新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

トランプ大統領の政治手法を考えれば

2019-05-08 08:06:16 | コラム
「アメリカファースト」を強力に推進しておられるのだ:

6日夜のPrime Newsに「外務省同期」ということで3人のOBが登場された。その1人だった田中均元審議官は「こういうことを言うのは良くないかも」と前置きして遠慮気味に「トランプ大統領は不動産業界のみの経験で政策を推進しておられるようで、全般的に通暁しておられるようではない」という意味の事述べていた。確かにそういう疑念を抱いている人は多いと思うし、私は就任当時から「本当にご存じないのか、あるいは何もかもご詳細にご承知の上で知らぬ振りをしておられるのか」と述べたことがあった。

私は特に国際的な貿易取引については、実際に経験されていなかったトランプ大統領はそれ故に大胆な政策を打ち出されたのだと思っている。その推し進め方がやや強引であり、我がW社ジャパンOBで(90歳)私如きが遠く及ばないアメリカの経済界やビジネス社会の文化の相違点に通暁しておられる長老がいみじくも昨年春に

「トランプ大統領は本当は何かもかも承知でありながら、何も知らないかの如くに装っているのか、あるいは知らぬが故の強みで未だ嘗てどの大統領にも出来なかった難題を次々に実行しているのかが、遺憾ながらこの俺にも読み切れない」

と指摘されたように、あの独断専行で単純明快な実行力と強引とも見える政治手法は、かえってアメリカという国の事情に精通されている人ほど読み切れないような事態を招いているのである。私も既に指摘した「中国からの輸入品の関税をかけた結果で財務省にドンドンと現金が入ってきている」と発言された辺りを見れば、International tradeについては良くご存じじないようだと思うに至っている。

私は対中国の貿易赤字削減対策として関税の賦課を開始されて貿易戦争に突入され、その先に中国をこの際徹底的に叩いておくとの作戦に打って出られたことは歓迎すべきだし、支持すべきことだとは考えている。だが、中国との通商交渉を開始され中国が受け入れる3月末までと期限を切られて迫られたにも拘わらず期限を延期されたかと思えば、今度は来たる10日からは25%への引き上げをTwitterで表明された。これぞ英語で言う“short notice”の中の“short notice”だと思った。

結果として世界全体に、先行きの見通しの不安さから、Twitterの直後から当然のように株安が始まってしまった。しかも、関税率を引き上げてからでもアメリカの対中国の貿易赤字が目に見えて減少はしていないと報じられている。なお、UKのFinancial Timesは昨年の4月に「貿易赤字を国の損失と看做すのは誤りだ」と批判したことは先日採り上げた。私は誰が何と言って批判しようと、トランプ大統領が中国以外の諸国との貿易赤字削減という公約を実現させるという旗は降ろさないと思っている。

そこに厳然としてある「アメリカファースト」というスローガンがあれば、方針変更がないだろうが、私はトランプ大統領はその政策が世界全体の景気の動向や経済に如何なる影響を与えるかに何処まで配慮されるのかが気懸かりなのだ。恐らく、トランプ大統領は再選を目指しておられる以上、公約である「貿易赤字削減」を推進し続けられるだろう。その他にも輸出を増やせという旗も振られるだろう。

だが、私はもしかするとトランプ大統領の赤字削減策が功を奏した時には、中国、メキシコ、ドイツ、我が国といったような諸国が皆不況に沈み、アメリカからの輸入を受け付けられるような景気を維持できていない状態になってしまっているのかも知れないと、密かに懸念しているのだ。英語には“I could be entirely wrong.”という表現があるが、私の懸念が杞憂に終わることを望みたいのだ。



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