株に出会う

独自開発のテクニカル指標で株式市場の先行きを読む!

いったいどこまで調整するのか?

2007-08-11 12:25:23 | 金融全般
今回の下落局面ですが、最終的にはトレンド転換ぎりぎりのところまで追いつめられると思います。トレンド転換ぎりぎりのラインとは、日経平均が昨年の6月14日につけた14046円の安値と、今年6月20日につけた18297円という高値との差に対して、黄金分割比率でいう61.8%の押し目まで行くと言うことです。この高値と安値の差の4251円の61.8%は2627円となります。18297円から2627円の下落があると15670円になります。

38.2%というもう1つの黄金分割比率を適用すると、16673円になりますが、この値は8月2日と先週金曜日の安値が既に抜いてしまいました。ここからの下落が、現下の状況で全くなく、上昇一途であると思っている投資家はごく少数でしょう。NYダウもまだ下げております。

途中段階では、16500円が1つの節目となると思います。筆者も7月27日のブログで当時の最悪シナリオとして16560円までの下落を予想しておりました。衆目の一致するところ、この16500円水準が次の節目と思いますが、更にその下にまで行くのではないかとの理由は次の通りです。

今回の問題は、一言でいうと資本主義経済の根源的な特徴に由来しているためです。

株価が高値追いの時までは、いわゆる資本の領有化がBRICsを始めとする新興国にも及び、それがアメリカやユーロ圏の先進国そして日本の市場に富の還元をもたらしてきました。これは資本主義経済のいわば正の特徴です。

ところが一方で、正の特徴と一体化する形で、負の特徴が醸成されてきました。金融資産バブルが現象した訳ですが、これは、資本主義経済のもう1つの特徴である、誰でもご存じの剰余価値(利潤)の徹底的な追求によりもたらされました。

いわゆるレバレッジをかけた取引手法がその代表的なものですが、ヘッジファンドなどが顧客から集めた資金(+金融機関からの借り入れ)での、伝統的な株や商品、そして債券などの取引におけるレバレッジだけでなく、より広範な投資家(世界中の金融機関)を巻き込むために、今回のサブプライム問題では、住宅抵当権付き証券(RMBS)という手法を取る際に、信用格付け機関を巻き込んで、「証券の真の価格を偽装」したとも思われるやり方までとって「利潤の最大化」を狙ったのではないかという疑念です。(あくまで筆者の疑念であり直接の証拠はありません。)

これが事実だとすれば、この事態はいわゆるモラルハザード問題です。エンロンは単一の企業の内部でのモラルハザードでしたが、今回は住宅業界と金融業界を巻き込むモラルハザードです。

このモラルハザードは一方の当事者(ヘッジファンドなど)が、他方の当事者(証券を買う金融機関や個人投資家)に代わって行動するように要請される、経済学的にいうエージェント-プリンシパル関係の中で頻繁に発生することは避けようがありません。

問題が深刻なのは、今回のモラルハザードはエンロンの時とは全く違って、不正行為を誰かが働いた訳ではないことです。高度な金融テクノロジー手法を駆使しして、それらの証券化商品が生み出されております。その中身は、牛肉偽装事件のような不正行為で形どられている訳ではありません。

そうであるが故に、モラルハザードに対する牽制システムが働かなかった、いや、そもそもなかった、そこに深刻な問題を見ている訳です。個別企業同士であれば様々な牽制機構を作ることができたでしょう、また1国内の取引であれば、政府の法的な関与であるいは可能であったかも知れませんが、れっきとした(国際)金融商品に一旦化けると、投資家の買う買わないの判断は、リスクをどれだけ取るかだけということになります。そのリスク判断の根拠付けを格付け機関が担っている訳ですが、その格付け機関もまた資本主義経済下では、利潤最大化の要請から「不正ギリギリの働き」を強いられます。不正行為とまでは(今のところ)いっておりません。何故なら、格付会社の格付基準とその運用基準はそれぞれが独自に決めており、何かあったからといって、不正行為になる訳もないからです。

住宅関連産業のアメリカのGDPに占める割合はわずか5%だとか、サブプライムローンは住宅ローン全体の13%程度だとかといった観点から、今回の問題の影響度は少ないとしている論調も見受けられますが、こと、資本主義の根幹にある問題にかかわっているとの認識を持てば、これが数週間で片が付くとは到底思えないのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする