ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

風屋ダム

2016-08-04 19:19:50 | 奈良県
2016年8月1日 風屋ダム
 
風屋ダムは奈良県吉野郡十津川村風屋の一級河川新宮川本流(十津川)にある電源開発(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
日本屈指の降水量を誇る紀伊山地各河川では戦前より電源開発が進められ、これらの発電施設は1951年(昭和26年)の電気事業再編令により誕生した関西電力(株)が事業を引き継ぎました。
一方で当地域の埋蔵電力は豊富で、新たな電源開発を関西電力のみで行のは財務的、物理的にも困難で、一級河川新宮川水系については電源開発(株)によって発電事業が進められることになりました。
同社は昭和30年代より新宮川水系での電源開発に着手し、同水系同社初のダムとして1960年(昭和35年)に竣工したのが風屋ダムです。
ここで取水された水は約8.5キロの導水路で同時に完成した十津川第一発電所に送られ、最大7万5000キロワットのダム水路式発電が行われています。
この後電源開発は新宮川水系に5基のダムと4箇所の発電所を建設し、併せて一般水力24万5000キロワット、混合揚水35万キロワットの発電能力を有するに至りました。 
 
国道168号で十津川村に入り、十津川沿いを南下すると風屋ダムに到着します。
天端は車両通行可能で両岸に駐車場がありますが、今回は左岸に車を止めてダムを見学します。
駐車場の脇に巨大な予備ゲートが横たわっています。
 
ケーブルクレーン台座跡。
 
左岸から
 
天端は車両通行可能。
 
右岸には管理事務所と十津川第一発電所への取水口。
 
天端から下流を眺めると・・・。
 
総貯水容量1億3000万立米のダム湖(風屋貯水池)
右手は風屋集落。水没家屋の多くがここに移住したようです。
 
堤体上流面。
鉄骨トラスのゲートビアが特徴的。
 
下流の風屋大橋から
クレストローラーゲート4門と導流部中央にハウエルバンガーバブルを装備。
 
追記
風屋ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1561 風屋ダム(0499)
奈良県吉野郡十津川村風屋
新宮川水系十津川
101メートル
320.5メートル
130000千㎥/89000千㎥
電源開発(株)
1960年
◎治水協定が締結されたダム

旭ダム

2016-08-04 15:37:45 | 奈良県
2016年8月1日 旭ダム
 
旭ダムは奈良県吉野郡十津川村旭の新宮川水系旭川にある関西電力(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
オイルショックを契機に電力各社は火力偏重の発電体制を見直し、火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効利用できる揚水発電に着目します。
奥吉野発電所は関西電力3番目の純揚水式発電所として1983年(昭和58年)に完成し、旭ダムは同発電所の下部調整池として前年の1982年(昭和57年)に竣工しました。
上部調整池である瀬戸ダムと有効落差505メートルを利用して最大120万6000キロワットの純揚水式発電を行っています。
旭ダムはドーム型アーチダムで、ダム中央部はオーバーハングになっているのが特徴です。
また堆砂対策として日本で初めて排砂バイパストンネルが併設されました。
一方上部調整池である瀬戸ダムは管理道路入り口が閉鎖され関係者以外立ち入ることができません。
 
国道168号線の田長瀬トンネルの先から村道を旭川沿いに進むと旭ダムに到着します。
ダム中央がオーバーハングになったドーム式アーチ。
 
放流設備としてはクレストラジアルゲート3門のほか、堤体下部にホロージェットバルブ2条を装備。
 
クレストラジアルゲートはもちろん関電ブラック。
 
堤体下部にはホロージェットバルブが2条
奥は常用洪水吐に相当し最大放流量100㎥/秒、手前は河川維持用で10㎥/秒。
 
天端は立ち入り禁止で見学は左岸からのみ。
 
上流面をみるとドーム型アートであることがよくわかります。
訪問したのは夏の午前、電力需要が高まる午後に備えて夜間のうちに上部ダムに揚水されたため水位は低くなっています。
 
インクライン。
 
ダムの説明板。
 
東日本大震災前までは奥吉野発電所に隣接した旭エレハウスで地下発電所や瀬戸ダムの見学を受けてけていました。
しかし原発停止による関西電力の収益悪化で、旭エレハウスは閉鎖、見学も中止されています。 
 
追記
旭ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1571 旭ダム(0498)
奈良県吉野郡十津川村旭
新宮川水系旭川
86.1メートル
199.4メートル
16920千㎥/12500千㎥
関西電力(株)
1978年
◎治水協定が締結されたダム

池津川取水ダム

2016-08-04 14:04:23 | 奈良県
2016年8月1日 池津川取水ダム
 
池津川取水ダムは左岸が奈良県吉野郡野迫川村中津川、右岸が同村立里の新宮川水系池津川にある国交省近畿地方整備局が管理する重力式コンクリートダムです。
猿谷ダム下流で新宮川に合流する支流の川原樋川流域の水を猿谷貯水池へ導水するための川原樋川導水トンネルを構成する4基の取水堰堤の一つで、4基の中で唯一堤高15メートルを超えています。
ダムの目的は猿谷ダム同様不特定利水と関西電力西吉野第一発電所でのダム水路式発電です。
 
川原樋川導水トンネルと池津川取水ダムの概略図(国交省近畿地方整備局の説明図より)
 
五条市大塔町国道168号線から県道734号に入り県道とは名ばかりの悪路を池津川沿いに遡上すると池津川取水ダムに到着します。
路上の落石が多くあまりにもひどい道路状況に何度も引き返そうかと迷いましたが、無事到着できてホッとしました。
見た目の堆砂率は100%。
貯水池はなくほぼ砂に覆われていますが取水できればOKということなんでしょう。
 
堆砂が進みダムのすぐそばまで接近できます。
 
土砂吐ゲートと取水口。
 
左手が沈砂池。ダム下を川原樋川導水トンネルが通っており、ここで取水した水は猿谷ダムへ送られます。
 
小さなダムですが、これでも国交省直轄ダムです。
 
3593 池津川取水ダム(0497)
左岸 奈良県吉野郡野迫川村中津川
右岸         同村立里
新宮川水系池津川
NP
16.8メートル
42.7メートル
--千㎥/--千㎥
国交省近畿地方整備局
1956年

九尾ダム

2016-08-04 11:17:50 | 奈良県
2016年8月1日 九尾ダム
 
九尾(つづらお)ダムは奈良県吉野郡天川村九尾の新宮川水系十津川左支流天の川にある関西電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
全国屈指の多雨地帯である紀伊半島では、その豊富な水量を生かして戦前から各河川で電源開発が進められてきました。
九尾ダムもそんな発電施設の一つで、1937年(昭和12年)に戦前の五大電力の一つ宇治川電気によって建設され、ここで取水された水は和田発電所(最大出力2100キロワット)と長殿発電所(完成当時最大出力1万5300キロワット)に送られ計1万5400キロワットのダム水路式発電が開始されました。
天の川流域の発電施設は日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により関西電力が事業を継承しています。
しかし2011年(平成23年)の紀伊半島大水害により長殿発電所は全壊、2018年(平成30年)に出力を1万6200キロワットに増強して復旧工事が竣工しました。
 
天川村中心部から天の川沿いに県道53号を進むと左手に九尾ダムが見えてきます。
 
関電ブラックのラジアルゲートが5門。
訪問時は長殿発電所停止中のためゲートはすべて開放。
 
和田発電所への取水口。
取水も中断中。
 
天端。
 
5門のゲートは開放されたまま
奥に排砂ゲートがあります。
 
 
高速でシャッターを切ると鱗が現れました。
 
2018年(平成30年)の長殿発電所再建までゲートの開放は続きました。
 
追記
九尾ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1553 九尾ダム(0496)
奈良県吉野郡天川村九尾
新宮川水系天の川
26.5メートル
98.2メートル
1137千㎥/648千㎥
関西電力(株)
1937年
◎治水協定が締結されたダム

川迫ダム

2016-08-04 10:55:32 | 奈良県
2016年8月1日 川迫ダム
 
川迫(こうせ)ダムは奈良県吉野郡天川村北角の新宮川水系十津川左支流天の川にある関西電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
全国屈指の多雨地帯である紀伊半島では、その豊富な水量を生かして戦前から各河川で電源開発が進められてきました。
川迫ダムもそんな発電施設の一つで、1940年(昭和15年)に戦前の五大電力の一つ宇治川電気によって建設され日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により関西電力が事業を継承しています。
天の川および弥山発電所の放流水がダム湖に貯留され、ここで取水された水は約4.4キロの導水路で川合発電所に送られ最大7000キロワットのダム水路式発電が行われています。
 
天川村中心部から国道とは名ばかりの国道309号を東に進むと川迫ダムに到着します。
右岸から。
 
国道を挟んだ斜面にプラント跡と思われる施設が残り、巡視船が置かれています。
 
上流から
関電なので当然ゲートは黒なんでしょう
管理橋はゲート部分だけが高くなった戦前、戦中に多く見られる形状。
 
ずいぶん堆砂が進んでいます。
この貯水池左手に関西電力弥山発電所があるんですが、写真を撮るのを失念してしまいました。
 
追記
川迫ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1556 川迫ダム(0495)
奈良県吉野郡天川村北角
新宮川水系天の川
36.5メートル
111.6メートル
476千㎥/400千㎥
関西電力(株)
1940年
◎治水協定が締結されたダム