新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

東京都の「カスハラ防止条例案」の考察

2024-05-23 08:05:04 | コラム
カストマーハラスメント(カスハラ)を考えてみれば:

今週、東京都が数多く発生する所謂「カストマーハラスメント」(カスハラ)を防止すべく条例案を策定したとNHKが下記のように報じていた。

>引用開始
客からの迷惑行為などのカスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」を防ぐ全国初の条例の制定を目指す東京都が、客のほかに、役所の窓口を利用する人などもカスハラを行う対象とし、官民を問わず対策を求めるとする素案を取りまとめたことがわかりました。

全国初のカスハラを防ぐ条例の制定を目指す東京都は、これまでにカスハラを「就業者に対する暴言や正当な理由がない過度な要求などの不当な行為で就業環境を害するもの」などと定義づけるとともに、罰則は設けない考えを示しています。(以下略)
<引用終わる

「尤も考え方だろうな」とは思って聞いた。実際にそういう場に出会う経験などなかったが、役所の窓口で係員に向かって暴言を吐くことや、甚だしきは鉄道の駅で係員を殴打するような輩から担当者を防御しようというのが東京都の意図だと読める。

だが、テレビにニュースで流されている例には「タクシーの運転手さんに向かって暴言のみならず悪口雑言を浴びせるだけに止まらず、暴力を振るう、料金を踏み倒す」とか「旅館の対応に苦情を言うだけではなく謝罪の土下座を要求した客の場面のような例」なのである。このような悪行というか卑劣な行為は“harassment“の範疇を遙かに超えている犯罪であると思う。役所の窓口での暴言にしたところで同様ではないのか。

自慢にも何にもならない話だが、私のような業界でも「直ぐに怒る人」と定評があった短気な性格の場合に、仕事の面での多忙さ為に、何らかの欲求不満となっていたか、精神的乃至は感情的に緊張が募っている時(ストレスのことだ)には爆発して、他人様に向かって怒鳴るとか当たり散らすことがあり、顰蹙を買っていたものだった。このような恥ずべき行為が“harassment”ではないのかと理解している。

先日も取り上げたことで、我が国では既に「パワーハラスメント」に対する条例まで設定されているそうだ。このような「権力の濫用」(=abuse of power)は「カスハラ」とは異なる面が多いと思って聞いて(見て)いる。それは「上司が部下を叱責することをハラスメントである」とする傾向があるとかで、これでは迂闊に昇進して部下など持たない方が良くなるのかもしれない。

私が「厄介なことを決めようとしているのではないのかな」と思ってみているのだが、その訳は「上記のようなかなり幅広い概念というか現象を、カタカナ語を使って一括りにして定義してしまい、該当する行為しないように注意せよ」と決めるのは如何なものかと思うからだ。即ち、harassmentの標的にされた人が「サラリ」と受け流せば何でもなくなるが「とんでもない大迷惑な不当な行為だ」と憤慨されれば立件されてしまうだろうから。

私の経験では、工場の事務方の重要な案件の処理が遅く、我が国の得意先から強硬な苦情を申し立てられた時に、その事務方を電話で「事務処理の遅れで我が社が危うく信用を失うところだったし、私は顔を潰された。反省せよ」ときつい口調で叱りつけた。すると、彼はなんと副社長に「彼奴に不当に責め立てられた」と訴えたのだった。

副社長から「何を言ったのか」と直ちに電話が来たので、「事務方には言われた期間内に速やかに処理する責任があると知れと言った」と、詳細を説明した。彼は「解った。工場の事務方には俺から説明しておくから、忘れても良い(You may forget it.)」となった。思うに、事務方はきつい言い方からharassmentを受けたと考えたのだろう。反省点は「言うべき事を言う場合でも、表現に気を付けなければならない」だった。

終わりにカタカナ語排斥論者兼英語評論家から一言。「カストマーハラスメント」=customer harassmentではカタカナ語として理解されているようだが、英語としては宜しくないのだと思う。行為の当事者をcustomerと言いたいのならば、harassment by customerとでもしないと意味を為さない。また、理屈を言えばcustomerは「商店か企業の顧客」の意味であり、役所に用事があって訪れる方はその範疇には入らないと思うのだ。

でも、最早「カストマーハラスメント(カスハラ)」が日本語に戸籍を得て通用してしまっている以上、「使いたい人が使われることを阻止しようとはしない」のである。だが、「カタカナ語を創る場合には、チャンと英語の意味を理解してからにしたら如何か」と言って終わろうと思うのだ。


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