ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

早瀬野ダム

2016-05-06 12:15:00 | 青森県
2016年4月30日 早瀬野ダム
 
早瀬野ダムは青森県南津軽郡大鰐町早瀬野の岩木川水系虹貝川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
津軽平野を南北に貫く平川流域の灌漑用水源を確保するために、農水省直轄事業で1985年(昭和57年)に竣工し、完成後は青森県農林水産部が管理を受託しています。
このダムの特徴はなんといっても上下両面に施されたアスファルトフェイシングです。
上流面のアスファルトフェイシングは時折見ることができますが、下流面もアスファルトフェイシングされているダムは他にはないんじゃないでしょうか?
上下流面ともアスファルトフェイシングを施した理由についてダム便覧では『水質が岩の劣化をもたらすことが判明、その保護対策として途中からアスファルトフェイシングを実施』と書かれていますが、それだけでは下流面もアスファルトによる遮水処理を行う説明としては不十分です。
1980年(昭和55年)の青森県公害調査事務所報によると、もともと当ダムの集水域及び原石山は黄鉄鉱を中心とした重金属含有率が高く、ダム建設に伴ってそれら重金属物質が水質を汚染するとともに、ロック材に使用された岩石からも重金属物質の流出が見られ、虹貝川下流域の水質悪化をもたらしました。
この対策として堤体上下流面を遮水処理することで堤体本体からの汚染水流出を防ぐとともに、放流水の中和処理や浸透水の中和処理、根本原因となった原石山や集水域の被覆処理による汚染物質の流出防止策が取られ、現在は環境基準を満たした水質を確保できています。
見た目はアスファルトフェイシングですが、これは上記のような事由によるものでダムそのものの遮水はセンターコア式ですので、型式はロックフィルダムとなっています。
 
大鰐町早瀬野地区から虹貝川に沿って町道を南下すると正面にアスファルトでのっぺりとした早瀬野ダムが見えてきます。
現在は下流面のアスファルトを塗りなおす改修工事が行われています。
左右でアスファルトの色が違うのがわかるでしょう?
 
取水設備からのトンネル式の導流路の吐口です。
 
工事中のため天端に入ることができません。
堤体からワイヤーにつないだローラーでアスファルトを固めるようです。
この日は休工でしたが、作業現場を見てみたいものです。
 
上流面
こちらもアスファルトフェイシングで天端近くだけコンクリート補強となっています。
 
水深が深いのか?湖面は深いグリーンとなっていました。
 
取水設備
 
ダム下流面もアスファルトフェイシングされた全国で見ても非常にめずらしいダムです。
改修工事は年内いっぱい続くようですがぜひ改修後に再訪してみたいものです。
 
追記
早瀬野ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たな洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0206 早瀬野ダム(0343)
青森県南津軽郡大鰐町早瀬野
岩木川水系虹貝川
56メートル
285.9メートル
13500千㎥/13000千㎥
青森県農林水産部
1985年
◎治水協定が締結されたダム


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