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世界の街角

旅先の街角や博物館、美術館での印象や感じたことを紹介します。

シリーズ⑨:サンカローク陶器博物館:その9

2016-11-08 08:53:43 | 博物館・タイ
<続き>

●ランナーからの交易陶磁:サンカンペーン陶磁(2)

前回に続きサンカンペーン陶磁を紹介する。印花双魚文盤はサンカンペーンとパヤオの双方に存在し、お互いに似ている。見分け方は背鰭と腹鰭の数と配置が異なること、二つ目は胎土の違いである。腹側の鰭が1つ、背側の鰭が2つの場合は、ほぼサンカンカンペーンと考えられる。


見込みには三重圏線を巡らせ、草花文を描いているが、この手の草花文は非常に珍しい。
この手の草花文はポピュラーな図柄であるが、描線が太く且つしっかり塗りこめられている。鍔縁に圏線を巡らせ、その間に点文を描き、それが2列になっている。これは通常1列しかないので、当該盤は珍しい。


上掲2点の鉄絵双魚文盤(鉢)は、いずれもよく見る図柄である。
J・C・Shaw氏によると、サンカンペーン初期に鉄絵双魚文盤が登場すると、その著作にあるが、これもその部類か?
サンカンペーンの草花文では、最も多く見る文様である。
これも初期の作品か?
以下、代表的な壺2点を紹介する。黒褐釉で紐を親指と人差し指で摘まんだような耳がつく。更に肩部には二重線の格子文が巡る。頸はラッパ型でクメール陶を思わせる。
上の壺もサンカンペーンでよく見る壺であるが、下の大型の盤口を持つ壺も北タイではよく見る姿である。
高さ70cmはあろうかと思われる大壺で双耳である。灰釉と黒褐釉の掛け分けで、サンカンペーンの特徴を余すことなく伝えている。手法と云い、姿と共にクメール陶を思わせる。それにしても小型の横焔式単室窯で、このような大型の壺をよく焼成したと感心する。


                                  <続く>


シリーズ⑨:サンカローク陶器博物館:その8

2016-11-07 08:51:12 | 博物館・タイ
<再開>

●ランナーからの交易陶磁:サンカンペーン陶磁(1)

ランナー各地からの交易陶磁をテーマとしてサンカンペーン、カロン、ワンヌア、パヤオ、パーン陶磁が展示されていた。順次紹介する。
サンカンペーン陶磁に興味をお持ちの方は、是非御覧願いたい。サンカンペーンの概要が分かる展示であった。今回と次回に分けて紹介したい。

(輪花縁鎬文盤)

(輪花縁無文盤)
サンカンペーンで輪花縁は多くはないものの、ときどき見かけることができる。その刻み幅は狭いものから広いものまで、バラエティー豊かである。
(無文盤)

(印花双魚文盤)
口縁とカベットの一部に釉剥げが認められる。いずれにしてもサンカンペーンでよくみる盤である。
(印花日輪文ないしは印花ピクン花文盤)
サンカンペーンでは、この手の印花文様を多々目にすることができる。他の北タイ諸窯では、この手の鉄絵文は多いが、印花文はほとんど見かけない。

(鎬文盤)
この鎬は白化粧土で覆った後に刷毛を用いて、所謂打ち刷毛目の手法で、文様を作り出したもので、サンカンペーンでは比較的多く用いられた手法である。当該手法は、スコータイやシーサッチャナーライ、更には他の北タイ諸窯では見かけないことから、サンカンペーンのオリジナリティーか、どこかに淵源があるのか?
(鎬文盤)
この盤もカベットに鎬文様が施されている。箆で鎬状に掻き落としたものか、上に掲載した盤のように打ち刷毛目の手法なのか、見分けにくいが上端と下端の端が揃っていることから、打ち刷毛目の手法と思われる。




                                   <続く>



閑話休題:WI-FI後進国・日本

2016-11-06 08:14:52 | 日記
当該ブログを御覧頂いている各位の地域WI-FI環境は、如何であろうか。我が田舎は、イオンモールの一部フロアー、一部のコンビニ、2箇所のスタバがWI-FI Free環境で、あとは何処かと思いつかず、結局極一部でしかフリーで使うことはできない。
そこでタイ王国である。突然タイで恐縮であるが、タイとマレーシアのWI-FI環境しか、知らない為である。
チェンマイ田舎でも、空港は当然としてコンビニ、スーパーやレストラン等々の人が集まる、建物や施設の多くがWI-FI Freeである。ところがチェンマイで経験していないWI-FI環境にイサーンの田舎でであった。
それは、先般行ったプラコンチャイからコラートへ戻る、ソンテゥ(乗合いタクシー)の車内のことである。先ず写真を御覧頂きたいが、画面が暗くて恐縮である。
フロントガラスの上にA4サイズで、SSIDとアドレスが記載されている。ソンテゥは100km前後で飛ばすので、当該ブロガーのような小心者には気が気でなく、WI-FIどころの騒ぎではないが、同乗のタイ人乗客は悠然としたもので、一心にゲームに興じている。う~ん、ソンテゥまでWI-FI Freeとは・・・。
翻って日本。TAXIがWI-FI Freeとなっているとは聞かないが、どこかのTAXI会社は遣っているのか?
訪日外国人4000万人が目標とか。彼ら外国人の日本での印象は評価が高いが、大きな不満としてWI-FI FreeのSpotが無いとの不満である。遣りたければ、通信料を払えとの態度である。通信会社のみ優遇する政策は如何なものか。
もっと政府が圧力をかけても何ら問題がないと思うが、主導してWI-FI Free網を完備して欲しいものである。
タイ王国には申し訳ないが、後進国タイに劣る我が日本のWI-FI環境、インバウンド人数どうこうの前に、環境整備を行って欲しいものである。

以下、どうでもよいような話しである。インターネット・オークションを覗くと、<タイ北部・サンカンペン鉄絵双魚文鉢>なる盤が出品されている。鉄絵の一部が後絵との注釈入りである。
一部どころか、全てが後絵のように思われる。所謂犬の餌鉢に後絵をしたものではなく、白化粧後それが乾かないうちに、カベット部分に箆で放射状の鎬を入れた盤に、後絵を施したものである。後絵がなければ、当該ブロガーもコレクションしたいのだが・・・。後絵かどうか、当該ブログに見分け方を何度も掲載してきた。後絵の盤を収集するのが趣味のコレクター以外は、賢くなって欲しいものである。しかし、考えようによっては元がよいので、後絵と理解すれば、資料的価値はありそうだ。




シリーズ⑨:サンカローク陶器博物館:その7

2016-11-05 15:55:38 | 博物館・タイ
<続き>

●請来陶磁

順不同の紹介で恐縮である。中世のスコータイ王都やシーサッチャナーライさらにはカーンぺンペッ(ト)などの重要都市に、請来された陶磁も併せて展示されていた。それらは中国陶磁と安南、ミャンマー陶磁である。いずれも優品揃いであったので紹介しておく。
(景徳鎮:青花牡丹唐草文双耳壺)
中國陶磁については素人で、知ったかぶりのコメントはできないが、何んと立派な元染であろうか。出光美術館が所謂酒会壺を所蔵するが、写真の類品は日本の美術館、博物館は所蔵していないのでは?・・・と思われる。これに似た双耳壺は、大英博物館で見た覚えがあるが、これが2点目である。
(景徳鎮:青花果実文盤)
当該ブロガーには洪武様式か永楽様式か判断できないが、明初の染付の大盤で、これも見事なものであった。
中国陶磁愛好家なら一発で分かるであろうが、当該ブロガーには?である。このような形の瓶を何と呼ぶのか?人物文の様子から明中期と思うが、自信度ゼロである。
ミャンマーからの朝貢品と記されている。例の錫鉛釉に緑彩を施したものである。最近のバンコク大学発刊のニュースレターによると、ミャンマーのモッタマ近郊で、緑彩陶磁の窯が発掘されたとの速報である。続報がまたれる。
仏陀の頭部であろうか?それとも観音の頭部であろうか? いずれにしても亀有の両さんよろしく、左右の眉が繋がっている。う~ん、モン(MON)族の顔にしか見えないのだが。
(ミャンマー:錫鉛釉緑褐彩人物塼)
5人の女性が描かれている。視線は1点集中ではなく、各人バラバラで、中央の女性のみ、膝に弦楽器を携えている。なぜ5人なのか、思い浮かばない。多分ラーマーヤナかマハーバーラタの一場面と思われる。
(ミャンマー:錫鉛釉緑彩鳥文盤)
鳥は聖鳥ハムサ(ハンサ)と思われる。当該盤の絵付けは1点もので、二つとして同じものはない。よっぽど豊富な知識と絵心がなければ、できた芸当ではない。
(安南:青花牡丹唐草文四耳瓶)
う~ん、これも最高傑作の部類か?獅子耳が4カ所についている。安南陶磁についても素人だが14世紀頃か?
(安南:五彩龍・火焔宝珠文瓶)
盤口のような口縁に梅瓶に似た大きな瓶で、これもうなりたくなるような優品である。龍は四つ爪で、安南陶磁に四つ爪は多い。本家中国に遠慮したのか?
(安南:緑釉魚文盒子)

(安南:青磁印花文鉢)
文様が何であったのか、思いだせない。写真も不鮮明で印花文のみの表記とした。
(青磁印花牡丹唐草文鉢)
蛇の目の釉剥ぎが在るのか無いのか、それとも高台跡なのか判別しにくいが、安南陶磁には重ね焼きのための釉剥ぎが存在する。それらの鉢や盤を見ながら、なぜかスコータイやシーサッチャナーライの陶工は、それを真似ようとしなかった。

スコータイ王国への朝貢品とある。流石にその通りで優品揃いである。それにも増して当該コレクション・オーナーの優れた鑑識眼が伺われる。




                                    <続く>






シリーズ⑨:サンカローク陶器博物館:その6

2016-11-04 08:33:00 | 博物館・タイ
<続き>

●シーサッチャナーライ:バン・パヤン陶と焼成具

今回は、当該博物館展示のバン・パヤン陶磁を紹介する。建築用材や屋根飾り、守護神やナーガ、マカラなどを焼成したと云われている。
展示内容は、まさにイントロ通りで、中央に上半分が不明な陶像が展示してある。夜叉であろうか?何かの守護神である。
写真のケンディーや蓋つきの比較的大きな盒子も焼成されたようである。見た目、鉄絵の発色もよく、欠損もない優品である。
バン・パヤン陶磁として展示されていたものは以上で、人物肖形も焼成されていた。

バン・パヤンの展示物が少なかったので、シーサッチャナーライとスコータイ窯の焼成具を紹介する展示があったので、それについて紹介する。
所謂トチンと焼成台(筒や棒状焼成具)である。トチンは5点の突起が付くので、焼成された盤や鉢には、5点目跡がつくことになる。これでは外観上劣ると考えたのであろう。そこで焼台が登場することになる。特にシーサッチャナーライの青磁盤や鉢の高台底に焼台の跡が残っている。


焼成効率を上げようとすると、どーしても溶着や、焼台からの落下が発生する。匣(さや)を使えばよさそうだが、シーサッチャナーライとスコータイに、その形跡はない。余談であるが、パヤオでは匣を使った焼成も行われていた。




                                  <続く>