ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

渡川ダム

2021-10-30 08:30:13 | 宮崎県
2021年10月18日 渡川ダム
 
渡川ダムは左岸が宮崎県東臼杵郡美郷町南郷中渡川、右岸が同県日向市東郷町下三ケの一級河川小丸川上流部にある宮崎県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1935年(昭和10年)に内務省は河川総合開発の先駆となる『河水統制事業』を採択し全国で治水・利水を一貫した河川開発が実施されることとなりました。
宮崎県では1938年(昭和13年)に県電気建設部(現県企業局)により小丸川の治水と発電を目的とした『小丸川河水統制事業』が採択され、4基のダムおよび発電所の建設が着手されました。
このうち浜口ダム(現川原ダム)と川原発電所、戸崎ダムと石河内第二発電所は1940年(昭和15年)に完成するも直後に日本発送電に接収され、戦後は九州電力が事業を継承しました。 
一方多目的ダムとして松尾ダムが戦時中の中断を挟んで1951年(昭和26年)に竣工、こののち小丸川河水統制事業は『小丸川総合開発事業』に衣替えし、同事業により1956年(昭和31年)に小丸川最上流部に渡川ダムが竣工しました。
渡川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで小丸川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、宮崎県企業局渡川発電所(最大1万2000キロワット)でのダム水路式発電を目的としています。
渡川ダムの完成により、1938年に着手された『小丸川河水統制事業』は着手より18年の年月をかけようやく全事業が竣工するに至りました。
 
ダム便覧には10年以上前に撮影された下流からの写真が掲載されていますが、今は木が茂りこの写真が精いっぱい。
クレストにラジアルゲート3門を備えています。
 
ダム下流面が望めるのはこのアングルだけ
堤頂部の襟がなく曲線でスロープに続く独特のフォルム
一方黒ずんだ堤体はコルゲートパイプのシェルターで被覆されまるでクロヒョウのような雰囲気。
 
撮影ポイントがないので同じような絵が続きます。
 
ズームアップ
コルゲートパイプを使ったチューブ状のシェルターは同じ宮崎県営の綾南ダム松尾ダムなどで見られます。
 
渡川ダム貯水池図
ずいぶん傷んでます。
 
水利使用標識
ダム便覧では有効貯水容量は2990万立米となっていますが、こちらは2790万立米。
当ブログでは水利使用標識に従います。
 
湖岸にしがみつくように建つ管理事務所。
こちらにも管理人さんご夫婦がが住み込みで駐在されています。
 
撮影ポイントがないのは宮崎県ダムあるある。
無理に欲張らず見えるところで満足するのも長く安全にダム巡りするコツだと思います。
 
(追記)
渡川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2818 渡川ダム(1729) 
左岸 宮崎県東臼杵郡美郷町南郷中渡川 
右岸 宮崎県日向市東郷町下三ケ 
小丸川水系渡川 
FNP 
 
62.5メートル 
173メートル 
33900千㎥/27900千㎥ 
宮崎県県土整備部 
1956年 
◎治水協定が締結されたダム 


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