新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

我が国が心配になってきた

2018-08-22 08:18:10 | コラム
そもそもそういう国だったのか、それとも急速な劣化か:

私はこれまでに何度か元某大手製紙会社の社長だった聡明な経営者が現状を評して「経営者の劣化だ」と言われたと引用してきた。その頃は多くの団塊の世代の方々が経営担当者(私は彼らは自前で会社を経営しているのではないので、こう呼ぶことにしていた)になっておられた頃だった。これ以上何らかのことを言うと、この世代の方々から強烈な反発が来るのでこの辺までにしておこう。

私は1970年夏に、生まれて初めて東南アジアの4ヵ国に出張する機会を得て、初めて自分の国とは別の世界を見る機会を与えられた。71~72年には韓国にも出張する機会を得た。非常に有り難いことで、大いに広い世界の一部を勉強をさせて貰える機会となった。そこで見た驚きの現象は法規制などはあって無きが如きにしてしまう力を持った人たちがいることと、いざとなれば金がものを言う世界があったという事実だった。我が国ではあり得ないことだと信じて良いと思っていた。

現実に痛い思いをさせられたことがあったが、それは韓国から輸入した和紙(我々は「ワガミ」と呼ぶのだが)の原料が、収穫し梱包する現場まで出張して中身を検品したにも拘わらず、実際に到着した現物はまがい物が半分ほど混入していたことだった。信じられないことだったが、これがこの世の現実だと痛烈な学習をさせられたのだった。我が国では起きることがないことだと思っていた。

ところがである、何年前だったかに東洋ゴムだったかが出荷する製品の物性値の表を改ざんしたという事件(なのだろう)が発生したが、私も(世間も?)も一過性の単発の悪意なき事故だと思っていた。いや、我が国の上場企業がかかる犯罪行為をする訳がないと思ったし、そう思いたかったのが偽らざるところだった。少なくとも、私が知り限りのアメリカの製造業の大手はこのようなインチキはしないと信じていた。

だが、それは思い違いだったようで、その後に先ず神戸製鋼で矢張り物性値の検査の表の数字の改ざんは行われていた。その頃に聞こえてきたことは「データは虚偽でも現場では問題を起こしていなかったから・・・・」だった。信じがたいというか恐れ入った正当化だった。「何だよ、これは」という思いだった。だが、その後につい先頃のスバルに至るまで多くの業種でまともであるべき上場企業が虚偽の物性値の表を作ったり製品の検査で手抜きをしたりしていたことが判明した。そこでも、需要先の現場で致命的な事故は起こしていないという声があったと思う。

私は「これでは我が国に東南アジア、北アジアその他の国を批判する資格があるのか」という誠にやるせない思いで、憂鬱にもなったし悲しくもなってしまった。「技術と品質の日本」は何処に消えてしまったのかと嘆いていた。「この有様では長年批判してきたアメリカの製造業における労働力の質の低さなどを云々する資格などないのか」と身の置き所が見えなくなってしまった。「矢張り経営者が劣化すると、現場もそれに倣ってしまうのか」と嘆いた。マスコミの騒ぎすぎも非常に気懸かりになった。喜んで世界に喧伝すべきことかと彼らに尋ねたい思いだった。

ところがである、事態はこれだけに止まらなかった。「まさか」と思わずにはいられなかった霞ヶ関の中央官庁で次官級や局長級の官僚が収賄事件や自分の子息の裏口入学をさせていたという犯罪行為が出てきたのだった。一寸きつい表現をすれば「これでは我が国にアジアの諸国の法規制の無視を批判する資格などないのではないか」と言うしかないと落胆させられたのだった。人には皆かかる裏の面があるのは当然であり、起こるべくして起きた事件だったのかとも思わずにはいられなかった。

ここまで来ると解らなくなったことがある。それは「我が国はそもそもそういう程度の人物が上に来られる程度の国だったのか」であり「営業成績を挙げる為にはデータ表の一つや二つ改ざんして何処が悪い」と思い込んでしまえるような会社があるのかという疑問だ。いや、人とはそもそもそういう悪事に手を染めたがるものだが、高度成長が止まり2%のインフレすらも達成できなくなって給与も上がらねば、かかる最悪の手段に訴えても何とかして何処が悪いとでも思う奴ばかりなのかと言うこと。

それとも、思うように業績を伸ばせないような能力が低い者ばかりが育ち且つ蔓延ってきた社会になってしまったのかという疑問まで生じた。忌憚なく言えば「我が国そのものが劣化したのか」という意味である。私は製造業の失態もさることながら、マスコミの質にも極めて問題があると思っているし、政治家というか国会議員たちの質(の劣化?)も問われて然るべきだと思っている。自民党にも問題なしとはしないが、野党の質は酷すぎて論外ではないのか。

悲観論者の私が世相を見れば、このように否定的になってしまうが、我が国にとって負の要素というか要因は海外にも溢れているのではないか。今は自民党の総裁選挙がどうのとか、国民民主党(だったか?)の代表に誰がなるかなどはマイナーリーグ・イシューだと思っている。我が国をつい最近まで歩んできていたまともな軌道に可及的速やかに戻すことが喫緊の課題ではないのか。



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