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サブプライム問題はサブプライムを超えている

2007-08-18 19:43:36 | 金融全般
コメント欄でmaimaiさんから、今回の利下げで期間限定(1-3ヶ月)でマーケットが落ち着くのではないか、その点について考えに対してのご質問がありました。

回答はコメント欄にしましたが、アメリカの住宅問題はサブプライム問題だけではないことを再確認しておきたいと思います。

アメリカの住宅ローン総額は昨年で10兆ドル、多分今年は11兆ドルに達しているようです。うち、サブプライムのローンの比率は13%程度です。11兆ドル=1265兆として、164兆円程度がサブプライムローンです。

その他の住宅ローンとしては、Alt-Tローン、プライムローン、あるいは金利だけを払うインタレストオンリーローンなどのローンがあります。

これら住宅ローンの60%が、MBS(=住宅抵当権付き証券)化されて世界中の金融機関(銀行、証券会社)、ヘッジファンドに売られております。残高は2007年では760兆円にも上ります。これでアメリカは年間100兆円の赤字の穴埋めをしていた訳です。

この住宅抵当証券(MBS)を世界の金融機関やヘッジファンドが一体全体いくら持っているのか、どれくらいの隠れ損失が出ているのかの情報がないため、疑心暗鬼となってしまって、金融機関の間での貸し借りが事実上出来なくなってしまったのが、中央銀行による緊急の資金注入の理由だった訳です。

そして問題は、サブプライムを組み込んだ証券のみならず、Alt-Tやプライムローンを組み込んだ証券も売れなくなってしまったということです。

さらに衝撃的なことは、欧米の大手証券会社は、住宅ローンを組み込んだヘッジファンドの証券については、その資金の融資をしないとしたことです。

MBSが売れなくなっていること、そしてそれを担保にした融資もなくなるということは、ローンが組めないということとなります。ローンが組めないので住宅は売れないこととなります。

こうして住宅市場が機能不全に陥るとますます延滞率が上がっていきます。それはサブプライムローンだけでなくインタレストオンリーローンやAlt-Tローン、更にはプライムローンも影響を受ける訳ですね。

こうして、住宅ローン市場全体の延滞率がサブプライムローンの現下の14%を筆頭に、その他のローン特にインタレストオンリーローンやAlt-Tローンについても上がっていくと想定される訳です。全体ではいくらに今現在なっているのかは定かではありませんが、一説には10%(126兆円)になっているのではないかとも言われております。

その背景としては、いわゆるホーム・エクイティ・ローンという、筆者の家人のように、お金を使いたくて仕方のない消費者にとっては夢のようなローンがあります。持ち家の値上がり益分を使途が自由な金として融資が受けられるローンです。住宅の時価が1000万円上がると1000万円を自由に使えたのです。しかし、これはあくまでも借金です。住宅価格が値上がりしている間は、住宅を売れば返済が容易ですが、その住宅が売るに売れなくなれば、その1000万円の借金分までも支払いに加わってきます。その帰結は個人の破産です。こうして、住宅価格が上がり続けることを前提に作られた諸制度がすべて逆流をし始める訳ですね。

これがアメリカの住宅問題の根本にある大きな問題です。

日本のバブル崩壊時の金融機関の不良債権に相当する額が、今回のサブプライムローン問題のマーケットにおけるインパクトとしては横たわっていると考えられます。

もう1つ、ほとんどニュースに出てこないのは、証券を引き受けている筈のフレディマックとファニーメイへの影響度です。証券の引受額を増やすことを検討中とのニュースはありますが、この両公社も被害を受けている筈です。この両公社が発行するパススルー証券はAAAの格付であり、世界中の金融機関や機関投資家が買っております。この2社にもし今回の問題の余波が及ぶようになると、これは下手をすると金融恐慌への引き金になりかねません。

このように、巷でサブプライム問題と呼ばれている、アメリカの住宅ローンを巡る問題については、極めて深刻な構造的な問題が横たわっており、その真相が徐々に明らかになるにせよ、問題の解決にはかなりの時間がかかるものと思います。

今回のFRBによるディスカウントレート(公定歩合)の引き下げは、こうした問題の根本的解決には全く関係ありません。単に資金ショートで金融機関同士の決済が不能になるのを当面凌ぐための対症療法にしか過ぎません。

その効果で世界の株式市場や外為市場が当面立ち直りを見せるにしても、時間が経つにつれ急速に色褪せて来るものと思います。
コメント (2)
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