ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

豊稔池ダム(再)

2018-01-18 03:03:28 | 香川県
2017年12月23日 豊稔池ダム(再)
 
豊稔池ダム(再)は香川県観音寺市大野原の柞田川上流部にあるマルティプルアーチ式粗石モルタル工ダムです。
柞田川流域の大野原村(現観音寺市大野原町)は古くから『月夜にも焼ける』といわれるほど干ばつ被害に悩まされ、一帯農家にとって安定した灌漑水源確保は永年の悲願となっていました。
1920年(大正9年)、1924年(大正13年)と立て続けて発生した干ばつを契機に貯水池建設機運が一気に高まり、1926年(大正15年)から貯水池建設事業が着手されました。
土木建築の第一人者であった佐野藤次郎指導のもと海外の最新技術であるマルティプルアーチ型式が採用され、組合員総出による延べ15万人の人海戦術により1930年(昭和5年)に貯水池は無事竣工し『豊稔池』と命名されました。
豊稔池ダムは日本初のマルティプルアーチ(多供扶壁式)ダムであり、且つ日本初の農業用コンクリートダムとなっています。
その後1994年(平成6年)にかけて大規模な再開発事業が行われ、従来の灌漑目的に加えて防災機能を備えた農地防災ダムとして生まれ変わりました。
管理は豊稔池土地改良区が行い柞田川流域530ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
 
戦後、宮城県の大倉ダムがマルティプルアーチダムとして建設されますが、その後の河川構造令改正により同型式のダム建設は築造できなくなり現在日本には同型式のダムは2基しかありません。
1997年(平成9年)に貴重な土木建築としての評価から国の有形文化財に登録され、2006年(平成18年)には重要文化財の指定を受けました。
またAランクの近代土木遺産、ため池百選、日本100ダムにも選ばれています。
 
ダム周辺は遊水公園として整備されダム下に駐車場があります。
遊水公園入口の案内板。
 
公園入口から。
 
下流から正対
両端部は重力式、中央部がマルティプルアーチ式になっています。
5連の扶壁が並ぶ様はも中世欧州の城郭のようです。
 
中央4列の欠円アーチ部分が越流式になっています。
 
遊水公園の石碑とともに。
 
中央4本の扶壁にはサイフォン式余水吐の放流口があります。
一方左岸(向かって一番右手)の扶壁には上樋(利水放流口)があります。
また写真では分かりづらいですが、アーチ部基部には取水及び土砂吐用の樋管が取り付けられています。
 
放流がない時は扶壁直下まで立ち入りが可能。
欠円アーチ部を見上げます。
 
 
水叩きも重厚な石張り。
 
左岸県道9号から。
 
堰堤そのものが巨大なラビリンスのようです。
 
今回は石積をじっくり堪能することができました。
サイフォン式余水吐からの放流も迫力満点のようですので、次は是非放流時に訪問してみたいものです。
 
2156 豊稔池ダム
香川県観音寺市大野原町田野々
DamMaps
柞田川水系柞田川
MA
32.3メートル
158.4メートル
1590千㎥/15930千㎥
1930年
-------------
3048 豊稔池ダム(再)(1230)
FA
MA
30.4メートル
128メートル
1643千㎥/1593千㎥
豊稔池土地改良区
1994年 再開発事業竣工

戸川ダム

2018-01-18 02:59:57 | 香川県
2017年12月23日 戸川ダム
 
戸川ダムは香川県三豊市財田町財田上の財田川水系谷道川にある防災・灌漑目的のアースフィルダムです。
農林省(現農水省)の補助を受けた県の防災ダム事業で建設された農地防災ダムで、谷道川および財田川流域の農地防災、同流域農地への灌漑用水の供給を目的として1957年(昭和32年)に竣工しました。
その後、県営地域ぐるみため池再編総合整備事業が1998年(平成10年)に竣工し、ダムの改修および周辺の環境整備が行われました。
ダム湖畔の『戸川ダム公園』は桜の名所としてさぬき百景に選ばれるほか、道の駅や日帰り温泉施設などが併設され近隣随一のレジャースポットとなっています。
ダムの管理は三豊市が受託しています。
 
戸川ダムは国道32号線沿いにありダムに隣接した『道の駅たからだの里さいた』が目印となります。
堤体下流側が盛土造成されて道の駅が建設されたためどこが堤体かわからなくなっています。
とりあえずこれが下流面??
 
天端は道の駅の駐車場。
祝日のお昼時ということで駐車場はほぼ満車。
 
上流面
1998年(平成10年)の改修により自然石を使った親水護岸が施されました。
 
右岸の斜樋。
 
総貯水容量は21万1000立米。
湖岸には桜が植えられ、春には多くの花見客でにぎわいます。
 
左岸から。
 
 
湖畔上流側も公園になっています。
 
ダム湖は谷道川から導水し、余水は谷道川に戻します。
こちらは谷道川沿いにある洪水吐、越流式で越流堤には鋼製起伏ゲートがついています。
 
もとは国道沿いにあったただの農地防災溜池が、改修に合わせて環境整備され日帰り温泉や道の駅の設置で朝から大賑わい。
知名度の高いメジャーなダムじゃなくても、別にカードやカレーで無理無理盛り上げなくてもダムを活用した地域経済や交流の活性化は可能だという好例でしょう。
様はソフトの問題。
 
2169 戸川ダム(1229)
香川県三豊市財田町財田上
DamMaps
財田川水系谷道川
FA
19.6メートル
177メートル
211千㎥/206千㎥
三豊市
1957年

多冶川ダム

2018-01-18 02:46:27 | 香川県
2017年12月23日 多冶川ダム
 
多治川ダムは香川県仲多度郡まんのう町山脇の財田川水系帰来川上流部にある防災目的の重力式コンクリートダムです。
農林省(現農水省)の補助を受けた県の防災ダム事業で建設された農地防災ダムで、帰来川流域の農地防災を目的として1957年(昭和32年)に竣工しました。
運用開始後はまんのう町が受託管理を行っています。
 
三豊市財田町財田上で国道32号から県道202号を東に折れ、土讃線の踏切を渡って山脇地区に入ります。そのまま帰来後川沿いに東進して最後の民家の先のヘアピンカーブが多冶川ダムへの入口となります。
路肩に車を止め右手の山道を進むとすぐに多冶川ダム右岸に到着します。
自由越流式洪水吐が2門の古いコンクリート防災ダム。
 
天端高覧の造りが昭和30年代の香りを醸し出しています。
二つの建屋はゲート操作室と思われます。
 
天端。
 
堤体下部の導水管の交換でもするんでしょうか?
 
減勢工
左岸側に防災ダム特有の穴が見えそこから放流が行われています。
これが常用洪水吐になるんでしょう。
 
防災専用ダムですがダム湖は満水
総貯水容量は20万立米と小さな貯水池ですが、実際には流域の灌漑用水源としての役割があるのかも知れません。
 
四国堰堤ダム88箇所巡りのサイトを読んで1時間以上の徒歩を覚悟しましたが、なんと車道からほんの1~2分歩けばダム右岸に到着できます。
そのかわり多冶川集落内の隘路でBMWM6が立ち往生、地元の方の助力のおかげで1時間かけて何とか脱出できました・・・・
どうもありがとうございました。
 
2164 多冶川ダム(1228)
香川県仲多度郡まんのう町山脇
財田川水系帰来川
21.7メートル
48メートル
200千㎥/197千㎥
まんのう町
1957年

仁池

2018-01-18 02:40:24 | 香川県
2017年12月23日 仁池
 
仁池(にいけ)は香川県丸亀市飯山町上法軍寺の大束川水系中大束川左支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダムの歴史は古く江戸初期の1648年(慶安元年)に築造されました。
明治維新以降1920年(大正9年)、1947年(昭和22年)の改修を経て現在の規模となり、総貯水容量150万立米を超える香川県屈指の溜池となりました。
また1995年(平成7年)からは香川用水仁池分水からの補給が開始されており、安定した用水補給が可能となりました。
池の管理は仁池土地改良区が行い337ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
なおダム便覧では竣工年度を1967年としていますが、この根拠がわかりません。ここでは池が現在の規模となった1947年の改修事業竣工年度を採用します。
 
坂出から県191号線を南下すると前方に仁池の堤体が見えてきます。
堤高は16メートルながら平野部に続く全長320メートルを超える堤体はまるで大河の堤防のようです。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
仁池は左右両岸に洪水吐があります
こちらは右岸の横越流式洪水吐。
 
総貯水容量150万2000立米とため池王国香川県でも上位に位置する大規模ため池です。
朝霧が掛かり幻想的な眺めとなりました。
 
天端から
ダム下には3つの用水路へ分水するプールのような巨大な分水工があります。
 
ダム下の分水工。
 
堤体中央の斜樋。
 
天端は市道になっており、歴史が古い溜池らしく多くの記念碑が並びます。
 
左岸に展示された1920年(大正9年)製の石製樋管。
 
左岸の洪水吐
奥に鋼製起伏ゲートがあります。
 
2149 仁池(1227)
ため池コード
香川県丸亀市飯山町上法軍寺
大束川水系中大束川左支流
16メートル
328メートル
1502千㎥/1502千㎥
仁池土地改良区
1947年