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新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

合意に達した「相互関税交渉」に思う事

2025-07-24 07:26:22 | コラム
トランプ大統領に物申す:

一夜明けて、昨日の急転直下とも形容できるかも知れない合意から冷めて、思うところが多々あったので取り上げていこうと思う。

何はさておき「赤沢亮正大臣の努力に心から敬意を表したい」のだ。赤沢亮正大臣が「善くこそ横暴とでも表したいトランプ大統領が開発してしまったtariff作戦に立ち向かわれて、アメリカ合衆国の市場に不当廉売の欠片もしていない我が国に対して、時には30だの35%を掛けるぞと、恰も脅迫するかのような言辞を弄されたトランプ大統領から15%への譲歩を引き出されたのは立派な任務の完遂」だったと、賞賛して差し上げたい。

だが、今日までに繰り返し指摘したことで「アメリカの対日本の貿易赤字は彼等が自縄自縛で発生させたもの」なのである。いや、それどころか自業自得と言いたい気分なのだ。トランプ氏が執拗に言われる「何百万台もの自動車の輸入は、アメリカの消費者がデトロイトに愛想を尽かした結果であり、トヨタ以下がアメリカ側の執拗な要求で現地生産に移行した日本車が、ドイツやイタリアの車と同様にアメリカ市場を走り回っているだけのこと。製造業の衰退にしたところで、彼等が選んで空洞化したのである。我が国には何らの責任はない。

トランプ大統領は歴史に学ばず、事実を誤認し曲解した上で、MAGAとアメリカファーストを建前にして、再度世界を主導する国に仕立て直そうとされた政策は「意図は壮なり」として認めて差し上げるに吝かではない。だが、如何にも方法論を間違えたという気がしてならない。その典型的な事例は彼が今日に至っても「関税とは輸出国が負担するものだ」という趣旨の発言をしておられること辺りだ。もう、その誤解はなくなったとも報じられているが、依然として「払うのは外国」と言っておられると聞こえる。

私から見れば、トランプ大統領は4月に相互関税を賦課する国々の表を掲げて、高めに関税率を表示して「交渉に応じる」と明言された。この行為は掛け値を示したものであって、dealなどという糖衣をまぶして見せたのは不当だとみた。要するに、各国に向かって「辞を低くして話し合いに来れば、減額もある」との尊大な姿勢を見せただけなのだ。その高率は「不当廉売」を咎め立てした性質ではないのは明らか。

ここまでで、指摘しておきたいことは必ずしも「あの15%の合意など、しなくても良かったのではないのか」なのである。トランプ大統領が「おそらく史上最大の取引だ」と誇らしげに語ったその合意は、実のところアメリカにとって一方的な「駆け引きをした結果の勝利」に過ぎないのではないかと思えてならない。日本側にとっては明らかに譲歩させられたのではないか。

更に、本日になってから「ボーイング社の航空機を100機購入」、「防衛装備品の調達の増加・増額」、「アメリカ産米の輸入の増加」等々の付帯条件があったことが明らかかになってきた。即ち、15%の合意の裏にはこれらのような条件となる項目があったと言うこと。

私が指摘いたいことは「トランプ大統領が前出のような自国経済の構造的な欠陥を省みることなく、貿易赤字の責任を輸出相手国に転嫁し続けた不当な点」なのである。更に追求したいのは「IEEPA(国際緊急経済権限法)まで持ち出してtariffを正当化する姿勢」である。このような政治の姿勢からは、世界を主導すべき超大国としての矜恃も分別も国際的な公正感も感じられないのではないか。

形振り構わずに、MAGAと貿易赤字削減にひた走るとは如何なものか。そこに見えてくることは「外交というより、交渉を装った強圧的な力の行使に他ならないのではないか」という気さえする。敢えて重ねて言うと「15%に下げていただいて良かった」など安堵しているよりも、「何故、そもそも正当性の乏しい関税が課されたのか」を再検討する必要があると思う。


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