新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

第2回目のトランプ大統領対金正恩委員長会談の文化的考察

2019-03-02 10:14:00 | コラム
文化と思考体系の違いが現れたのではないか:

ここでは、私の得意とする「2国間の文化と思考体系の違い論」に基づいて考えて見たい。先ず言えることは「トランプ大統領も金正恩委員長も、事前の打ち合わせをしていた実務者たちも(working groupとか言っていた)今回のような重要にして非常に激しい討論となる国際的な交渉事には未だ経験も少なく、不慣れではなかったか」と思っている。

私は嘗て我が国ではアメリカとの交渉が政治の場でもビジネスでも屡々決裂に近い状態になるのを見て「あれでは目隠しをしてボクシングをやっているのと同じ事で、相手が如何なる者たちかを全く認識せずして、自分たちだけの固有の手法でお互いに交渉するのだから、良い結果を生まないのは当然だ」と評してきた。

この度のアメリカ合衆国対朝鮮人民民主主義共和国(DPRK)の首脳の会談も上記の場合と似ているような気がするのだ。即ち、これまでに両国間には国交もなければ人的や文化・文明的な交流もなかったのだし、両首脳も言わば命を賭けて国の為と自分の為にギリギリの交渉をした経験もなかったようなので、相手の物の考え方や交渉術や出方等々のスカウティングが不十分なままに、相互に自分の主張をぶつけ合ったのではないかと見ていた。

それだけに止まらず、言うまでもないことでDPRKは今や世界に数カ国しかない共産主義国であり、金王朝3代目の当主である金正恩委員長は自らの立場を守る為には側近だった叔父を粛清しただけではなく腹違いの兄をも殺害している人物だということ。トランプ大統領はそういう事実をご存じだったとは思うが、彼の作戦ではこういう相手に対してでも“fell in love with him”などとおだてて見せていた。私はこの作戦には疑問を抱かざるを得なかったのだが。

私が採り上げたい次なる要点は「経験不足ではなかった」という問題だ。トランプ大統領と金正恩委員長は昨年の6月に会っただけで今回が2度目の顔合わせでは、お互いに相手の性格や性癖や物の考え方等々を何処まで把握できていたかという疑問でもある。更に、トランプ政権下では熟練した外交官が不足しているという説もある中で、会談に向けて周到な準備を整えていたはずのworking groupも、何処まで熟練した交渉術と外交的手腕があったかということ。

ここで些か我田引水だが、我がW社の事業部のことを振り返ってみよう。副社長兼事業部長以下のテイームは日本市場の担当を10数年も続けてきたので、日本市場の難しさを認識できていたし、アメリカ市場との違いも十分に弁えていた。更に、私も彼らに「相互の文化の違いを認識せよ」と言って「文化比較論」を解説してきた。そういう積み重ねがあったからこそ、我が事業部は#1の対日サプライヤーの座を獲得できたし、90年代初期にはW社自体がアメリカの企業の中では対日輸出でボーイングに次ぐ第2位の会社となり得たのだった。

私はDPRKが対外国交渉にどれほど馴れているか、またはあのような重大な会談でトランプ大統領を説得できるだけの対アメリカとの交渉の「ノーハウ」を心得ているかは知らない。だが、結果的には大統領と国務長官に“walk“されてしまったではないか。そういう意味では、ポンペオ国務長官もどれほどの「外交官」だったかという疑念も生じる。私には何となくCIA長官が対DPRKの交渉の場に出ておられるような気がしてならない。

なお、早稲田大学教授の中林美恵子氏は「アメリかではあの結果では成功であったと看做されている。即ち、トランプ大統領は一部で懸念されたいたような譲歩をすることなく終わったのだから」と語っていた。



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