このところ(株)村田製作所の工場増設Newsが相次いでいる。いずれもMLCC(積層セラミックコンデンサー)の工場建屋である。先日(11月7日)には、無錫村田電子有限公司第2プラントへ工場建屋を増設(ココ参照)するとのことである。要約以下の内容である。
『中国の生産子会社である無錫村田電子が、新生産棟の建設を同年11月1日に開始したと発表した。積層セラミックコンデンサー(MLCC)の中長期的な需要を見据え、MLCC向けシートの生産体制を強化し、安定的に供給することが狙いだ。投資総額は約445億円で、完成は2024年4月を予定している。新生産棟の建築面積は、倉庫棟なども含め1万1763m2(生産棟の建築面積は6557m2)。延床面積は5万1289m2(生産棟は2万7140m2)である。村田製作所の広報担当は「当社グループにおいて、MLCCを含めた全製品の国内生産比率は60%超である。2021年11月にはタイ(ココ参照)で、2022年3月には出雲村田製作所(ココ参照)で、それぞれ新生産棟の建設を開始しており、中国に限らず国内外での生産拠点の強化を行っている」と語った。
Covid-19の影響、主として中国のロックダウンから民生用機器生産、自動車産業の半導体不足などから、2022年の需要は減退すると見られるが、中長期的には電子部品の需要拡大は確実なことから、今の内に増産体制を固める狙いと思われる。
広報担当が発言したそうであるが、MLCCの国内生産比率は60%を維持していると思われる。海外では中国・無錫、フィリピン、シンガポールの3拠点、出雲村田製作所(IMC)はその3拠点のマザー工場である。2017年にTV新広島制作の『そうだったのかカンパニー』に取り上げられ、当時の益田喬事業所長が語るところによれば、年産数9000億個とのこと。2017年当時であるので2022年のこんにちは月産1000億個で、工場出し単価は30-20銭程度と思われる。
村田製作所のMLCCについて懸念がひとつ。民生用は世界シェア40%が示すようにOKだが、産業用が今一つである。自動車を含め産業用を如何に伸ばすのか、やはり技術力を高め価値ある新製品開発しかないであろう。
過日、Googl Earthを見ていると、Murata Electronics Thailand(MTL)の新プラントの建築過程が伺える映像に変わっていた。それが下の写真である。
赤線の太枠内の敷地に細線の枠で示したのが、工場建屋の輪郭である。Googl Earthのスケールで測定すると長辺は300mを越えている。上掲Googl Earthの右下の現工場建屋と比較するとずいぶん大きい。大きさで云えばグローバルスタンダードになってきた。
当該ブロガーがタイ好きになったのは、1995年から4年半にわたり当地に出向したときに始まる。当時女性従業員の給料は1日当たり100B辺りだったと記憶しているが、賃金上昇は時間の問題と認識していた。当時、生産技術部門はなく、赴任してから立ち上げた。部品は全て、各製造部門の日本のマザー工場からの輸入にたよっていたが、高い部品を輸入していたのでは割にあわない。そこで現地調達に切り替えることから業務スタートした。
残念ながら高精度部品は、当時のBKKでも困難で、シンガポールから調達。いつしかBKKからの調達も可能になったが、悠長さには耐えがたくMurata Electronics Thailand(MTL)にマシニングを導入し内作をはじめた。MTL進出の動機は低賃金目当てもあったが、いずれ行詰まる。生産性向上の為の合理化設備をMTLで内作する必要がある。チェンマイ大学工学部卒の新人を毎年4-5人単位で採用し、設備設計部門を立ち上げた。
過日、MTLが2018年に公開したVTR(ココ参照)を見た。それによると2018年当時の従業員数は6800名とのこと。2022年では8000名を超えていると思われる。そのVTRには苦労して立ち上げた生産技術部門の映像も流れていた。
見ると、それなりの設備設計と設備製作ができるようになった様子が伺われる。上掲は設備組み立ての様子である。
村田製作所は商品(製品)生産は自社設備との伝統が存在する。それをMTLに移植したのだが、タイの人件費上昇の対応はそれなりにできる体制ができたことは、喜ばしいかぎりである。
今日、対$Rateは150円にもなった。かつて低賃金を求めて多くの日本企業が東南アジアに進出した。今日では日本における労務費と海外それに差はなくなった。日本回帰の時がきたのである。政府は優遇策を設けるべきだ、日本に回帰し設備投資、なかでも生産性向上投資は、思い切った投資減税策を取るべきだ。ここで思い切った生産性向上投資をすれば、差をあけられつつある韓国や、躍進著しい中国にも対応できるであろう。トヨタが次世代半導体開発のため国内8社連合を組織したとのこと。電子部品メーカーの各社間競争も良いが、ここらで連合して次世代デバイスを共同開発してはどうか。とにもかくにも電子部品は世界のTOPを走り続けなければならない。
最後はMLCCの話しから脱線してしまったが、政府は画一的な政策をすすめるのではなく、切るべきは切り伸ばすべきは伸ばす政策をとって欲しい。
<了>