新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

女子代表は何故オリンピック出場を逃したか

2016-03-08 07:43:47 | コラム
Jリーグやなでしこリーグ等の裾野が広がった功罪:

昨夜の対ベトナム戦ほど酷い女子代表の試合を見せられたのは初めてだった。冷静な評論家としては如何に戦評すべきかを考えながらテレビ観戦していた。そこで思い出されたのが、今を去ること30数年前に次男の小学校当時に少年サッカーの指導を依頼された時のことだった。これは学校から正式に依頼された訳ではなく、余りの弱さに憤慨して熱心な親御さんが「何とかならないか」と持ってこられた話しだった。

実際に引き受けてみて解ったことは熱心な先生が心意気と情熱で指導されたサッカーは、素人と言うのか本格的なサッカー経験者でなかった為の悲しさで、全く基本技を指導されていなかった事実だった。そこで親御さんたちにお断りしたことは「これから基礎になる基本技の練習に集中するので、試合をやりたがる子供たちには面白くないだろうが、ここをしっかりやっておくことが本当にサッカー上達の鍵を握っているので、子供たちに良く言っておいて頂きたい」だった。

そして、どれくらいの期間だったか基本技、即ちキック、ストッピング、トラッピング、ヘデイング、ランニング、パスの受け渡し等々を時間の許す限り集中的な練習を続けさせ、それがどうやら形になってきたところで初めてフォーメーションのようなものにも取り組ませるようにした。その間にも対外試合の機会はあったが、その結果は敢えて無視して基礎固めだけを続けた。

これは決して自慢話でも手柄話でもない。何が重要かを言いたいだけのことだ。そして何ヶ月か経って、市内でも強豪校と言われる小学校の同学年との試合に臨んだ。相手校の監督さんは私と同じ四十雀クラブのメンバーで知り合いのS氏だった。子供たちは教え込まれた基本技に忠実なサッカーを展開して圧倒的な勝利となり、S氏に「良くここまで鍛えられましたな」と褒めて貰えた。それは取りも直さず「基礎を固めた結果」であって、戦術的なことなど指導はしていなかった。要するに「基礎」であり「基本技」があって初めてサッカー形がつくのだということ。

私は高校の全国大会がある度に、アナウンサーが「全国4千何校の中から云々」と言うのを聞く度に「サッカーをやる高校が増えたのは斯道奨励の為には誠に結構なことだが、日本全国に4千名以上の優れた指導者がいるかいないかが問題だ」とテレビの前で叫んできた。甲子園野球を批判する者として繰り返しいってきたことで「トーナメント制の試合をすると、そのレベルで勝てる為の駆け引きを教え小成に甘んじた子供たちを育ててしまう」ことだ。この弊害は既に高校サッカーにも現れて、有望な子供たちは皆Jリーグの育成機関である「ユース」に行ってしまうとも聞かされている。

だが、男子の日本代表を見ていても基本技に難点がある者が多すぎる。特に後方からのパスを相手ゴールに背を向けてトラッピングする際にはほとんど上手くコントロール出来ずにそのまま後ろに蹴り返すか、トラッピングの失敗で屡々言わば逆走する結果に終わる。私に言わせて貰えば「子供の頃の彼らにサッカーを教えたコーチなり監督なりは何を教えていたのか」となる。試合に勝つ駆け引きか?

長い導入部だった。昨夜もパスの不正確さも問題だったが、そこ加えてトラッピングの拙さが非常に目立ち、格下のベトナムの守りの早めの寄せにあって得意の責任逃れの後方へのパスか、如何にも逆サイドへの展開の如くに見える横パスの連発で一向に攻めきれなかったのは、何とも情けないことだった。既に指摘してきた二線級と3人しか使われていなかったW杯優勝時の者たちとの呼吸が全く合っていなかったので、パスは繋がらず、競り合いには負けるはで、とても正視に耐えるサッカーではなかった。

退任が噂される佐々木監督は思い出作りを考えたのか、それともここで大きな試合を経験させておこうと思ったのか、二線級乃至はそれ以下を8人も使ったので、あの出来でも仕方がなかった。だが、あの段階に来て基礎が固まっていない者が多いのは、監督の責任ではない。協会が基本的にサッカーの指導法を考え直すべきだし、高校の全国大会のやり方を考え直すべき時が来たのではないかとだけは言っておきたい。

ここまでは昨夜のうちに考えていたが、今朝になってみれば新聞もテレビもテイームの内部分裂だの、責任のなすり合いだのと報じ始めた。それが本当ならば、基礎が固まっているかいないかとは別個な問題であって、私の守備範囲を逸脱している。また、一部のマスコミは今になって澤の不在を論じ始めたが、そんなことは当方が最初から指摘してきた。澤あっての宮間であり阪口であり大儀見だったのだ。いや、テイーム全体だったとも言えるかも知れない。

昨夜の不出来な試合を見ていて痛感したことは、これから先に宮間を始めとしてW杯優勝時の者たちが抜けていった場合に、あの二線級の中から誰を中心にテ
ームを編成していくのかも重大事だが、下部組織で余程しっかりと基本技を教え込ませることを徹底しないと、何時まで経っても相手側にトラッピングの拙さと無用なバックパスを狙われることが続くだろうということを警告しておきたい。澤が宮間がいなくなった場合には「自分で切り開くのだ」との強い意志とそれを裏付ける基本技と技術がないと、W杯は言うに及ばす、オリンピック出場も夢のまた夢と化してしまう危険性が高いと危惧する。



1 コメント

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Unknown (kazk)
2016-03-08 13:52:00
まあ、残念でしたがある程度予想されていたことだったのではないでしょうか。
このチームはWC優勝の頃がベストだったはずでその後は下降線だったというのが小生の見立てです。ロンドン五輪の銀メダルもある意味できすぎだったと思いますが、致し方ないところでしょう。

まあ反省点は色々出てくるでしょうが、確実に言えることは「もはや憶えられてる」ということです。なでしこのコンセプト自体は変えようがありませんしこれで行くしか無いのですが、それを支えるメンツが間違いなく十年一日です。今回の五輪予選の平均年齢は28.5才、豪州代表は24.7才です。代表歴十年以上の選手がどれだけ居るか。象徴的なのは今年で24,25になる選手が一人もいないということです。
例えばFWは大野が32、大儀見が29、高瀬が26、岩渕、横山が23(全て今年の誕生日での年齢)です。つまりある年齢に完全に隙があるのです。これはベテランがチームを引っ張りそれについていけた才能のみが参加できたということです。この年代にだって才能がないはずがありません。完全に発掘が遅れたのです。豪州代表は26才ですがデバナが32才で一人で平均を上げてるだけです。結果が出てる以上問題無いでしょう。同様にMFは30.6対24.6、DFは29.1対23.5、GKは26.7対24.7、一番経験が必要で年令が高くても良いGKが一番若いというのは皮肉でしょうか。プレーに新鮮さが出る訳ありません。2012年のU20は今年で24でしょう。そこから出てきてるのが岩渕と横山だけではどうしようもありません。
これでは同じことの繰り返しです。憶えられます。

女子代表は男子よりもよほど新戦力の発掘は重要なはずです。男子と違ってU23がありませんから五輪で人材発掘というわけに行きません。そのうえ国際大会の頻度は代表はおおまかに考えて1.5倍でしょうか。これは相手に慣れさせることを意味します。だからある場面では勝ちを捨ててでも戦力を見つけねばいけないのです。

澤穂希はおそらくこの様な状況を危惧して引退したんだと思います。本当はここに2011年組が大挙していてはいけないのです。

佐々木監督が悪いという批判はこれからどんどん出てきます。ロンドンの後引き受けた時に大丈夫かと思いましたが案の定でした。どんなに能力がある人だってそうそううまくいくはずありません。ここは一辺新しい発想を入れる勇気が必要だったのです。これはおそらく組織の問題でしょう。小生ならばここで外国人監督を考えます。男子の代表は何を言ってもハンス・オフトで変わりトルシエで一応の結果が出ました。その故知に習うのは悪くありません。

最後に一つ、これは女子だけではない男子をやU23を含めた欠陥ですが、サッカーをこねくり回しすぎるのです。難しいことばかりやろうとする。良いゴールというのはボール確保してからパス回しはせいぜい3回でシュートです。代表がダメなときはこの回数がだんだん多くなります。これはもう代表全体の宿痾でしょう。後はカウントアタック禁止令でもあるんでしょうか、速攻でDFが居ない所でさっさと決めてしむということが出来ません。パスサッカーが悪いわけではありませんが、計算してませんがパス回数と得点におそらく相関はないはずです。

おそらくまともな精神の持ち主ならば同じ批判をするはずです。JFAの連中も基地外ではないと信じますので同じ危機感をもってくれてるとは思います。しかし、危機感があっても改革できないのがこの国の組織です。どうなるでしょうか。

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