部川流域の深い谷が続き平地はほとんどありません。
農地は猫の額ほどの平地と山の斜面を切り開き棚田を作るしか術はありません。
でも農地を開くにはまず水源、棚田のさらに高所に溜池を築き水を引いていました。
昨今ダムマニアは結構な勢いで増殖していますが、残念ながら溜池に目を向ける人はほとんどいません。
でも、個人的には先人の開墾の苦労と受益者との関係がダイレクトに感じられる溜池が大好物なんです。
讃岐と並んで溜池密集地だった奈良で生まれ育った影響もあるのかもしれません。
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