♦️952『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの雇用・労働(2021)

2021-02-21 22:17:23 | Weblog
952『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの雇用・労働(2021)

 まずは、2021年1月8日(毎月第1金曜日(米国時間)に発表の慣例)のアメリカ労働省は、2020年12月の雇用統計をら発表した。それによると、非農業部門の雇用者数が前月比で14万人減少した。8カ月ぶりの前月比減だった。
 あわせて、発表済みの10月分が61.0万人増から65.4万人増へ、同じく11月分が24.5万人増から33.6万人増へと、2カ月分の合計が58.1万人増に上方修正されたという。
 とはいうものの、新型コロナウイルスの感染拡大から1年が過ぎようとしているこの時期に、まだ雇用が減るという話であって、雇用回復には程遠い内容だ。

 続けて、アメリカの2021年1月の雇用者は、非農業部門雇用者数ベース(事業所調査、季節調整済み)で、前月比4万9000人増で、大方の予想を下回った。ちなみに、前月も大幅に下方修正であったから、労働市場の回復は2カ月連続で期待外れとなったことになる。
 これから窺えるのは、多くの失業者にとって見通しは依然厳しく、一段の景気刺激策が必要との見方を裏付ける結果だといえる。

 また、家計調査に基づく失業率(U3)は6.3%に低下した、ただし、「真の失業率」とされる潜在失業を加味した失業率(U6)は11.1%であり、こちらで考えると、かなり意味合いが異なってこよう。

 ちなみに、労働省のホームページにおいて、「Not in the labor force」の定義付けがなされていて、それにはこうある。

 「Persons who are neither employed nor unemployed are not in the labor force. This category includes retired persons, students, those taking care of children or other family members, and others who are neither working nor seeking work. Information is collected on their desire for and availability for work, job search activity in the prior year, and reasons for not currently searching. See also Labor force and Discouraged workers.」

 そのことはさておき、通常の失業率でいうと、前月は6.7%であったのだが、これは、労働市場から退出した人が増加したことが大きいというから、驚きだ。

 とはいうものの、1年前の3.5%に対し2.8ポイントの悪化だ。そこで、前月比4.9万人の増加の中身だが、レジャー・宿泊飲食業が6万人の減少、健康・社会支援業が同4万人、小売り業も同4万人、輸送・倉庫業は同3万人。製造業は、1万人の減少、建設業は0.3万人の減少だったのに対し、プロ・ビジネスサービスはプラス10万人だ。

 この間の推移については、10月が68万人の増加であったのに対して、11月は26万人の増加。12月には23万人の減少、2021年に5万人の増加ということであり、雇用回復の足取りは弱い。

 顧みると、リーマンショックからの回復を示す2010年1月からの10年間に2283万人の雇用が増加した。ところが、今回の新型コロナショックは2020年3月~4月の2か月間だけで2236万人もの雇用を減らしている。10年間の雇用の増加分が、極めて短期間で失われるという、前代未聞の出来事であった訳だ。

 それにしても、一方で、2020年5月から2021年1月までの9か月間の雇用増加は1238万人とされている。なので、差し引き、まだ998万人が職を失ったままとなっている。
 それというのも、2020年5月中旬からの経済活動再会により雇用が少し盛り返した形だ。だか、経済活動再開に合わせ、感染者が増えた。再度経済活動の停止をした州でも感染者が増え、雇用改善が鈍化した。今回の2021年1月になっては、は、ほとんどの業種で雇用が減少に転じた。

 また、同月の時間当たりの前年比賃金上昇率は、前月比で5.4%のプラスであった。

(続く)

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♦️392の3『自然と人間の歴史・世界篇』ナチズムの人間的基盤

2021-02-21 10:10:58 | Weblog
392の3『自然と人間の歴史・世界篇』ナチズムの人間的基盤

 ナチズム支持の中心となったのは小さな商店主、職人、ホワイトカラー労働者などから成る下層中産階級であった。
 それでは、なぜ、これらの人々がナチズムへとなびいていったのだろうか。さしあたり、二つの見解を紹介しておきたい。
 その一つは、彼らの生活が依って立つ経済基盤と民族主義を一義的にいうもので、例えば、塚本健氏はこう述べておられる。


 「折から、ヤング賠償案反対運動とともに民族主義運動が高揚しました。同時に、不況下に中小企業の倒産がつづき、失業者が132万人(29年9月)から300万人(30年9月)へと急増しました。ナチス党は、不況や失業をもヤング賠償案、ベルサイユ体制のせいにして民族主義を煽動しました。
 その、さいナチス党は、民族主義の顔と反資本主義というもう一つの顔で、中間層、大衆をひきつけたといわれます。ここで中間層と呼ばれているのは、百貨店進出におびやかされる町の中小商店主、債務負担にあえぐ農民、大企業に圧迫され賃金切り下げによってかろうじて生きのびる道を求めようとする中小企業主、失業者、新規学卒で就職口のないまま失業保険給付もうけられない若者労働者、出稼ぎ労働者などの縁辺労働者層です。
 資本家階級の一部、自営業主=旧中間層、労働者階級の一部と分類できますが、全体として、反独占・反労働組合という心情を共通にもっている人々です。」(塚本健「ファシズム」労働大学新書、1986)」


 みられるように、インフレ、独占資本主義の発展、大恐慌の不安、そして戦後賠償の負担などが経済生活を脅かし、労働者階級の台頭が下層中産階級の威信を下落させた。
 二つ目は、「社会心理的アプローチ」とよばれるもので、こちらも、インフレ、独占資本主義の発展、大恐慌の不安が経済生活を脅かし、労働者階級の台頭が下層中産階級の威信を下落させたのをいう、けれども、それだけではないと考える。
 後者に目を向けると、第一次世界大戦後のワイマール共和制下によって、敗戦から立ち直る中でドイツ社会に自由な空気が育まれた。
 しかしながら、そのことは、君主制の崩壊、宗教や伝統的な道徳の衰弱、家父長的な家族制度の解体、そして敗戦といった心理的な変革を伴うものであった。それらの出来事は、特に集団の中で「安全感と自己満足的な誇りを獲得していた」下層中産階級の人々を動揺させ、不安に陥れたのだという。
 
 そこでフロムは、ナチズムを支持した人々を理解するために、自由の持つ二面性(理想としての自由・不安、孤独、無力感を生む自由)を見出し、新たな自由を獲得したというよりは、「与えられた」感のある人々にとっては、必ずしもそれを享受し、さらなる前進のための糧(かて)とはならず、その逃げ出そうとする(エーリッヒ・フロム「自由からの逃走」)ことをいう。

 「われわれはドイツにおける数百万の人々が、かれらの父祖たちが自由のために戦ったと同じような熱心さで、自由を捨ててしまったこと、自由を求めるかわりに、自由から逃れる道を探したこと、他の数百万は無関心な人々であり、自由を、そのために戦い、そのために死ぬほどの価値あるものとは信じていなかったこと、などを認めざるをえないようになった」(同)

 また、自由から逃げ出した人々は、権威主義的性格を社会的な集団として有しているともフロムはいう。つまり、二面性を持っていることになる。いうなれび、新しい従属や依存を求めて権威に服従するのをいとわず、自分たちが権威であろうとする傾向を持つ社会集団として登場してくる。
 こうして、人間的な面から言うと、ナチズムはこのような人間の性質が基盤となってその勢力を増し、人々はその支配に喜んで服することとなったとフロムはいう。



(続く)

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