388『世界の歴史と世界市民』利子率の決定理論(ケインズ、1936)
経済学で新古典派というのは、スミスやリカードといった古典派と呼ばれる経済学者の後に活躍した人々だ。その代表といえば、あの「経済学者は冷徹な頭脳と温かなハートを」を持たねばならないと説いたイギリスのマーシャルあたりだろうか。その彼らは、利子率(金利)は、どうきまるだろうかと考えた。その結果、貨幣の需要側の投資と供給側の貯蓄との交点でフロー的に利子率が決まるとしていた。
ところが、投資にしても、所得にしても、利子率と一意的にむすびつくものではあるまい。投資は限界効率(投資を限界的に1単位ふやした時に、企業の利潤が現在から将来にかけてどのくらい増えるかを示す一つの指標をいう)などといった利潤の因子と結びつくであろうし、貯蓄は所得と関係している。
それからしばらく後にこの問題に直面したイギリスの経済学者のケインズは、『流動性』という概念を用いて、新しい利子率の決定理論を構築した。
ここに流動性とは、交換の容易性や安全性を意味する。流動性が最も高い資産は貨幣であり、その限りでは利子(i)を生まない。一方、債券や株式などは利子・収益を生む。けれども、将来、資産の価格がどうなるか不確実だと感じるなら、人々は安全資産として貨幣を保有する。
ケインズは、こうした性向を、「流動性選好(liquidity preference)」と呼んだ。集団としての人々の心理傾向が、貨幣や債券・株式などの動きを、大きく左右すると考えたのだ。
具体的には、債券や株の価格が高くなると予想する人は、預金を手放して債券を購入する。債券や株の価格が下がると予想する場合は、債券や株を売り、貨幣に換えたい。
前者の場合は、債券の価格は上がり、逆の場合は下がる。期待や不安、衝動や直感といった心の動きさえもが、人々の予測となりうる。そして市場における需要と供給が均衡したところで、債券の価格が決まる。また、それによって示された利回りで、短期の利子率が決まると考えた。
ケインズは、このような理屈から、「利子率は特定期間、流動性を手放すことに対する報酬である」という。これは、流動性選好すなわち貨幣需要を表す関数を(L(i))とすれば、利子率は、M(貨幣の供給量)=L(i)という方程式から決まるとした訳だ。
(続く)
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経済学で新古典派というのは、スミスやリカードといった古典派と呼ばれる経済学者の後に活躍した人々だ。その代表といえば、あの「経済学者は冷徹な頭脳と温かなハートを」を持たねばならないと説いたイギリスのマーシャルあたりだろうか。その彼らは、利子率(金利)は、どうきまるだろうかと考えた。その結果、貨幣の需要側の投資と供給側の貯蓄との交点でフロー的に利子率が決まるとしていた。
ところが、投資にしても、所得にしても、利子率と一意的にむすびつくものではあるまい。投資は限界効率(投資を限界的に1単位ふやした時に、企業の利潤が現在から将来にかけてどのくらい増えるかを示す一つの指標をいう)などといった利潤の因子と結びつくであろうし、貯蓄は所得と関係している。
それからしばらく後にこの問題に直面したイギリスの経済学者のケインズは、『流動性』という概念を用いて、新しい利子率の決定理論を構築した。
ここに流動性とは、交換の容易性や安全性を意味する。流動性が最も高い資産は貨幣であり、その限りでは利子(i)を生まない。一方、債券や株式などは利子・収益を生む。けれども、将来、資産の価格がどうなるか不確実だと感じるなら、人々は安全資産として貨幣を保有する。
ケインズは、こうした性向を、「流動性選好(liquidity preference)」と呼んだ。集団としての人々の心理傾向が、貨幣や債券・株式などの動きを、大きく左右すると考えたのだ。
具体的には、債券や株の価格が高くなると予想する人は、預金を手放して債券を購入する。債券や株の価格が下がると予想する場合は、債券や株を売り、貨幣に換えたい。
前者の場合は、債券の価格は上がり、逆の場合は下がる。期待や不安、衝動や直感といった心の動きさえもが、人々の予測となりうる。そして市場における需要と供給が均衡したところで、債券の価格が決まる。また、それによって示された利回りで、短期の利子率が決まると考えた。
ケインズは、このような理屈から、「利子率は特定期間、流動性を手放すことに対する報酬である」という。これは、流動性選好すなわち貨幣需要を表す関数を(L(i))とすれば、利子率は、M(貨幣の供給量)=L(i)という方程式から決まるとした訳だ。
(続く)
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