ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

小渋ダム

2016-08-02 23:00:00 | 長野県
2015年11月 8日 小渋ダム
2016年  7月 30日 
 
小渋ダムは左岸が長野県下伊那郡松川町生田、右岸が上伊那郡中川村大草の天竜川水系小渋川にある多目的アーチ式コンクリートダムです。
『暴れ天竜』と呼ばれる天竜川では戦前は電源開発が先行し、治水ダムによる河川総合開発は1952年(昭和26年)より着手され、1959年(昭和34年)に三峰川に美和ダムが完成しました。
これにより上伊那地区での治水は改善した一方、日本有数の土砂崩落地帯を水源とする小渋川からの土砂流入は天竜川の流下能力を阻害するほか下流の発電ダムの運用にも支障を来していました。
1961年(昭和36年)の通称『三六水害』による下伊那地区の甚大な洪水被害を受け、建設省(現国交省)は小渋川総合開発事業にを採択、小渋川へのダム建設事業に着手し1969年(昭和44年)に竣工したのが小渋ダムです。
小渋ダムは国交省中部地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、美和ダムと統合管理され美和ダムと連携した小渋川および天竜川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、天竜川左岸約900ヘクタールへの灌漑用水の供給、長野県企業局小渋第一(ダム式発電最大3000キロワット)、第二(ダム水路式発電最大6500キロワット)第三(小水力発電550キロワット)発電所での水力発電を目的としています。
一方で小渋川がもたらす土砂により、計画を上回るペースで堆砂が進行したことから2000年(平成12年)より『小渋ダム施設改良事業』が着手され、排砂促進と堆砂除去を目的とした全長4キロのバイパストンネルが2016年(平成28年)に完成しました。
 
小渋ダムには2015年(平成27年)11月に初訪しましたが悪天候により満足な見学ができず、2016年(平成28年)7月のダム見学会の際に再訪しました。
1枚目以外の写真はすべて2016年のものです。
またダム見学会の詳細についてはこちらをご覧ください。
 
松川市街から県道59号を東に向かうと巨大アーチなアーチダムが見えてきます。
 
見学会に合わせて昨年11月8日以来2度目の訪問です。
前回はあいにくの雨模様で駆け足の見学、おまけにコンデジの撮影でしたが、今回は見学会ということで普段見れないキャットウォークや監査廊、堤体直下などをじっくりと見ることができました。
 
まずは右岸展望台から。
岩盤が強固で、アーチダムを建設するにはもってこいの地盤。斜面も法面施工だけで、山留めなどはありません。
おかげで日本屈指の薄いアーチダムの建設が可能になったそうです。
 
上流面を俯瞰。
 
ゲートをズームアップ。
5門のラジアルゲートにコンジットの予備ゲート。
 
減勢工。
 
総貯水容量5800万立米のダム湖(小渋湖)
小渋川水源は南アルプス赤石岳です。
 
放流設備としては非常用洪水吐としてクレストラジアルゲート5門、常用洪水吐としてコンジット高圧ゲート2門を装備。
アーチダムとしては珍しく堤体にエレベーター棟が設置されています。
 
右岸から
奥は天竜川ダム統合管理事務所。
 
エレベーターでキャットウォークへ。
 
 
アーチの下流面。
 
減勢工わきから。
 
完成したばかりのバイパストンネル吐口。
ダム上流4キロ地点に堰が設けられ、豪雨時にはバイパストンネル経由で堆砂除去、排砂が行われます。
 
追記
小渋ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1021 小渋ダム(0051)
左岸 長野県下伊那郡松川町生田
右岸    上伊那郡中川村大草
天竜川水系小渋川
FNAP
105メートル
293.3メートル
58000千㎥/37100千㎥
1969年
国交省中部地方整備局
◎治水協定が締結されたダム

片桐ダム

2016-08-02 18:00:00 | 長野県
2015年11月 8日 片桐ダム
2016年  7月 30日
 
片桐ダムは左岸が長野県下伊那郡松川町上片桐、右岸が同町大島の天竜川水系片桐松川にある長野県建設部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
片桐松川水源部は風化した花崗岩の影響で土砂流出量が多い上に下流域では河床が上昇し洪水被害が多発していました。
片桐ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、片桐松川の洪水調節のほか安定した河川流量の維持と既得取水権への補給、松川町への上水道用水の供給を目的として1989年(平成元年)に竣工しました。
膨大な土砂流出を前提にダム湖上流には砂防ダムが並ぶ一方、オリフィスゲート上流部にカーテンウォールを設置しサイフォン原理を利用して排砂が容易な構造となっています。
しかし、運用開始以降計画を超える堆砂が進行し河川管理者による土砂排出が行われる一方、2021年(令和3年)には第三者事業者による公募型土砂採取が試行されています。
また同年4月に河川維持放流を利用した長野県企業局『くだものの里松川発電所』が完成、最大380キロワットの小水力発電が稼働しています。
 
片桐ダムには2015年11月に初訪しましたが悪天候のため写真撮影は叶わず、翌年7月に再訪しました。
写真はすべて再訪時のものです。
 
松川市街から片桐松川沿いに市道を西進するとダムが見えてきます。
クレスト自由越流頂9門、自然調節式オリフィス2門を備えたゲートレスダムです。
このほか常用洪水吐としてホロージェットバルブとジェットフローゲートを装備。
 
上流から
オリフィス取水口にグリーンのゲート状のものが見えますが、これがカーテンウォールです。
 
天端は徒歩のみ開放、
ゲート部分だけわずかに高くなっています。
 
左岸フーチングの脇にホロージェットバルブがあります。
こんな場所にバルブがあるのは珍しい。
 
天端から見た減勢工
今は左岸に小水力発電所が増設されています。
 
総貯水容量186万立米のダム湖(松川湖)
堆砂が進み有効貯水容量は131万立米です。
天端から見ても上流に積もった白い砂が見えます。
 
オリフィス取水口
上流側にカーテンウォールが嵌め込まれ、サイフォンの原理を活用してダム底の排砂が容易な構造になっています。
 
左岸のインクラインと艇庫。
 
右岸から。
 
右岸から上流面
奥に選択取水設備があります。
 
追記
片桐ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1038 片桐ダム(0050)
左岸 長野県下伊那郡松川町上片桐
右岸         同町大島
天竜川水系松川
FNW
59.2メートル
250メートル
1840千㎥/1310千㎥
長野県建設部
1989年
◎治水協定が締結されたダム