昨日岐阜地裁で、ある判決があった。70歳の老婆が98円の消しゴム一個万引きしたとして、懲役2年の実刑を下したのである。この老婆は万引きの常習犯で、この一月に刑務所を出所して、生活保護を受けてアパートで一人暮らしをしていた。石川県に長男がいて、月に数回「元気にやっている」と手紙を出していた。手紙はいつも鉛筆で下書きしていたので「消しゴムがあったらいい」と思い、近くのスーパーでポケットについつい入れてしまったところを捕まった。逮捕後、スーパーの店長や検察官、弁護士に「二度と悪いことはしない」と手紙を書いたが、結局消しゴム一個で2年の実刑判決となった。判決を下した宮本裁判官は「被害は小額だが、手慣れた犯行で実刑はまぬがれない」とした。しかしなあ、っと思う。裁判官はいくら法秩序のためといっても、ちょっとマニュアル通り過ぎやしないだろうか。欲からくる万引きなら、消しゴム一個どころか、一万円相当くらい盗むだろうし、これは欲からではなく、万引きのビョーキでしょうよ。まして我欲からではなく息子に手紙を書くための消しゴムであり、ついついビョーキが出たということでしょう。まして70歳の高齢、せめて執行猶予をつけるぐらいの大岡裁きがあってもいいのではないだろうか。裁判官はいわばエリートの人生、法秩序を錦の御旗にこの老婆の悲しい人生など解る余地もないのだろう。権力者は常に強きを助け、弱きを挫く。公的資金だって、大企業には注入して助けるが、中小企業は倒産をヨシとする。また、昨日も鶏卵生産者の大会に野党議員も来賓として呼んだら自民党の族議員が怒り出して、農水省の幹部が「自民党が怒っている。大会を中止しなければ、卵価予算(補助金)を打ち切る」と脅しをかけたという。権力者側というのは、常に体制を維持するために、脅しをかけたり、弱いものイジメをする。それにしても消しゴム一個で、老婆はまた2年間も刑務所暮らしか。権力がむき出しになると、ささくれた世の中になるものだ。