新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

続×3アメリカ合衆国では

2024-08-24 07:57:06 | コラム
会社の在り方が我が国とは違うのだ:

“company”を「会社」としてしまったので、アメリカと我が国の会社の「文化」または在り方にはたいした違いがないような感がある。だが、実際にその中に入ってみれば解ることなのだ。だが、大小取り混ぜて違いが多い事は我が国では余り広く認識されていないようだ。今回はその違いを取り上げていこうと思う。

*“flat pay”:
「平らな支払い」とは何の事かと思われるだろう。これはアメリカでの一般的な給与の形態で「本給のみで諸手当は一切無し」なのである事を示している。我が国の制度というか給与の形態とは全く異なるという意味である。

そこで、AIでは何と言うか試してみた。そこには「flat payという表現は、一般的に「固定給」や「定額給」を指し、基本給のみで手当が含まれない給与形態を意味します。」とあった。より具体的に言えば「役職手当、交通費、残業代(過勤手当?)、住宅手当等々は無いというか、本俸に含まれているとの解釈にもなるか」なのだ。

*社宅は準備されていない:
嘗て、技術者たちと我が国の大手製紙会社の工場を訪問した時のことだった。工場の周囲に恰も城壁ようにアパート群が取り囲んでいる風景を見たアメリカ人たちは不思議がって「あれは何だ。何で街から外れた場所に多くのアパートを建てたのか」と尋ねてきた。

そこで、「あれは社宅といって転勤してくる社員の為に会社が用意して住居であり、通勤等の便宜を図っているのだ」と説明したが、アメリカ人は即座にその意味が理解できなかった。

簡単に言えば「アメリカでは住居は社員が自分で手当てするべき性質で、会社は関与しないから」で、我が国の制度とは異なっているのだ。「転勤してきて入居する社員は某かの家賃は負担する」と説明したところ、「会社はそこまで福利厚生を考慮してくれるのか」と羨ましがった者もいた。それに、事業部の中でも、転勤は滅多にないこと。特に後述する「専門職」で採用した者を転勤させてどうするという事でもある。

*大学からの新卒者の定期採用制度は無い:
この件はこれまでに何度も取り上げてきた相違点である。これは製造業の会社でのことで、銀行と証券界では4年制の大学の新卒者を採用していると聞いている。従って、新卒で入社してきた者たちを教育して、社風に馴染ませるという考え方はないと言うこと。では、新卒者はどうするのかは、既に述べたことがあるし、本稿とは別な話題である。

*段階的に昇進する制度は無い:
この点も我が国との大きな違いである。即ち、年功序列と成績次第で順を追って役職に就けていくという考え方がないのである。と言うよりも、中途入社の経験者を言わば「job型雇用」で専門職に就けていくのだ。他社から転進して来る者たちに序列をつけようが無いし、専門職に就けた者を役職者に任命するという制度も考え方も又ないのである。

即ち、事業部長の下は全員が横一線であり、彼等の中から事業部長に昇進した例など見たことがなかった、そういう地位は多くの場合に、一流大学でMBA等を取得した者たちが占める席なのだから。換言すれば、我が国のように課長代理から課長を経て部長に昇進し、更に取締役に昇進する制度ではないのである。

*人事権は事業部長にある:
と言うことは、我が国のような人事部も勤労部もないのである。即戦力となる経験者の新規採用は事業部長がその権限で実施するのだから、人事部があっても介入し得ないのだ。その中途入社してくる他社での経験者の給与は、事業部長との話し合いで決める。

*個室制度:
この制度はその会社で異なるようだ。M社でパルプの副社長の個室で「凄いofficeですね」と賞賛したら「このofficeに入れるまで何年かかったか考えて見ろ」と言われた。個室で執務できるのは、長年の功績に対する論功行賞だったのだ。確かに、Weyerhaeuserでもパーテイションによるofficeであっても、副社長ともなれば人工湖に面した窓辺であり、広くて調度品も違っていた。

Weyerhaeuser Japanではマネージャーにはパーテイションで仕切られた個室が与えられていた。経験からも言える事は「個室の中では外部と別れているので、個人的には事務能率が促進されて効果的だったと認識していた」のだ。各人が異なる事業部に所属し夫々の任務を遂行している以上、他のマネージャーたちと隔絶していても支障は無かったのであり、意思疎通の必要も無かったのである。

個室制度は矢張り「個人の主体性尊重」の国のシステムだったのだと理解している。


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