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新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

英語の品格(dignity)を考える

2025-04-27 08:07:29 | コラム
品位のある英語を身につけよう:

 アメリカ合衆国第47代大統領のドナルド・トランプ氏は[「教養ある立派な方であるはずだ」と誰しもが期待していてもおかしくはないだろう。現実には、トランプ氏は自分の岩盤の支持層である中流以下と言うか、自身でworking classと呼ばれた労働組合員の人たちに向かって語りかける時には、品格を疑うような表現も平然と使われるし、言葉遣いにも大いに疑問を感じさせられるのは、外国人である私でも困ったお方だと思わざるを得ない。

しかし、外国の要人も参加されるような国際的で公式の席などでは、アメリカ大統領に相応しい言葉使いで語るようで、明らかに語りかける相手次第で言葉遣いを区別され使い分けておられる。更に、X(旧Twitter)での表現にはとても大統領とは思えない言葉が当たり前のように使われるのは、『品位』の点では「如何なものか」と言わざるを得ない。

そこで、本稿では「英語の品格」とは如何なるものかを考えてみようと思う次第。

言葉の品格:
品格または品位がある英語とは「英語ならぬEnglishを良く勉強して文法を間違えることがなく、下品な表現や言葉とはどのようなものかを弁えている事」である。即ち、「汚い言葉を使った表現や、文法的に誤りがある表現を使って語り且つ文章を書くような事はしない事」なのである。その次元に到達する為には中でも注意すべき事の一つに「汚い言葉」と訳されている“swearword”等は絶対に遣わない用に心掛ける事がある。

 我が国の学校教育の英語ではこのような致命的に品位を欠く言葉や、それとslang=俗語(乃至は符牒か隠語)との違いなどは教えるような仕組みになっていないようなので、海外に出た時などに「斬新で素晴らしい表現」と思い違いしてswearwordに飛びついて真似をしてしまうことが多いので困る。

このswearwordは「これを使うと「社会的に下層階級」と見なさると知るべきだ。これは屡々”slang”と混同されているが、全く別な範疇にある言葉なのである。その例を少しだけ挙げれば”God damn it.”であるとか、“Shit.”や、”Oh, my God.”といった言い方である。非常に遺憾に思う事は、我が国の英語教育ではその点を周知徹底させるような仕組みになっていない点だ。上記したように、”slang”(俗語)とは全く別の範疇に入る下品な言葉遣いなのである。


恥を忍んで告白すれば、本社で副社長兼事業部長に報告している時に迂闊にもswearwordを一語使ってしまい「我が事業部の一員が私の面前で使うとは何事か。恥を知れ。今後私に向かって二度と遣うな」と厳しく叱責された事があった。

 ところが、そういう性質の言葉だと教えられたことがなかった人がアメリカに行って、そういう階層の者と出会うと、大袈裟に言えばswearwordの連発に出会うのだ。すると、そういう言葉遣いが何か物事を強調していう時などに便利に使えるし、そういう言葉を多用すると「格好が良い」と誤解して真似てしまう結果になるのだ。「swearwordとは如何なる言葉」を教えられていなかった人たちを私は責めようとはしたくない。その責任は学校教育が負うべき性質だから。

発音:
 品格の問題で留意すべき事の中には「発音を正確にしようと心がける」も入ってくる。先ず強調しておく事は「必ずしもnative speakerにも劣らない綺麗で正確な発音をするのではなく、相手が聞き取りやすいように明瞭に一語一語を発音する」という意味である。「表現が間違っていないかとか、相手に通じているか」などを気にせずに堂々と話すことが肝要なのである。

発音の中でも「アクセントを明瞭に付ける事も重要なのである。アメリカの英語ではKing’s Englishよりも単語におけるアクセントが強調されているし、文章の流れの中での抑揚(intonation)がハッキリしているので、感覚的にはリズム感があるのだ。私もアメリカ人の中で働くようになった初期には、知らず知らずの間に体を動かしてリズムを取って話そうとしていた。簡単に言えば、King’sの方が平板に流れているように聞こえるのだ。

さらに具体的に言えば、同じEnglishでも英連合王国(UK)、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドにはそれぞれ独自の発音と訛りも方言もあるので、その中のどの国の英語の発音を選ぶかは慎重を期したい、イヤ考えるべきではないかと言いたい。だが、我が国の学校教育だけで学んで英語の知識では「どれがどれだか俄に判断出来ない」のが宜しくないと思う。私は少なくとも、所謂“London Cockney”とそれにも似たところがあるオーストラリアとニュージーランドの訛りは避けた方が無難だと断言する方なのだ。

私は全世界でも(人口の比率から考えても)最も広まっているのはアメリカ式英語の発音だとは考えている。だが、ヨーロッパでは地理的な条件もあってKing’s Englishの発音が最も普及しているのは間違いない事実。私はアメリカとの縁が最も深かったので、アメリカ式に準拠しているが、現実にはアメリカ語と英連合王国式の中間になる発音をしているようだ。

 アメリカかUKかの何れの発音を心がけるかは、各人の選択にお任せするが、何れにせよ「きちんとした正確な発音が出来るように教えておくべき」なのである。だが、残念ながら、我が国で英語教育を担当しておられる方々には、そこまでの認識も自覚があるようには思えない。

不正確な発音になる例を挙げておくと日本人には“t”を正確に発音するのは困難なので、“I don’t know.”などのような場合に“t”の発音が難しくて「アイドンノー」のようになってしまう例がある。同じような音になる“d“も難しくて、dream等はカタカナ書きすると「ドリーム」なので、英語になると「ドゥリーム」としか発音出来なくなってしまう。私はこういう発音になってしまう原因に「ローマ字」の普及があるし、カタカナ語にも問題があると主張し続けてきた。

品格の点については、我々の問題にもなりかねないので、何とか正確になるように学校教育における配慮は必要〔改善と言っても良いだろう〕だと指摘したい。英語教育に携わる先生方にも、可能な限りの努力をして頂きたいと願っている。

貴方の英語の品格の落とし方:

この項目は「英語の品格」の補完である。英語の「会話」とやらの勉強を始める時に「“you know”という『句』(=phrase)を挟んではいけない」と教えられていないままにアメリカ人なり何なりの外国人の中に入って行くと、その人たちが属する階層によっては“you know”のシャワーを浴びせかけられることが多い。そこでは、その人物のお里が知れたと思うべきなのだ。品格のほどが解ったと思って欲しい。

これが何であるかを知らずにいるとswearwordで犯した誤解と同様に「何となく格好が良い」か「気取っているのか」と感じてしまうことが多いようだ。そして、真似てしまう結果となった例を数多く見て(聞いて)来た。紛う方なき誤りである。私はこれを「you knowを多用されることは、貴方が有能であることを証明しないのです。使えば有能ではないことになります」と繰り返して指摘してきた。先ず絶対に真似てはならない言葉遣いなのだ。繰り返して言うと、「私は知識階級ではありません」と自己申告したような結果になると知って貰いたいのだ。

実は、私が1945年に初めてGHQの秘書の方に英語で話すことを教えて頂くようになった時に言われた「心得のその1」は「英語のままで考える。日本語に訳そうなどとしない」、「何か話そうとする時に先ず日本語で考えてからそれを英訳しようとせずに、覚えている限りの英語を思い出してそれを使って話す」に加えて、

「何か表現が思いつかない時などには絶対に“you know”などと言ってはならない。精々“let me see“くらいにして、それが出てこなければエーでもアーでも良い」と厳しく言われた。要するに”you know“を挟まないようにという教えだった。その頃には、この意味は解らなかったが、後年アメリカ人の世界に入って初めてその価値が解ってきた。

 ここまでには「学校の英語授業では教えられた事など無い問題点ばかりを挙げてきた。だが、これらは実際にアメリカ人の中に入ってみれば、語り合ってみれば、当たり前に用に毎日聞かされる表現なのだ。故に、上述のような格調高きEnglishを身につけて、今日からでも如何にして自分が「有能」であるかを示すよう英語乃至はその会話の勉強に励んで頂きたいと願う次第。



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